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内部通報、外部通報、内部告発の違い

間もなくパリオリンピックが開幕しますが、
体操女子、大変なことになっていますね。

飲酒、喫煙だけではない根深い問題もありそうな気もします。

緊急事態ではありますが、選手の皆さんには日頃の練習の成果を思う存分発揮していただきたいと思います。

また、宮田選手はまだ19歳ですし、人間誰しも間違いはあります。

今回の件をしっかりと反省するとともに、今後の成長の糧にしていただきたいと思います。


今回は内部通報について書いてみようと思います。


今回の宮田選手の件において、日本体操協会は会見で「内部通報」があったとの説明をしていました。


【内部通報とは】

内部通報は、コンプライアンスや会計不正などに対する防止策、そして、摘発手段として会社の内部統制の重要な施策の1つです。

ACFE(公認不正検査士)が公表する、世界各国の不正に関する統計資料である「report to nations」においても、不正摘発の最も有効な施策として紹介されています。


23p

「As shown in Figure 13, tips were the most common way frauds came to light, with 43% of cases being uncovered due to a tip from a whistleblower. This is more than three times as many cases as any other detection mechanism. 」


Tips とあるのが、通報に当たります。


【参考】

https://www.acfe.com/-/media/files/acfe/pdfs/rttn/2024/2024-report-to-the-nations.pdf


さて、日本体操協会の記事には、「内部告発」ではなかったのか?

との質問があったともあります。


内部通報、内部告発、何となくとなく違いがありそうですが、具体的な違いを説明するとなると、なかなか難しいですね。

内部通報について、法律等で定められた明確な定義があるわけではありません。あくまで、内部監査等における実務的な定義であることをお断りしておきます。


【内部通報、外部通報、内部告発の相違点】

・内部通報

政府広報オンラインによれば、「企業が企業内の不正を早期に発見して企業と従業員を守るため、組織内の不正行為に関する通報・相談を受け付け、調査・是正する制度」とされています。


・外部通報との違い

会社は、企業内の不正等に関する通報の窓口を設置します。通報窓口には大きく分けて、事業者内部に設置する「社内窓口」と、弁護士等に委託して事業者外部に設置する「社外窓口」の2種類があります。一般的には、前者を通じた情報提供を内部通報、後者を通じた情報提供を外部通報といいます。


要するに、内部通報と外部通報の違いは通報窓口の違いということです。なお、誰による通報か、つまり社内の関係者による通報か、取引先などの社外のソースからの通報かかは問われません。しかし、内部通報は社内の通報窓口への通報なので、社外の人間がこれを知っていることは考えにくいため、通常、内部通報は社内の関係者による通報が考えられます。

したがって、今回の日本体操協会への通報が内部通報であるならば、内部の関係者による通報ではないかと考えられます。


・内部告発との違い

内部告発は、企業の従業員などが、企業内部の不正行為や違法行為を、報道機関などの外部機関などの第三者に対して、公益のために開示することをいいます。

ちなみに、警視庁の外部通報は、内部告発に近い考え方になります。

筆者作成


【公益通報とは】

内部告発と似たものに公益通報があります。

「公益通報」は、企業の従業員などが、不正の目的でなく(目的の公益性)、勤務先企業などにおける刑事罰・過料の対象となる不正を、監督官庁、警察、マスコミ、消費者団体など一定の通報先に正当な手段により通報することを言います。

内部告発のうち、公益通報者保護法(2006年施行)に基づく要件を満たし、公益通報者が不利益な取り扱いを受けないことを保障される通報を公益通報といいます。

公益通報者保護法では、会社における違法行為の早期発見を重視しつつも、会社の不利益や行政リソースの浪費を防ぐため、公益通報の範囲を制限しています。したがって、濫用的な内部告発は公益通報に該当せず、通報者は公益通報者保護法によって保護されない点に注意が必要です。兵庫県庁における内部告発について、公益通報者保護法の対象となるかどうかが問題となっていますね。

なお、公益通報者保護法により、従業員数(アルバイトや契約社員、派遣労働者等も含む。)が300人を超える企業には、企業が企業内の不正を早期に発見して企業と従業員を守るため、組織内の不正行為に関する通報・相談を受け付け、調査・是正するための内部通報制度の導入が義務付けられています。


ざっとした概念の違いについては、以上になります。

それぞれのメリット・デメリットなどについても、次に書いてみようと思います。

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