第217回:毎週「Nature」誌から一つ、論文のabstract(日本語要約)を選んで、解説しながら紹介するとどんな風になるか? の42回目

昨日は、超強烈な雨のなか外部の講義に行ってまいりました。よその学生が非常によく映るのはどうしてなんでしょうね。不思議です。

さて、今週のNature誌(Volume 630 Number 8015)にはどのような記事が掲載されていたのでしょうか。

まず目についたのは、「社会科学:企業は消費者の反発にもかかわらずオンラインの誤情報に意図せず資金を提供している」と「社会科学:1月6日事件後のプラットフォーム排除により、ツイッター上での誤情報の到達範囲は縮小した」ですが、社会科学って言ったって、本当に記事っぽい。Natureだなあという感覚しかありません。内容もよくわからないですし。どうやって解析しているのかについては興味がありますが、これも?でした。

気になったと言えば、今週号のNature誌には中国特集がありました。Nature誌が中国よりなのか? という学者・ジャーナリストがいますが、よく言えばリベラル、悪く言えば…。

個人的には、各国事情についてはどうでもよく、そのようなすぺーすがあるのならば、もっと面白い論文をバンバン掲載していただきたいです。

そんな中、今週号で最も面白い(だろうな)と思った論文は「健康科学:リアルワールドデータからのデジタル病理学のための全スライド基盤モデル」です。

私、微生物学で研究をしているものですが、一方では医学系の学部にも所属しておりますので、やはり、未来の医療の在り方が気になります。

未来の医学の在り方として、現在の技術でいえば、遺伝子解析技術と画像解析技術、AIの3つは、将来の医療に深く関係してくるだろうと考えております。

勿論、私は未来学者などというものではありませんので、将来がどうなるということを予見しようと思って研究しているわけではありません。ですが、現在の技術が少なくとも直線的に、可能であれば、対数的に進化していった先に見えてくるのは、やはり、画像解析と遺伝子解析による、診断(病理診断や、遺伝子診断ということです)が想定されます。

今回の論文では、病理学、つまり、健康な組織がどのようにして疾患になっていくのか、つまり病気になる道筋について、組織学的、つまりスライド上の画像の変化を観察することで病気になる道筋をわかろうとする学問の基盤整備に利するものです。

現在病理医の数はだんだん少なくなっていると思いますし、病理医の業務は非常に多くたいへんです。ですから、この論文のような基盤が整ってくると、高度に進化した画像解析技術で、微少な病変までも検出することが出来、それがAIによって、進行度などの類推ができるようになり、遺伝学的な背景でさらにその予測の制度を修正するというようなことになるのかなと思います。

医学は、病気が起こってから対処するより、予防的に動ける方が良いに決まっています。ですから、このような基盤的な技術革新が多く起こり、現在の医療(問題も多いと思いますが)をより良いものになる可能性がありますので、このような技術が高度に発展していく将来は少しは良くなるのではないかなと思います。

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