無題

【カサンドラ】26.2019-ブログ-3


ブログを見つけてからというもの、大地からのLINEは殆どが渡辺の話題で、
つい先ほども新たにサイトを見つけたとURLが送られてきた。
僕は少し飽き始めていたのだけれど、
なんとなく目を通さなきゃいけない気がして読み続けていた。
独自ドメインのメインサイトの他にもはてなブログ、noteなどにアカウントを所有し
Amebaは占い師としてスピリチュアル系のカテゴリに分類されている。
各箇所それぞれ違う肩書で文章を綴っていたようだったが
サイトからサイトへのリンクが網の目のように張り巡らされていて、まるで迷路だった。
どこまでが渡辺のサイトで、どこまでが彼女が読んでいたサイトなのかもわからない上に
どこを幾ら読んでも渡辺自身のことは何もわからない。
大地も言っていたけれど、
各アカウント毎にキャラクターが違うために素性が読めないようになっていて、
渡辺優希という人がどんな人物なのかはまったく把握できないままだった。

ただメインのサイトを見ると、
冷静に淡々と綴っていながら時々心にグサッとくるような表現を見つけたりする。
ということは、そこが一番本性に近い姿で更新していたということだろうか。
そう思いながら、メインのサイトを隈なく読み漁るうちに、
書物のレビューをしている文章の一部にリンクが貼られていることに気付いた。
カーソル合わせで色が変わる仕様になっていないために見つけずらいが
たまたま僕の動かしたマウスがその一文を指し、リンク先に飛んだ。

このレビュー記事は書籍ではなくて、「おじさまと猫」という漫画を読んで書かれたもので
その記事を書くに当たって渡辺が自分の過去を少し吐露している、その一部に
リンクがあったのだ。


https://solitude-klang.hatenablog.com/entry/2018/03/16/002950


ジャンプして現れたそのページのプロフィール部分を見て寒気が走った。

自伝を綴っているブログが、Amebaにもう一つ存在した。


18歳くらいからだろうか、バスでもほとんど会わなくなった頃から話が始まっている。
慌てて大地にLINEをすると、自分は今読めないからと
個人のサブアカウントを貸してくれた。
ログインして、URLをペーストすると
先程見たページが大きく表示された。

「T」というハンドルネームを使って綴られているそのブログは、
最新記事から遡って読み進めるように作られており、一番最後になる記事、
要は最初の日記になっている記事のタイトルを見て、再び背筋が凍った。
僅かに冷や汗が滲むほど緊張しながらクリックしてみたが、
アメンバー限定記事といって、ブログの主が承認しないことには読めない仕様になっている。
ほんの1~2ヵ月の間に書かれたもの、40記事ほどを辿ってみたが
後にも先にも限定記事はこれひとつしかない。
しかしアメンバーを承認してくれる人間がこの世にいない。


とりあえず大地に連絡を入れ、URLを送った。

このブログを読むのは後にしよう、疲れた。
と、僕はリビングに出た。
家族の顔を見たら、ふっと肩の力が抜け
身体に温度が戻ってくるのがわかった。

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