第221回:毎週「Nature」誌から一つ、論文のabstract(日本語要約)を選んで、解説しながら紹介するとどんな風になるか? の44回目

なんだかおかしい。1週間たってしまっている。おかしい。

ということで、今週のNature誌()にはどのような論文が掲載されていたのでしょうか?

おかしいなあ、1週間たっちゃってた。

おかしいなあ、と思った論文が「代謝:食餌が誘発する精子由来ミトコンドリアRNAのエピジェネティック遺伝」です。第212回で紹介した「微生物学:父系マイクロバイオームの乱れは仔の適応度に影響を与える」と同じような(厳密には違いますが)系統の論文です。

このような父系の遺伝形質が子孫に伝わるという研究が、立て続きました。ということは、このような研究ができるようになったということと、このような研究が理解されるようになったということでしょう。

第212回で選んだ論文では、非常によく整ったデータ構成で、父系の精子形成がその時の腸内細菌叢の構成(直接的には、おそらく代謝物を介して)によって、子の体重減少やいわゆるフィットネスに直接影響しているということを報告しています。この子のフィットネスが影響するということにもmiRNAの存在が示唆されていました。

今回の論文も、同じように父系の遺伝形質、今回は「ミトコンドリアtRNA(mt-tRNA)とその断片(mt-tsRNA)が特定された」とのことですから、いわゆるエピジェネティック(遺伝子配列の変化を介さない)な遺伝子発現の調節ということになっています。

で、さらに、技術的にも工夫があり、今や、単一の細胞で遺伝子発現を確認するのは当たり前の状態にありますが、この論文では、「単一胚トランスクリプトーム解析を行ったところ、受精の際にmt-tRNAが精子から卵母細胞に移行すること」を示すことができているとあります。

最終的に、父親の状態が子の状態に影響するメカニズムと想定されているようなので、ちょっと面白いのかもしれません。

このような論文が立て続けに発表されると、「生殖」ということ、もっと直接的に言えば「不妊」の問題にも、関係してきそうです。ということは生殖を生業にしている業界の人たちにはある意味考える材料ができたということですし、生物の生殖自体にとっても、新たな面が明らかになってくるという、応用、基礎いずれの領域にとっても、重要な研究になっていくのだと思います。

そんな感じです。

この論文も、ちょっと読んでみようと思います。

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