【思考】他人の眠りを守れなかった話

平日の夕方、用事の帰りに電車に乗った。途中の駅で、隣に大学生くらいの女性が座ってきたのだけど、座ってすぐゆらゆらしだした。え、眠ってる？本当に座ったばかりで相当早かったので、私はびっくりした。
そこで思い浮かぶのはやはり、わたしの肩にもたれてきたらどうしよう、という問題だ。経験上、電車で眠るのは相当気持ちが良く、びっくりするほど体が傾いてしまう。私も独身時代電車通勤で、多くの人の肩にもたれさせてもらってきた。
だからなのか、持たれてきたらもたれさせてあげたい。そんな気持ちがあった。男性なら難しいけれど、若い女性だし、座った直後に眠りの世界に行ってしまうなんて疲れは半端じゃないだろう。よし、いいよ！なぜか私は覚悟を決めた。
しかし、いざ私の方にもたれかかってくると、ひどく動揺してしまった。あれ、なんか恥ずかしい。そして向かいに座っている、こちらも大学生くらいの女の子が、ちらっとこちらを見たような気がして、このおばさんどうするのか見といてやろうなんて、考えているような気がした。見ないで！
しかも、きれいに肩にもたれてくれていればなんとなくいけたかもしれないのだけど、若干前のめりでこちらに倒れてくる。したがって私の肩の前を、彼女の頭がぐわん、と寄ってくる感じ。
うわぁ、なんか肩で受け止める感じじゃない。なんかこれ最悪、この子私の膝の上に寝ちゃうんじゃ？という不安もよぎる。
そして私は、座り直すふりををして、ちょっと彼女の体を押してみた。一瞬起きて戻るのだけど、またすぐ眠って倒れてくる。これを、4回くらいしたと思う。
眠りを邪魔したくないなんてかっこつけた自分を恥じた。それより私は、周囲の視線が気になって無理だった。私がどんな対応をしているのか、乗客皆んなに評価されているような気持ちになってしまうのだ。
ああ、きっと私自身が、こうやって他人を観察しているのだな。こないだも電車に乗った時も、落ち着きのない小太りの中年男性が同じ車両に乗ってきたんだけど、何か確認しているのかよく立ち座りする人だった。そして座る度にどすんっ！と座って、隣の金髪のお姉さんが軽くて跳ねるほどだった。
このお姉さんどうするんだろ？場所移動したり何か対応するのかな？と気になってしまい、ちらちら見てしまっていたのを思い出した。
結局はそのお姉さんは動揺する素ぶりも見せず、移動することもなく携帯を見てるだけだった。
でも今回わたしは、耐えることができなかった。降りる駅ではない駅で、降りる駅ですという雰囲気を醸し出しつつ一旦降り、ダッシュで隣の車両に入った。ふぅ！自分の小ささを改めて感じた、夕方の電車、ああ無情。