詩と歌詞と
また文をつらつら書いていこうと思います。今回は詩と歌詞の違いについてです。
筆者は小説が好きだったので、大学に入ってからずいぶん多くの詩集を読みました。古典で海外のものが多かったですが、有名どころは一通り周りました。最初に感じたのは、強い詩的ジャンプについていけない感覚でした。我々が日常的に使っている言語感覚との飛躍が詩の面白さであると思うのですが、哲学の方が自分にはあっていてだんだんと読む機会が減っていきました。また社会学や経済学の学説に触れることが多く、詩の言語体系としての柔らかさ(それは同時に美しさであると思うのですが)に信頼を置ききれない心情がありました。
そんな筆者は歌詞という体系に興味を抱きました。小さい頃から音楽が好きで、音楽史を辿ってその当時の価値観や社会背景を知ることは面白いものでした。歌詞はその時々の音楽シーンに現れては時代の空気感を纏ったり形作ったりしています。私的な個人の綴りが多くの人に届くそのシステムは現代では詩とライバル関係にあるのかななんて思いました。ある種の自然主義的表現ともいえるかもしれません。
筆者は桜井和寿(Mr.Children)と清水エイスケ(age factory)の二人のソングライターに歌詞の可能性を見ています。
桜井和寿はi love youの多彩さが魅力な作詞家です。周り持った表現や概念的な言葉を使わなくても十分心を動かせることを教えてくれます。清水エイスケの方は狭い世界に留まる倒錯した愛を描くのが上手いです。彼の方がもう少し不健康な香りがします。二人とも女性(恋人、家族の形式)の中に救いを見出すところが共通しています。彼らの歌詞には思慕というよりかは救いという言葉があっています。
歌詞は詩よりも圧倒的に軽いです。感情と言葉の間にあまり距離が生まれていません。芸術的ではないです。でもそこでしか描けないものもある気がします。辛いという感情があったとして、それをいろんなものに仮託して詩的に表してしまうよりも、淡々と目に映る事を並べられた方が心に刺さる時もあります。両者にある溝をうまく橋渡しして新しい表現を作れたらいいなと考えています。
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