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神奈川県民ホール開館50周年記念オペラシリーズVol.1ロバート・ウィルソン/フィリップ・グラス 浜辺のアインシュタイン

神奈川県民ホール開館50周年記念オペラシリーズVol.1
ロバート・ウィルソン/フィリップ・グラス
浜辺のアインシュタイン〈一部の繰り返しを省略したオリジナルバージョン/新制作/歌詞原語・台詞日本語上演〉

音楽:フィリップ・グラス
台詞:クリストファー・ノウルズ、サミュエル・ジョンソン、ルシンダ・チャイルズ
翻訳:鴻巣友季子

指揮:キハラ良尚
出演 松雪泰子 田中要次 中村祥子 辻󠄀彩奈(ヴァイオリン) 

Rion Watley 青柳潤 池上たっくん 市場俊生 大西彩瑛 大森弥子 倉元奎哉 小松睦 佐藤琢哉 杉森仁胡 鈴木夢生 シュミッツ茂仁香 城俊彦 東海林靖志 高岡沙綾 高橋真帆 田中真夏 鳥羽絢美 浜田純平 林田海里 町田妙子 村井玲美 山本悠貴 渡辺はるか

電子オルガン:中野翔太 高橋ドレミ
フルート:多久潤一朗 神田勇哉 梶原一紘(マグナムトリオ)
バスクラリネット:亀居優斗
サクソフォン:本堂誠 西村魁
合唱:東京混声合唱団
 
【スタッフ】
演出・振付:平原慎太郎 
演出補:桐山知也
空間デザイン:木津潤平
衣裳:ミラ・エック
照明:櫛田晃代
音響:佐藤日出夫
舞台監督:藤田有紀彦 山口英峰
プロダクション・マネージャー:横沢紅太郎
電子オルガンアドバイザー:有馬純寿
神奈川芸術文化財団 芸術総監督 一柳慧
県民ホール・音楽堂 芸術参与 沼野雄司
企画製作 神奈川県民ホール[指定管理者:公益財団法人神奈川芸術文化財団]

音楽、ダンス、演技と、さまざまな要素を含んだ作品だが、今回の公演は舞台が饒舌過ぎる印象を受けた。舞台上に登場するパフォーマー•ダンサーが総勢25名以上、しかも、広い舞台の上で同時多発的にアクションが発生する場面も多い。音楽だけでも非常に密度が高いので、ここまで内容豊富だと、観客の処理すべき情報量が過多で、聴覚•視覚のどちらにも十分に集中できない。

内容的に不思議な余白が沢山ある作品だけに、舞台にいろいろ盛り込みたくなる欲求は理解できるが、音楽への配慮がもう少しあってもと感じる。端的な例がAct4 Scene2 Bedで、ここは全編を通じて最も美しい場面だと思う(ソロの松崎ささら氏が素晴らしかった)。舞台にはいっぱいにビニールシートが敷き詰められている。階段が設けられた舞台なので、シートに青い照明が反射すると海を思わせて美しい。しかしながら、シートの上で演技がなされるため、パフォーマーが動くとカサカサという音が立つ。とても静かな音楽だけにいささか耳障りなのであった。

ちょうど30年前天王洲で観たのは、オリジナルに近い形だったと思われるが、ダンサーやパフォーマーの数がごく絞られており、舞台装置や小道具もごくシンプルで、音楽とのバランスが絶妙だったとわかる。

松雪泰子は抑制された台詞回しながら存在感があり、感心する。一方、Knee Play2 や Act3 Scene1 Trial/Prisonでは、パフォーマーの演技がやや過剰で、作品の世界観と微妙にずれていたことが惜しまれる。

器楽アンサンブルは膨大な音数を巧みにこなしていた。2人のキーボード奏者(中野翔太、高橋ドレミ)ーAct4 Scene1 Buildingでごく細かい音が聴き取れなかったのは残念ー、2人のサックス奏者(本堂誠、西村魁)の妙技に拍手。ヴァイオリン•ソロ(辻彩奈)も好演。

東混は非常に丁寧な力演だった(注目のKnee Play3は流石に難曲で、僅かにタイミングがずれたのは気の毒)。基本は普段の演奏会と同じで「歌って」いる。音程をキープするのも至難の業と思われるが、徹頭徹尾きちんとした演奏を貫いていて感服する。しかし、声質がややソフトに過ぎ、この作品にはもっと硬質な声のほうが適切なように感じる。声を完全に楽器と割り切ることが求められているのだろうと思う。Act4最後のクライマックスくらいのテンションが最初から有ればなお良かった。

なによりも、大作をまとめ上げたキハラ良尚の手腕に唸った。

小言ばかり並べてしまったけれど、海の向こうから専門家を呼ばずともこのミニマル音楽の巨編を上演できるところまでたどり着いたことを思うと感無量であった。こういった公演を契機として、演奏家個人でも、アンサンブルでも、あるいは合唱団でも、ミニマル作品がレパートリーの一角に収められていくことを望みたい。(10月8日•9日 神奈川県民ホール•大ホール)

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