スクリーンに吠える⑤
⑤
私どもは時々、不具なこどものようないじらしい心で、部屋の暗い片隅にすすり泣きをする。そういう時、ぴったりと肩により添いながら、ふるえる自分の心臓の上に、やさしい手をおいてくれる隣人がある。その手の温もりが映画である。
私は映画を思うと、烈しい人間のなやみとそのよろこびをかんずる。映画は神秘でも象徴でも鬼でもない。
映画はただ、病める魂の所有者と孤独者との寂しいなぐさめである。
【つづく】
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