mama!milk Charade Quartet 夜の海辺の音楽会
出演
生駒祐子 アコーディオン
曽我大穂 フルート、カバキーニョ etc.
BUN Imai マリンバ、マンドラ etc.
清水恒輔 コントラバス
生駒祐子という人は、オルゴールなどによるソロ・アルバム以来、気になる演奏家だった。生演奏に接したのは、だいぶ後になって、原美術館でのmama!milkとしてのライブであった。このユニットは、同館の閉館直前にオンラインで公開されたコンサート・フィルムも秀逸で、何度も視聴した。
生駒祐子のアコーディオンは実に艶っぽい。蛇腹を伸縮させる動作が音と直結している。だから、しなやかな身体の動きがそのまま音楽になっていることが感じられる。低い位置からの照明によって壁に大きく映し出されるシルエットが美しかった。
相方の清水恒輔のコントラバスも聴き応えがある。熱のこもったピツィカート、咽ぶように歌うアルコ、かと思うと電子音のようにも聴こえるハーモニクス、はたまた胴を叩く鋭い音と、楽器の大きな躯体を活かした様々な音色を自在に使い分ける。そして、どれほど短い音にも豊かな表情がある。
BUN Imai のマリンバの柔らかい音も魅力的である。クラシック出身の音楽家らしい、きっちりとした音作りながら、相当に引き出しが多く、柔軟性に富む演奏家と見た。今年ソロアルバムをリリースする予定という。
曽我大穂という人は、フルート、打楽器、カヴァキーニョ、アコーディオンなど、実にいろいろな楽器を、いとも軽々と使いこなす。でも、器用というのとは全く違う。フルートの音色などかなり荒削りなのだけど、ぐいぐいと迫ってくるものがある。自分の中に湧き上がってくるものがどうにもこうにも仕方なくて、居ても立ってもいられずに音を奏でているという印象である。この人の、自由自在な音楽の作り方に衝撃を受ける。音楽はこんなにも自由になれるんだ。
これほど自由なプレイヤーを迎えても、mama!milkの音楽は基軸がしっかりしており、方向性がいささかも揺らぐことがない。楽曲のメロディラインはいずれも一見シンプルなようだが、個々の音がよく吟味され磨かれているためだろう、ふしに奥行きがあって、自由度が高い。それゆえ、個性豊かなゲストが加わることでさらに深く豊かに広がっていって果てが無い。
翻ってー引き比べようとすること自体が失礼の極みなのだけれどー、自分の音楽の捉え方は本当に狭かったと改めて思い知らされる。楽譜通り正確に、正しい音程とリズム、テンポでと、音楽の外形にのみ目が行きがちだと痛感する。端的には、譜面を取り上げられてしまうと、なすすべを失う。自分は何をあらわしたいのか、皆目わからないのだ。今から頑張ってなんとかなるとも思えないけれど、どうにかしてほんの僅かでも自由になりたいと思った。(横浜・象の鼻テラス)