生なるものの真直ぐに触れて

白蛇を掬った手水の裾に
登っていく君の腕だけが見える
水は薄くはあるが透明にならず
牙と舌はかき混ぜられていく

僕はここにいたくない
瓦の強さは手遅れで
鮮度を失った匂いは
とうに生きることに値しない

海の手前の開発都市
海月の列に埋もれた皮膚
泡のような触れ合いが
芸者の舞台をひっくり返して

性と生の背中合わせが
悔しそうに肩を叩くから
懐中時計の音を弦に
覆い被さる男がいても

涙を拾う下流の粒立ち
ぶつ切りになった水面
最後まで僕は撮り続ける
生なるものの真直ぐに触れて

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