第220回:毎週「Nature」誌から一つ、論文のabstract(日本語要約)を選んで、解説しながら紹介するとどんな風になるか? の43回目

今週号のNature誌(Volume 630 Number 8016)にはどのような論文が掲載されていたのでしょうか?

まずは、製薬業界の仕事の在り方をさらに換えるだろうと思われる「計算生物学:生体分子間相互作用のAlphaFold3による正確な構造予測」です。

コロナのワクチンくらいから、製薬業界の暗躍がとか、製薬業界の陰謀がなどと語られることも多くなってきています。ある意味本当だと思いますが、製薬業界も、副作用や副反応のない薬やワクチンを生み出せるのならば存在意義があると思います。でも実際には、お金が中途半端に足りないのでしょうかね、そっちの望ましい方向にはいってなくて、お金儲けのほうに行っている印象がついてしまっています。

以前から、製薬業界の内部のワークステーションでは、コンピューター上で、タンパク質と化学物質の相互作用の検索が行われているという話がありますが、今回の論文はその相互作用の制度をさらに上げるというものです。

ということは、結局お薬は、どのように副作用を取り除くかということですが、こちらも標的とするタンパク質とか分子以外には作用しないものをスクリーニングすればよいだけですから、あとはADME(吸収、分布、代謝、排泄)の問題ということになりますので、結構製薬業界の仕事は変わりそうです。陰謀もできそうですかね。

地祇に面白そうだったのは、「ゲノミクス:類人猿の性染色体の完全塩基配列と比較解析」です。

やはり、ヒトがどれだけヒトであるために、どのような遺伝資源を使っているかには興味があります。今回は遺伝構造のみのようですが、今後遺伝子発現のデータが含まれてくると思いますので、面白い研究領域であることには変わりがありません。

最後の論文は、「微生物学:腸マイクロバイオームを温存するグラム陰性細菌選択的な抗生物質」です。ちょっと私の専門領域に近しいかなと思いました。

ロラマイシンという新しいリポタンパク質輸送系を標的とする抗生物質のお話です。

このお薬は、グラム陰性細菌以外の細菌にはあまり影響を与えないというところが新しいということですが、おそらくこのように機能的な分子を標的にした抗生物質を作ると、必ず耐性が生じてきます。

そうするとその耐性に対して別の薬を併用するようになったりして、結局はうまくこの戦略はいかないと思います。

でも、良い面としては、新しい抗生物質の標的分子の同定がNature誌に掲載されるほどの価値があるということです。

私たちももう少し頑張らないといけません。ちょっと現時点での興味が検査法の確立に向いているので、どうやって限られた(本当にかぎられた)私たちの研究資源をどうやってそっちに振り分けていくかは大きな問題です。

すでに木曜日ですから、本日、明日で今週も終わります。歳をとると時間経過が速くなるというけれど、私にとってはそんなことはありません。1日が過ぎるのに無限の時間が経過しているように思うことも多いです。どうしましょう。

ということでした。


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