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オペラシアターこんにゃく座公演 オペラ『ルドルフとイッパイアッテナ』新作初演

ハーモニーの色合いが今までのこんにゃく座の音楽とはかなり違う。透明で、しかし耳に残るふしがたくさんある。合唱を多数手がけている人だけあって声の使い方に精通していることがよく感じられる。開始部、中間部、終曲で歌われる「風」が狂言回しのような役割を果たしていて、きれいな統一感がある。

ただ、前半はソロやデュエットで進行する場面が多く感じられ、またデュエットでも、1人が歌う時間が長めで、歌曲が並置されていくように思われる瞬間もある。端的だったのが開始直後のルドルフとイッパイアッテナの場面で、他の2人は舞台上にいるのだけれど、特に何かの役を与えられているでもなくある時間ただ傍観していたりする。

それぞれの歌役者に見せ場•聴かせどころが明確に設定されていて観応えがあるけれど、せっかく4人というごく小さな編成なのだから、全員の声が複雑に絡む場面がもっとたくさんあっても良いのではと感じた。後半、特に終わり近くなって出てくる4つのパートが交錯する場面は楽しい。

今回も、2つの組で全くカラーが異なるのを楽しむことができた。ね組は作品世界に深く入り込んでいるのに対し、こ組は作品に対して一定の距離をとっていることが明確にわかる。個人的には後者のほうが観やすい。

小林ルドルフは子猫の愛らしさ、ひたむきさが自然にあらわされていた。泉ルドルフは実にしなやか、終曲のすっと伸びる歌声が印象的。いずれもルドルフというキャラクタの芯の強さが感じられた。金村イッパイアッテナは以前の"お兄さん"的なイメージとは違う、頼りがいのある中堅ぶりを感じる。北野イッパイアッテナはガラが悪いようでいて実は細やかなキャラクタであることが伝わり、流石演技派と思う。西田ブッチーはちょっとお調子者な雰囲気がよく出ており、明るい色気がある。熊谷ブッチーはこのキャラクタの、意外としっかり者な感じが出ていた(改めてこのひとの歌は正調こんにゃく座の歌だと思う。話す声と歌う声がごくなだらかに繋がっている)。佐藤デビルの獰猛さと、ほかの場面での優しい表情の幅の広さに感服。鈴木デビルの圧倒的存在感。肉への愛を歌う歌では、表情の切り替えの多様さに唸る。ソングでの柔らかい歌声も魅力的。(2022年9月8日(木)~11日(日)あうるすぽっと (東京 東池袋))

原作:斉藤洋[講談社刊「ルドルフとイッパイアッテナ」による]
台本:いずみ凜
作曲:信長貴富
演出:立山ひろみ

美術:池田ともゆき
衣裳:宮本宣子
照明:齋藤茂男
振付:山田うん
舞台監督:八木清市
音楽監督:萩京子

宣伝美術:竹上妙(木版画)/片山中藏(デザイン)

◆出演
【ね組】
ルドルフ 小林ゆず子
イッパイアッテナ 金村慎太郎
デビル 佐藤敏之
ブッチー 西田玲子

【こ組】
ルドルフ 泉篤史
イッパイアッテナ 北野雄一郎
デビル 鈴木あかね
ブッチー 熊谷みさと

ピアノ
湯田亜希 /五味貴秋
 
◆主催・制作
オペラシアターこんにゃく座

※見出し写真は拙宅の駄猫

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