マガジンのカバー画像

小説ですわよ

14
趣味で書いた小説をまとめました。
運営しているクリエイター

2023年1月の記事一覧

『小説ですわよ』第1話

あらすじ 「ホラホラホラ、轢くぞ轢くぞ轢くぞ轢くぞ」  ショッキングピンクのハイエースが、逃げる男の背中に激突した。衝撃と鈍い音が腹の底まで響く。 「マジかよ……本当にやりやがった」  水原 舞はそう呟きたかったが、口が開いたまま塞がらず、助手席で全身を固めることしかできなかった。  男は3メートルほど吹っ飛び、地面に倒れ伏したまま動かない。血は出ていないようだ。 「よーし」  轢いた張本人――森川 イチコは運転席のドアを開け、男のもとまで歩み寄っていく。舞も震える手でシー

小説の概要ですわよ!

 ネット小説を読んでもらうのに必要な情報を、何も書いてないことに今さら気づきましたわ。 ◆タイトルですわ!  未定。  以下3つが候補ですが、他に良さそうなものがあれば教えてください。 『異世界人、ぜんぶ轢く!』 『ドライブ・舞・ハイエース』 『PINPIN! クソカー』 ◆ストーリー概要ですわ!  水原 舞は上司に“のど輪”を食らわせて仕事をクビになり、当面の生活費を稼ぐため、ピンピンカートン探偵社のバイトを始める。その仕事とは、異世界から帰還した“返送者”をショッキン

『小説ですわよ』第2話

↑の続きです。  舞は、次の標的のプロフィールがまとめられた紙を受け取る。   大瓦 謙三。51歳。指定暴力団・大友会構成員。   犯罪および逮捕歴は傷害、殺人、強盗、窃盗、脅迫など多数。   2021年に異世界へ転生。22年12月に異世界より帰還。   以降、超常能力によって敵対組織の構成員を殺害。   能力、殺害方法は不明。  プロフィールの右上には、大瓦の写真が添えられていた。鋭い角刈り、長い揉み上げ、吊り上がった太眉、左頬の切り傷。いかにもである。 「見た目も経

『小説ですわよ』第3話

※↑の続きです。 「すっかり寒くなりましたな。こたつを引っ張り出すのが大変で」 「うちの猫がいなくなってしまって」  ご近所同士の老人が公園ですれ違い、噛み合わない会話を交わす。  イチコと舞はベンチに腰掛け、その風景をボケーっと見ていた。 「うまうま……闇金ウマウマくん」  くだらないシャレを言い、イチコは2個目のジャムパンを貪る。食べかすがボロボロこぼれ、それを目当てに数羽のハトが群がってきた。返送者を轢いたときの頼もしい姿とは、まるで別人だ。  それを横目に、舞は熱を

 『小説ですわよ』第4話

※↑の続きです。  信号が青に変わるのを待ちながら、イチコがタブレットの画面をスクロールさせる。簡潔な文章と何枚かの写真が表示されていた。 「午前中、探偵社に依頼主が来て、その内容をじいやがまとめてくれたんだ。1件目は、家から逃げたインコの捜索だね」 「人探しならわかりますけど、ペット探しもやるんですか?」 「5000円から1万円くらいでね」 「えっ、安っ」 「飼い主からしたら助かるだろうし、探偵社としても顔を売るのが目的だから儲けは度外視なんだよ」  信号が青に変わり、ハ

『小説ですわよ』第5話

※↑の続きです。  今日からは事務所に出勤することになっていた。舞は到着して、これは夢ではないかと乳首を引っ張った。小原によって破壊されたショッキングピンクのハイエースが、何事もなかったかのように駐車場に停まっている。乳首は痛かった。まあ、返送者を異世界送りにするような車だ。よくわからないカラクリがあるのだろう。舞は自己完結して2階へ上がる。 「おはようございま~す」  事務所に入るとイチコ、綾子、岸田がそろってテレビを見ていた。 「おはよ~」 「おはよう」 「おはようご

『小説ですわよ』第6話

※↑の続きです。  リストの返送者は全員轢いたので、イチコと舞は事務所へ戻る。ドアのベルに反応したのは岸田ではなかった。ソファに座る青いスウェットの少年が、気だるげにこちらへ顔を向ける。 「イチコ、おかえり~」 「ただいま、ブルー。じいやと姐さんは?」 「社長室で、なんか話してる」  イエローにブルー。この少年も軍団のひとりだと舞はすぐに察した。 「新人さんか~」 「水原 舞です」  ブルーがのそのそと立ち上がる。背丈は舞と同じか少し大きいくらいか。年齢はハッキリとしないが

『小説ですわよ』第7話

※↑の続きです。  翌朝。バイトは休みだが、10:30に事務所でイチコと会う約束をしている。  舞は顔を洗い、歯を磨き、台所に向かう。冷蔵庫の静かな重低音だけが響き渡る。母も妹も、今の時間は仕事中だろう。  コンロには味噌汁の残った鍋が置いてある。冬の時期、母は夕食に汁ものを多めに作り、その余りを舞のために取っておいてくれていた。  当然これが理由というわけではないが、舞は過保護すぎる母を恨むに恨めなかった。父の件で最も苦労したのは母だと知っている。犯罪者の妻ということで、