海
綺麗なはずだった景色を
色んな絵の具で汚していって
何が残ったんだろう
もう見れなくなったものが多すぎて
考えることもできないんだ
ここに来たかったはずなのに
なんだかうまくバランスがとれない
たぶんここを目指してた
誰に言われたわけではなくても
割と頑張ったと思うんだ
そうやって夜の街を歩きながら
自分を慰めても何にもならないけど
疲れ果てて空に溶けていきそうでも
川のせせらぎはまだ聞こえるよ
灯りは少ないけど真っ暗ではない
希望めいたものをそこに見てもいいかな
何が大事だったんだろう
どこで取り違えたんだろう
考えてもしかたないけど
こんな自分になりたくなんてなかったよ
消えていくものが僕の全てなら
いいななんて思ってしまった
汚していったものを
蘇らせることはできなくても
残ったものを書き続けることはできるかな
そこに意味がないなんて聞こえても
朝はすぐ目の前まできてしまうから
「今日くらいはどうか疑わないで
いつかの話をしよう」
抑え込んだ愛情が溢れ出して
座り込んでしまった体が
遠くの方を見て激流に耐えるんだ
一瞬だけ見えた昔の映像が
弦の響きに乗って伝わってくる
ああこんな綺麗だったんだ
こんな素敵だったんだ
すぐ見えなくなってしまっても
それは確かにあったから
無かったことになんてならないから
水に逆撫でされた瞳が
ぼやけた街を潤していって
全ての祈りが放射していく
そこにはなんにもないけど
すべてがあった
僕自身を弦の一つにして
思いついた旋律を奏でれば
何か美しいものが生み出せるかな
そこには意味があるかもしれない
何か意味があればいいな
寝れなくても目を閉じよう
いつかの海を浮かべて
遠い記憶の海
美しい海
もう二度と見れない海を
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