スクリーンに吠える⑥

   ⑥


映画を思うとき、私は世相のいじらしさに自然と涙ぐましくなる。

スクリーンに吠える映画監督は、自分の影に怪しみ恐れて吠えるのである。疾患する監督の心に、スクリーンは青白い幽霊のような不吉な謎である。

映画監督は遠吠えをする。

映画観賞者は観賞者自身の陰鬱な影を、映画館の客席に釘づけにしてしまいたい。その影が永久に観賞者のあとを追って来ないように。


            令和元年 6月25日





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