第225回:毎週「Nature」誌から一つ、論文のabstract(日本語要約)を選んで、解説しながら紹介するとどんな風になるか? の45回目

今週のNature誌にも面白そうな論文が掲載されていました。

私たちは薬剤耐性菌の研究をしているので、細菌を薬剤耐性化するために必要な薬剤耐性遺伝子の運びやであるところのプラスミドの挙動については注目しています。そういう意味では、「微生物学:細菌のDdmDE防御系によるプラスミドの標的化と破壊」は興味深いといえそうです。

興味深いといえば、同じような論文がScience誌にも掲載されています。でもこちらのほうはFigureが本文の後ろについている、いわゆるオンライン版での掲載になっています。内容はほとんど同じなのですけれど、競争相手だったんだろうか?

でも、内容はコレラ菌がどのようにプラスミドをコレラ菌としての生体防御(つまり、プラスミドは外来の因子としての認識)の一つのシステムとしてDdmDEシステムを研究しています。この点は、私たちが欲しいデータの種類ではありませんでしたので、まあ、がっかりな感じです。

で、ここにはとりあげませんが、依然としてCOVID関係の論文が多く掲載されています。もしかすると本当にNature誌や製薬業界や関係研究者たちの間に何らかの関係性があるのかもしれません。所詮は「世の中金や!」ということなのかもしれませんね、私たちのところにはお金は回っては参りませんけれども。

で、本当に興味があったのはやはり、検出系の論文です。「ゲノミクス:マルチスケールのトポロジーによって細胞以下レベルの空間トランスクリプトミクスで細胞を分類する」になります。

もうこのあたりになると、タイトルで内容を理解することがほとんど難しいという感じになっています。

そもそもマルチスケールのトポロジーとは何ぞや? 細胞以下レベルの空間トランスクリプトミクスとな何ぞや?

簡単に言うと、それは解像度を上げるということです。いずれにしても、遺伝子発現状況が細胞レベルで解析できる時代は終わっていて、単一の細胞で解析できる時代になっています。

でも、その解像度をさらに上げると、核の中でどのタイミングで遺伝子発現が起きているのだとか、ミトコンドリアの中で転写活性が上がっているというようなこともわかってくるのでしょう。

これらのことがこの論文のタイトルのように、単に細胞種の分類に使われるだけならばそれほどの意味はないのでしょうが、とにかく解像度を上げるということはある意味正義だと思います。

で、この解像度を上げた状態で、トランスクリプトミクスつまり、遺伝子発現解析を行い、細胞種を特定することで、例えば、臓器の内部、例えばガン腫瘤の内部にどのような細胞がどの程度、どのように集まっているか迄わかるようになると思います。

というか、その手法をこの論文では提案しているのだと思います。

問題は、これらの技術が例えば医療などの現場で、検査法の一つとして繁栄されるにはコスト面や解析技術面で大きな障壁があることではないかと思います。

基本的には、医学部にはいるものの、医学についてはそれほど熱心に応援しているわけでもないので、医師の方々が仕事を追われるようになったとしても、誤診が減るような技術が導入されることは賛成です。

ですから、近未来的にこのような解析技術が医療に応用されることについては熱烈応援したいと思います。

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