第228回:論文30の解説4回目(今回でこの論文も終わり。遺伝子発現の違いくらいまでは良いけれど、その先の細かな遺伝子の発現状況の変動と遺伝子の機能との関係性については、本当に勉強が必要です。若い世代の人たちはどのようにこのような雑多な知識を整理できているというのだ…?)

はい、今読んでいる論文も今回で最後になります。

今までのデータを簡単にまとめると、高脂肪食を2週間摂食させた群の雄親からと普通食の雌親から生まれた子マウスには耐糖能異常を呈するものが出現することがわかりました。

で、その原因が、高脂肪食群の雄親の精子に含まれているscnRNA特に、ミトコンドリアで転写されるRNAの質と量が関係していることがわかりました。さらに、その精子が受精に使われた時には、胚の遺伝子発現に大きく影響を及ぼすこともわかりりました。

このことは、雄親の精子形成期の雄親の健康状態が、子マウスの健康状態に直接影響する可能性があるということを意味しています。

それで、今回のFig.4になるのですが、論文自体の構成からはFig.3で終わっていても、それほど大きく意味合いが変わるということはなかったと思うのですが、近年のとにかくデータを求められる科学業界では、このようなデータも必要とされます。

ですから、Fig.4についてはあんまり深い意味がないようにも読み取れます。まあ、でも、受精後にどのような遺伝子発現状況の変化が起きて、それが子マウスの健康状態に関係しているのかを示す重要なデータであることは間違いありません。

ということで、受精した後に発生の初期段階でどのようなことが起きているのかということが示されているのです。

まず、Fig.4aですが、高脂肪食群の雄マウスから得られた精子が受精に使われた胚のうち、Fig.3cで確認された遺伝子発現筐体が変化している群(HFD-A)と低脂肪食群との比較を行っています。

このFig.4aの図はMAプロットというのですが、横軸には平均遺伝子発現量を取って、縦軸には2群間の発現量の比を取っています。そうすると、HFD-A群で発現が上昇している遺伝子が0よりも大きいところにプロットされ、低下している遺伝子が0よりも下にプロットされます。わかりやすいです。

で、現在の科学では、遺伝子発現を確認したとたんに、どのような経路の遺伝子群が総じてい上昇しているのか、低下しているのかなどを検索します。Gene ontology(GO)とか言ったりします。

そうすると、酸化的リン酸化経路の活性化が示唆されたということです。このデータはFig.4bcdに示されています。ただ、個別の遺伝子については確認することはここでは重要ではありません。

この個別の遺伝子の発現状況が重要になってくるのは、もっとシステム生物学の手法が一般化されて(今でも十分一般化されていますが)多くの研究者(つまり、次世代シーケンサーが出現した頃移行に研究者となった方々)にわかるようになってからではないかと思います。

その次に、発生の段階で遺伝子発現解析を行って、主成分分析を行うと、Fig.4eに示されるような、ある種の軌跡を読み取れるような図を作ることができます。

この図を見ると、高脂肪食群のHFD-Aのスポットはそれほど低脂肪食群のスポットと大きく離れたところにはありません。ですから、この高脂肪食群のHFD-Aの胚が大きく発達段階が影響をを起こしているようには思われません。

これ以降のデータは本当にあんまり読んでも読まなくてもよいですし、私自身も、本当にここまでデータ必要なのかなと思うのでした。領域の研究者はおもしろいとおもうのかなあ?

ともあれ、高脂肪食によって、雄親の脂質代謝が機能低下に陥るようですが、その代償としてその時に形成される精子には精子形成期のミトコンドリアで転写されたmt-tRNAの転写が高まるということです。このことをさらに確認するために、IMPC(The International Mouse Phenotyping Consortium)のデータを検索したということです。

このあたりの研究の展開が、本当に深しと違うなというように思うところです。今からでもこのような研究手法を勉強する必要があるのかもしれません。

で、そのIMPCでミトコンドリアの構造や機能にかかわる遺伝子や表現型の出方につて検索して解析したということです。そうすると、父親由来の効果が子の脂肪量増加や耐糖能異常と結びついているということが統計学的に有意なものとして示されたということです(Fig.4h)。また、遺伝子変異マウスのデータベースであるEMMA(European Mouse Mutant Archive)を調べてIMPCで明らかになったことの確認をしようとしています。

行ったことは、Fig.4hで明らかになったミトコンドリアの機能に関する遺伝子を欠損させたマウスの精子(バンクに凍結保存されているようです)を使って検証しています。

ただ、この当たりからのデータはあまり重要な気がいたしません。やはり、このFig.4は付け足し感が非常にあります。

でも、これでもよいかなと思いました。結局は父親の精子に含まれる因子が子マウスの表現型に影響している一つのモデルがあるということが分かったのですから。

ということで、今回はこれで終わりにします。



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