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ゼルダの伝説 ティアーズオブザキングダム 400時間プレイした感想レビュー


先日420時間かけてようやくクリアしたので、感想レビューのようなものを。

  • あくまでも個人の感想です。

  • 前作との比較が多いです。

  • 賛否両論あります。

  • ネタバレを多分に含むので注意。

クリア状況など

プレイ時間 420時間
達成率 95.50%
コログ 886個
全チャレンジ、記憶コンプリート
破魔の祠、根コンプリート
洞窟、井戸、看板コンプリート
ハイラル図鑑完成
料理メモ未完成
討伐の証モルドラジーク、グリオーク、ブロックゴーレム
(イワロック残り10体、ヒノックス残り11体、デグガーマ残り10体)
全防具収集(ラバー、勇者シリーズ以外フル強化)

直撮りですみません

見ての通りのじっくりスタイルのやりこみプレイ。プレイ中は攻略情報やネタバレの類は一切遮断、事前情報は発売前のNintendo公式の動画やツイートのみ閲覧。
文字通りクリアまでに約420時間かけたのでクリア後の起動時間は30分ほど。(執筆時点)
全900個だと思って流石に諦めたコログの実は100個以上も取りこぼしていると知って地味にショック…。

前作ブレオブザワイルド及び、厄災の黙示録クリア済み。
その他ゼルダの伝説本編シリーズは概ねクリア済み。(ゲーム&ウォッチ、チンクルシリーズ、ボウガントレーニングなどスピンオフのようなものは未プレイあり)

必要な情報は一通り書けたと思うのでいよいよ本題へ。

感想

率直に言うと「面白いけど…正直もっと期待していた」といったところでしょうか。
いや、確かにこのゲームは面白いです、でなければそもそも400時間もプレイしていません。ただ、ハードルを上げ過ぎたというか期待し過ぎてしまいました。

前作ブレオブザワイルドは自分の中で100点をつけられる、人生で1番好きなゲームです。その続編ということで120点くらいは期待してしまっていました。でも今作に点数をつけるなら80点、Amazonレビューなら☆4評価ですかね。なので全然悪くないし、むしろ面白い部類なのですが、なにぶん120点を期待していての80点だったので、40点のギャップに正直ショックも大きいです。

しかし今作、ゲーム性だけでいえばどう考えても前作より面白いです。上位互換のよう内容となっています。
それでも前作を下回ると感じる要因は何なのか。いくつか考えられますが、1番大きな要因としては「新鮮味の欠如」だと思います。
完全新作で新鮮味100%だった前作と違い、前作の基盤の上に成り立っている今作は新鮮味30%ほどに感じてしまいました。ワクワク感が圧倒的に劣っています。
旅するマップも入手するアイテムもできるアクションも冒険のノウハウもほとんど知ってしまっているのです。
しかしこれらは続編と銘打たれた今作をプレイするにあたって予想できたことですし、ある程度は覚悟していました。それでもショックだったのは、新要素が想像していたよりあまりにも少なかったことです。

案の定ハードルを上げ過ぎてしまったわけですが、その理由としては発売間隔が大きいと思います。
前作から6年というスパンが空いており、これはブレスオブザワイルドとその直前の3Dゼルダであるスカイウォードソードとの発売間隔に相当します。
時のオカリナの発売から1年半でムジュラの仮面を発売したのを見てきた身としましては期待せずにはいられません。
もちろん自分はゲーム開発に関しては素人なので、単純な発売間隔では正確なことはわかりません。昨今のゲーム開発は昔より長期化していると聞きますし、途中DLCの発売やコロナ騒動もありました。そもそも3Dゼルダの発売間隔で測るべきでないのかもしれません。
基礎はすでに完成していた今作が、0から作り上げた前作と同じくらいの開発期間があればどうなるんだと思い込んで勝手に期待してしまっていました。

そんなこんなあって、今作から受ける印象は「完全新作の続編」というよりは「超大型DLC」の方が近いです。元々DLCとして開発していたけれど、想定以上の案が出たので続編として発売したという話も聞くので、自分の期待していた方向性がそもそも見当違いだったのかもしれませんね。
ともかく前作と比較しての感想をまとめると「ゲーム性は前作より面白いが、体験の楽しさは前作に及ばない」というものになります。

ここからはゲーム性や世界観についてより詳細にレビューしていきたいと思います。

ゲーム性レビュー

アクション

基本アクションがあまり変わり映えしないのは残念。追加されたのはダイビングと素材投げくらいでしょうか。素材投げは実用性や使用頻度も高いので嬉しい追加です。
最も残念だったのは「潜水」ができないこと。前作の時点で要望も多く、発売前PVにも水の神殿の水泡に潜るシーンがあったので、てっきり出来るものだと思い込んでしまい肩透かしを食らった気分でした。
トワプリの「奥義」のようなものも欲しかったですね。土遁の術が一応それにあたると思いますが、もっとたくさんあると良かったです。

右手の能力は総じて素晴らしいと思います。特にウルトラハンドは遊びの幅がかなり増えて楽しいです。前作の能力でできることはビタロック以外再現可能になっている点も良いですね。(ビタロックも動きのみなら擬似的に再現可能だと思われます。)

賢者と共に戦えるシステムは前作にはなかったので新鮮でとても楽しかったです。共闘システム自体はPVでわかっていましたが、それをほぼ全てのフィールドで、しかも同時に複数人で動けるのは想定以上でした。
賢者の能力自体は汎用性、実用性共にイマイチ。使いやすいのはチューリの能力くらいでしょうか。個人的にはミネルの能力は使い所こそ少ないものの、ロボットを操縦するロマンを感じ、リンクのアクションが擬似的に増えるので好きでした。
ただそれ以前に操作性が悪すぎます。どの能力も近づいてAボタンという発動のしにくさと、誤発のリスクを抱えているという問題があります。前作の能力の方が実用性、操作性共に優れていました。

マップ

今作のマップは3階層に分かれており、中でも地底は発売前に存在を伏せられていたので嬉しいサプライズでした。

地上のマップは正直前作とあまり変わり映えしない印象。当たり前ですが前作のマップを踏襲しているので細かい違いはあれど大きくは変わっていません。なので新しい土地に行くワクワク感は前作より薄かったです。ただ追加された井戸と洞窟は冒険感満載でかなり楽しめました。
監視砦以外に新しい町や集落がないのは残念。タバンタ村やアデヤ村など厄災で滅びた町の復興も期待していました。

空のマップは大々的に宣伝していたイメージと反して、かなり狭くて少ないです。始まりの空島が1番の大きさだったのは、前作で始まりの台地の小ささに感動した反面ショックでした。似たようなギミックの島が多いのも残念。
メインストーリーで行く場所やゾナニウム装備が手に入る島などは新鮮で楽しかったです。重力が違う場所の操作感も好きでした。

地底のマップは最初はその存在と広大さに感動したものの、仕組みに気付いてからは楽しさが半減しました。基本的に地上のマップと対になっており、地図を見ただけで重要な場所がわかります。なのでそこ以外を探索する価値が薄く、広大さが無駄になっている印象です。結果的に地上と同じ広さを誇るにも関わらず、いた時間は地上よりずっと少なかったです。
宝箱も宝の地図がなくてもわかるような場所に配置されているので、もっと別の場所にあった方が地図の存在価値も探索のしがいもあったように感じました。
イーガ団基地でブループリントの設計図は入手する楽しさはありましたし、地上で戦うと違和感のあるダンジョンボスと再戦できる点などは良いと思います。

アイテム

素材のバリエーションがあまり増えていないのは残念でしたが、これまで使い道の少なかった多くのアイテムに付加効果が追加されたのは嬉しいですね。武器や矢につけたり、クラフトしたりと使い道も大幅に広がっています。
料理のバリエーションもあまり増えていないのは残念ですが、料理レシピは期待通りの嬉しい追加です。

武器もバリエーション自体はあまり増えていないものの、付加効果が追加されて差別化しやすくなっているのは良いと思いました。朽ちている状態と朽ちていない状態に分かれているのも面白いです。
また、スクラビルドで擬似的なバリエーションがかなり増えたのも素晴らしいと思います。試しきれないほどの組み合わせがあり、最初から最後まで新鮮さがありました。
弓や盾もスクラビルドで幅が広がった点は素晴らしいですが、本体のバリエーションや効果があまり変わっていないのは残念です。

防具に関してはかなり不満があります。個人的に前作で入手した時に最も嬉しいアイテムは防具だったので今作も楽しみにしていたのですが、新しく追加されたものが少ない上に、性能に変化もないです。一見新規防具に見える勇者シリーズなどで水増しされていますが、そのほとんどが前作でも入手できるものです。空、地上、地底にわたる壮大なローメイ遺跡の報酬がファントムガノン装備だった時は失望しました。
性能もほとんど変わらないので、持っていたものを再び集めているだけに思えて収集や強化の楽しみも少なかったです。既存のものは効果やセットボーナス、もしくは見た目などを少し変えて再収集する楽しさを感じさせて欲しかったです。
稀に手に入る新規防具はもちろん嬉しいのですが、正直少な過ぎると思いました。

バトル

剣槍大剣以外の武器種や戦闘アクションが増えることを期待していたのでそこは残念。
ケムリダケ、コンランバナで戦い方が広がったのは良いですね。ゾナウギアも戦闘に活用できて面白いです。

賢者との共闘システムも今作ならではの要素で素晴らしいと思いました。敵のヘイトを買ってくれるので初心者上級者問わずに活躍してくれると思います。
NPCとの共闘イベントも新鮮で楽しかったです。特にゲルドの防衛戦は配置などを考える楽しみもあって好きだったので他でもあると嬉しかったです。

魔物の種類は本音を言えばもっと増えて欲しかったですが、それでも予想の最低限くらいは増えていました。既存の魔物の見た目や動きに変更が加えられていたのはアクセントとして良かったです。防具などは前作のDLC要素が普通に解禁されていたので空オクタや金色シリーズも普通にいて良かったのではないでしょうか。

新ボスのブロックゴーレムは今作の能力を余すことなく使えるチュートリアルも兼ねているようで感心しました。
前作は手応えがあるボスがいなかったので、グリオークの追加も良かったです。攻略法を発見する楽しさがありました。
瘴気の手は前作のガーディアンに相当する存在だと思いますが、慣れていたためかガーディアンほど脅威には感じませんでした。ただ空が赤くなる演出は絶望感あって好きです。

謎解き

自由度が圧倒的に高くなった反面、謎解きの楽しさは少し薄まったかもしれません。
解法が無数にあることは素晴らしいですが、いわゆる模範解答よりも手軽な手段が多くなりすぎているように感じます。謎を解かない方が早い場面は結構ありました。
でもそれはもうゲームの性質上仕方ないのかなとも感じました。

ダンジョンの少なさは前作でも指摘されていましたがあまり増えていなかったのは残念です。メインじゃないものも合わせて前作の倍くらいは期待してました。
ダンジョンマップは前作より圧倒的に見やすくなっていて良かったと思います。
ダンジョンの謎も正直解法が増えすぎて物足りなく感じてしまいましたが、これはもう仕方ないのかもしれませんね。従来の謎が解けなければ詰むという方式では受けづらいでしょうし。

ダンジョンボスはお馴染みの魔物になっていてカースガノンより良いと感じました。前哨戦があるのも好きです。

ダンジョンクリア後のムービーが同じすぎるのは問題だと感じました。前作の神獣クリア後のムービーは内容こそ似通っているものの、きちんとそれぞれの色を出せていたと思います。
今作は多少の言い回しの差があるくらいで、長い上に皆ほぼ同じことを語っているため、見る楽しみが少なかったです。
どこからクリアしても良いようにという配慮だとは思いますが、少しずつ違う角度で語られているともっと良かったのではないでしょうか。

その他

BGMは前作の方が良かったかなと思います。もちろん今作も悪いことはないんですけどね。
前作の英傑のテーマはどれも印象に残りましたが、エンディングで新賢者のテーマが流れた時はシド以外はっきりとは覚えていませんでした。英傑テーマをアレンジしたであろうダンジョンBGMの方が印象に残っていると思います。
かなりビビッときたのはフリザゲイラ戦のBGMですね。聞くために何回も戦ったくらいには好きです。あと料理時の鼻歌が小ネタ満載で良かったです。

前作よりできることが増えた反面、本体性能の低さは目立った印象。クラフトした物が目を離すと消えたり、上空から地上を見渡しても近づかなければオブジェクトが表示されないなど不便なことが多いです。
戦闘時も前作より乱戦になることが多くフレームレートが落ちやすいです。数秒間フリーズする現象にも数回遭遇。
ただこのボリュームのゲームにしてはかなり最適化されており、400時間プレイしてバグに遭遇することも一切ありませんでした。

世界観レビュー

タイムスリップ

根本的な問題としてタイムスリップの問題点が解消されていないように思います。時間逆行で過去を改変する場合、大まかに分けて、改変することも織り込んだ歴史になっているか、違う世界線に分岐するパターンがあるのではないでしょうか。今作の場合そのどちらの要素も含んでいて、矛盾しているように思います。

復活したガノンドロフがゼルダとリンクを知っていたのは、ゼルダが過去に干渉することは織り込み済みである最たる証拠です。しかし時間逆行の影響のほとんどはゼルダが過去に飛ばされた後に起こっています。人々は地上絵などを新しい物として認識しているのです。
地上絵が天変地異後に出現したのならば、龍の泪を見た昔の人々が描いたという事実が矛盾しますし、白龍も天変地異後に出現したなら、マスターソードをはるか昔から抱いていたはずが、リンク視点では天変地異後の短い期間しか抱いてないことになります。

もし地上絵も白龍も発見されていなかっただけで、前作の時にも存在はしていたという理屈なら筋は通りますがそれはそれで問題が発生します。完全に決定論的な世界観になってしまうので、前作の冒険も今作の冒険もリンクや皆の頑張った結果ではなく、ただの決められた歴史の流れに従った予定調和になってしまう虚しさを感じてしまいます。
前作で厄災ガノンを倒す前から、過去でゼルダと会ったガノンドロフが地下に封印されていることになるので、ガノンを倒してゼルダを救うという結果が決まっているのです。ゼルダが過去に飛ばされる必要性がありますから。
ゲームという性質上ある程度は決められた道筋をなぞるものなので、理屈としてはこれが一番良いのかもしれませんがやはり虚しさがあります。

作中のラウルは世界線が分岐する世界観だと思っているようで、ゼルダが過去に戻っていない世界を語っています。もし世界線が変わるなら、最初のリンクの元にはマスターソードは届かずに世界は滅亡するのではないでしょうか。マスターソードが届くのは、ゼルダが過去に飛ばされた時に発生した新しい世界線のリンクだけです。
前作で交流のあったはずのキャラクターの記憶がなくなっているのもこれなら一応説明はつきます。単純に新しい世界線のリンクは過去に交流を持たなかったのでしょう。
ただしガノンドロフが2人のことを知っていた件は矛盾してしまいますが。

総合して考えるに、やはり決定論も並行世界線も色々混ざったような矛盾の多い世界観になっていると思います。ゼルダの伝説シリーズは時間移動をテーマにすることが多い作品ですが、正直どの作品も時間移動の設定はいい加減に感じます。
テーマを扱いきれないならば、そもそも題材にしないでくれとも思いますが、それでも時のオカリナの場合、ゲーム内で時間移動のギミックがあるのでストーリーの整合性よりゲーム性の楽しさを優先した結果だと理解できました。
しかし今作の場合、時間移動がゲーム性に関係なく、ただただシナリオが矛盾しているだけなので残念な気持ちが大きいです。複雑だけど矛盾のある今作のストーリーより、シンプルだけど矛盾のない前作のストーリーの方が好きですね。

ストーリー

タイムスリップの根本的な問題は置いておいて、ムービーのクオリティは前作同様かなり高いです。昨今のゲームにしては総量は少ないですが、キャラの演技から仕草まで徹底されており、BGMも非常にマッチしています。過去作のオマージュも楽しめます。
さらに今作は伏線を意識した作りになっており、記憶のムービーは全てにきちんと意味があります。手を掴めずに始まった冒険が手を掴んで終わる、私を探してと言った時に実は登場しているなど演出も素晴らしいと思いました。
ただ、前作よりも伏線や順番が重要な作りになっているため、龍の泪をどこからでも自由に見ることのできるゲームシステムとは若干相性が悪いと感じました。

トライフォースがストーリーに絡んでこないのは残念。前作でゼルダの手の甲に宿っていたものの、説明は全くなかったので今作で触れられることに期待していました。せっかくハイラル創世の時代の話であり、時の神殿も登場するのでストーリーに絡めるならもってこいだと思ったのですが…。
ハイラル王国の成り立ちもせっかく当事者がいるのだからもっと詳しく描写されて欲しかったですね。

今作の賢者とソニア、ガノンドロフにはそれぞれ何らかの力が備わっており、さらにそれを秘石の力で倍化しているという設定がありました。それぞれの力は時のオカリナの賢者と一致(雷以外)していて面白かったです。
ゼルダが光と時の両方の力を使えるのは、単純に考えてラウルとソニアの子孫だからだと思うのですが、ラウル達に子供がいる描写はなかったです。
ラウルもソニアも早逝しているので現存のハイラル王家が本当に2人の子孫なのかはよくわからないままでした。もしかしたら直系ではないのかもしれません。この辺はもう少し描写が欲しかったですね。
ただ、能力は血によって受け継がれる可能性が提示されたことから、最初のラウルや前作のハイラル王が魂だけの状態で登場したのはゾナウの血筋による魂の力であると説明がつけられそうなのは面白いと思いました。英傑達ももしかしたらどこかでゾナウの血脈を引いていたのかもしれません。

正直秘石は賢者に渡すのではなくリンクに渡した方が良いのではないかとは思いました。魂の賢者なんて何を倍化してるかもよくわからないので特に…。
特有の何らかの力が備わってないとダメなのでしょうか?リンクならば何か持っていそうな気はしますが。
ガノンドロフだけ秘石の力であれだけ変貌するのも少し違和感がありました。元々の闇の力のポテンシャルがかなり高いということでしょうか。

エンディング

ゼルダが人間に戻った理由はイマイチ分かりにくかったです。個人的にはモドレコ(時の力)説とトライフォース説が思い浮かびました。

モドレコ説はリンク達が手をかざして白龍がゼルダに戻るまで時を戻したというものです。根拠としてはソニアが時の力を行使する際の「自分がどこに、どんなふうにあったか思い出して元の場所に戻ってもらうような…」というセリフです。
物というより人に向けたセリフのように感じられます。伏線の多い今作ですし最後のシーンを指していても不思議ではありません。
しかしモドレコは物体を移動させる力であって、そのものの時間を戻す用途では使用できません。
ただ、これを解決する伏線になっているかもしれないのがラウルが光の力でモルドラジークを撃退するムービー。ソニアとゼルダが手をかざしてラウルの力を増幅させているシーンです。これと同じ理屈でリンクのモドレコの効果を拡大した結果、対象そのものの時間を戻せるようになったという可能性が考えられます。
そもそも時の力自体は物体の移動だけでなくタイムスリップも可能な幅広い力なのでありえなくはないと思います。

トライフォース説は最後にリンク、ラウル、ソニアが揃った瞬間トライフォースが完成して、あるいはトライフォースはリンクが有していてその力で人間に戻したというものになります。
根拠となるのは最後のムービーの「ラウルの光の力とソニアの時の力。2人がリンクに力を貸して奇跡を起こしたのかもしれません…」というミネルのセリフです。
奇跡という抽象的な文言は、理屈で戻したというよりはトライフォースの絶対的な力のようなものを感じさせます。ゾナウの叡智を知り尽くしたミネルがこう表現しているのもポイントですね。
3人集まって揃ったというより、前作のラストで封印の力を使い果たしたゼルダの手から離れたものを今作でリンクが無意識に集め直していたためリンク1人に宿っていた可能性が高いかもしれません。その場合2人はその使い方を示してくれたのではないかと。
ただ肝心なトライフォースのマークが出ていないのでモドレコ説よりも可能性は低そうです。

いずれの説にせよ憶測の域を出ないのが現状です。ただただ奇跡が起きただけという結論だと納得できないので、納得できる答えは用意されていて欲しいです。

キャラクター

ラウル達についてはもう少し周辺事情が知りたかったですね。多くを語らぬまま消えたのは、無関係なリンクに全てを託してしまった手前理解はできますが。
ハイラル建国の時代の物語でありながら、その情報が少ないのはとても残念でした。侍従が残した石碑だけではもの足りません。
ゾナウに関してもほとんど情報がないのが残念。空島のボリュームはこういう情報を散りばめる形でも増やして欲しかったです。
ガノンドロフを封印する際のムービーは今作屈指の名シーンでした。メインテーマのかかるタイミングが最高です。

今作を語る上で欠かせない存在なのがガノンドロフ。余計な背景がなく、シンプルに悪役なのが良かったです。今までで1番好きなデザインだったのでもう少し魔王化していない状態で見てみたかったですね。
魔物を従えている、闇の力があるなどの描写はもっと詳細に描かれていて欲しかったです。ソニアの殺害方法も少し唐突に感じました。
最終決戦時にはせっかく喋れる敵なのだからもう少しリンクと問答して欲しかったと思いました。ゼルダが命懸けで回復させたマスターソードへの反応がないのも残念。
バトルは、お馴染みの弾を跳ね返すギミックや敵でありながらまさかのラッシュを仕掛けてくるギミックなど最高でした。人間形態と戦えるのも良かったです。
途中まで余裕綽々でありながら唐突に黒龍化するのは違和感があったので、その過程はもっと丁寧に描写して欲しかったです。あとラウルも知らなかったであろう龍化の法を知っているのも多少違和感がありました。厄災ガノンとの関連性も明確にして欲しかったです。

前作から続投の新賢者たちは、悪くはないのですが、正直英傑ほどの魅力はないように感じてしまいました。
しかし英傑を必要以上に登場させないことは、過去に囚われていた前作と違って、今作がハイラルの新時代の物語であることを示していたようで良かったと思います。
一緒に冒険するのが本物ではなく分身だったのは非常に勿体無いと感じました。ゲームのパフォーマンス上の問題かは分かりませんが、ストーリー上は本物でも全く問題なかったように思います。遠く離れた時にワープする問題もシーカーの技術や秘石で理由付はできますし。
最後のラウルを支える古代賢者のオマージュシーンも、本人たちは一緒に旅していないのでなぜ知っているのかという違和感がありますし、ほとんど絡みのないミネルのお別れにしんみりするのも説得力が感じられません。発売前のPVやゲームの最後の方でリンクは1人で戦っている訳ではないと強調されますが、分身では実質1人で戦っているようにしか感じませんでした。
本物と冒険できていればこれらの問題は解決できますし、各所で賢者同士の掛け合いなどがあればもっと愛着が沸いて良かったと思います。

前作との繋がり

前作から何年経ったかは明確にされていませんが、数年経過したハイラルを冒険できるというコンセプトは良かったと思います。まるで時のオカリナで7年後の世界を冒険するような高揚感がありました。変化した土地で、前作で会ったキャラクターが成長していたり、境遇が変わったりしているのを見るのは楽しかったです。
それだけに前作で交流したはずなのに、会ってないことになっているキャラが度々いたのは非常に残念でした。サクラダなんかがその最たる例ですね。サクラダと知り合わずして、エノキダとイチカラ村を開拓するルートは存在するのでしょうか?
前作をプレイしていない人への配慮だとは思いますが、それにしては結構な数のキャラが旧知の設定になっていたので、前作で特徴的だったキャラは皆旧知の設定にして欲しかったです。

カッシーワが登場しなかったのにも不満が大きいです。もしかして見逃したのかと思いましたが、クリア後に調べたところやはり登場していないようでした。登場させない理由が明らかにDLCのためのように感じられるのはかなり気分が悪いです。DLCが存在しないならば、きっと登場していたはずですし、登場させない納得のいく理由がそれしか思い浮かびません。
そもそもDLCに求めているのは完成品に+αする要素であり、DLCを作るために完成品から要素を差し引いて未完のような状態にはして欲しくありません。
任天堂がゼルダでこんなことをしてくるとは思ってなかったのでショックです。むしろDLCでも登場させずに、本編で登場していないことにも納得のいく理由付けをされたほうがマシに思えます。

古代シーカー由来のものが軒並み消えていたのも違和感がありました。テキストでも良いので何か補足は欲しかったです。

始まりの空島のゴーレム達のセリフが前作のハイラル王のオマージュ多めで嬉しかったです。

その他

個人的に後付け設定のゼルダ史にはさほど関心は無いのですが、今作の位置付けはなかなか難しそうですね。あえて考えるならば全くの新規軸、あるいは1巡した世界ともいうべきなのでしょうか。今作のガノンドロフや封印戦争などはこれまでの枠の中には収まらないでしょう。
これでまた歴史表がガラッと変わると思うので、これを機にゼルダ史の考察も下火になればなと個人的には思います。
そもそもがシリーズを無理やりまとめるための後付けの矛盾だらけの設定であり、制作側の気分で二転三転するようなものに考察の価値は薄いと思います。
宮本氏も「ユーザーが気にしないと言ってくれた方が楽」と発言していますし、シリーズを作る際の制約になって欲しくはないです。新規獲得の面でもナンバリングを意識させる設定は無い方が良いでしょう。
地続きの作品以外は大まかな流れとオマージュや小ネタを入れるくらいで良いのでは無いでしょうか。近年はブレスオブザワイルド、ティアーズオブザキングダム共にこの方向性に舵を切っていて個人的には嬉しいです。今後もこの方向性に期待したいと思います。

最後に

ここまで色々と書き連ねてきましたが、振り返ってみれば批判の方が多くなってしまったかもしれません。
しかし何度も言いますがそもそも面白くないゲームを400時間もやるわけがないので、胸を張ってティアーズオブザキングダムは面白い、面白かったと言えます。
なので400時間もプレイしたからこそ、ゼルダの伝説が好きだからこそ感じた意見として読んでいただけると幸いです。

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