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世界でも駆け上がれ!毎熊晟矢! 〜日本代表まで上り詰めた右SB〜

つい先日、セレッソ大阪の右SB毎熊晟矢選手がオランダ、エールデヴィジ所属の名門AZアルクマールへ完全移籍することが発表されました。
昨年秋には日本代表に選出され、数少ない国内組として評価を一気に高めました。

マイクの移籍はセレサポの私としては寂しいばかりですが、マイクとの思い出を少し振り返りたいと思います。

当時のセレッソの右SB事情

セレッソ大阪の2022シーズン。
このオフでセレッソは例年になく力の入った補強を行っていました。

かつてセレッソで4シーズンにわたってプレーしたマテイ・ヨニッチ選手が上海から復帰。日本代表経験もある左SB山中亮輔選手(現・名古屋グランパス)も獲得しました。

その一方で、セレッソが近年力を入れているJ2クラブの有望株の獲得も引き続き行われました。
この年J2に降格した徳島からはMF鈴木徳真選手(現・ガンバ大阪)、J2の京都からはGK清水圭介選手、山形からはMF中原輝選手(現・サガン鳥栖)、岡山から上門知樹選手、そして長崎から移籍してきたのが毎熊晟矢選手でした。

マイクは前年度2021シーズン、長崎で右SBとしてプレーして3ゴール10アシストの活躍を残していました。

右SBというのは一つセレッソにとって大きな補強ポイントになっていました。2016年に松田陸選手(現・ガンバ大阪)が加入して以降、セレッソの右SBには陸が君臨していました。セレッソはそんな陸のバックアッパー、もしくは陸からレギュラーを奪える選手を探していた時期がありました。

2020年までは右SBに片山瑛一選手(現・柏レイソル)がいて、瑛ちゃんはロティーナ監督から信頼をおかれていたこともあり、その存在感を増していましたが、ロティーナ監督について行く形で清水に移籍。

2021年にはアルビレックス新潟から新井直人選手(現・サンフレッチェ広島)を獲得しましたが、結局陸からレギュラーを奪うまでに至らず。翌2022シーズンは徳島に期限付き移籍となりました。

そんな経緯で獲得されたのがマイクであり、セレッソとしては陸からレギュラーを奪う右SBとしての期待感があったはずです。

右SHとして戦った2022シーズン

こうしてセレッソに加入したマイク。背番号は2020年までは瑛ちゃんが、2021年までは新井がつけていた「16」でした。ここ数年、右SBに引き継がれていた背番号でした。

しかし依然2022シーズンも陸の壁は高いものでした。そりゃそうです。何年間セレッソの右SBに陸が君臨してきたんだって話ですよ。

昨シーズン新井が陸の壁を崩せず、最終的に徳島に期限付き移籍という道を選んだことを知っていたので、もしかしたらマイクもそうかるかもしれない…と勝手に思っていました。

しかしマイクは元々FWだったという攻撃センスを活かし、より攻撃的なポジションで起用されるようになります。当時のセレッソはロティーナ時代から引き継いだ4-4-2をベースに戦っていました。その中でも右SHのポジションは2021年に坂元達裕選手(現・英2部コヴェントリー・シティ)の海外移籍以降、なかなかレギュラーを固定できていないポジションでした。

マイクはそんな右SHで起用されるとそこで結果を残し始めます。

マイクがセレッソ移籍後初ゴールを決めた試合
たまたま帰省していて現地観戦できたのは幸運でした

2022年5月3日。ヨドコウ桜スタジアムで行われたJ1リーグ第12節 ジュビロ磐田戦。私も現地観戦していたこの試合。

右SHで起用されたマイクは前半32分にセレッソ移籍後初ゴールを決めます。セットプレーの流れで、西尾が折り返したボールを頭で押し込みました。

さらに前半40分にもゴールを決めます。清武の折り返しにしっかりと飛び込んで追加点を奪ったのです。

その後為田の退場、ジンヒョンの負傷交代(これでジンヒョンのフルタイム出場が途切れるという)がありつつ、セレッソが2-1で逃げ切りました。

目の前で突如現れたニュースターの活躍に私は一気に心を奪われました。その場でマイクの背番号16のタオルマフラーを買って帰ります。

その日のうちに買ったマイクのタオル
山中のコンフィットTシャツも買った


その試合を皮切りにマイクは活躍を続けます。

5/21の大阪ダービーでは、後半アディショナルタイムにカウンターでボールを持って駆け上がると、奥埜に絶妙なラストパスを送り、勝負を決める3点目をお膳立て。

さらに5/25のホーム浦和戦ではゴールを決めると、5/29のアウェイ湘南戦でもタガートのゴールをアシスト。

結局J1の5月の月間MVPを獲得して、一気にセレッソの中で存在感を高めていくのでした。

最終的には28試合に出場して3ゴール3アシスト。先発21試合のうち、20試合は右SHとして起用されました。セレッソ移籍1年目は右SHとしてその攻撃センスを遺憾なく発揮したのでした。

右SBとして覚醒した2023シーズン

2023シーズンはマイクにとって大きな飛躍の一年でした。

2023シーズンの開幕、ホームでアルビレックス新潟を迎えるこの試合。右SBとして開幕スタメンに名を連ねたのは、不動の右SBだった陸ではなく、マイクでした。
一方右SHにはこの年に福岡から加入したジョルディ・クルークスが入りました。

これは陸が負傷していたからではなく、戦術的な理由でした。陸はどちらかというと、対人が強く、サイドに張りながら高い位置を取り、高精度のクロスを送り込むというまさに"右SB"というタイプの選手でした。

しかしこのシーズン当初、右SHのファーストチョイスとなっていたクルークスはサイドに張るプレーを得意とします。そこにボールを供給して得意のカットインからの左足、もしくは縦に行って右足からチャンスを創るというのがセレッソの狙い目でした。

実際この開幕戦で決まった為田のヘディングは(ボールがクルークスに渡る経緯は少し偶発的ですが)クルークスの左足クロスからです。

そうなると基本的にサイドで張るプレーを得意とする陸とクルークスはどうしても噛み合わせが悪くなります。

そこでマイクが右SBとしてクルークスと組むことになります。マイクはここで、陸とはタイプの違うプレーを見せます。これこそ日本代表でもマイクが発揮していた、内側のレーンを使うという部分。

クルークスがサイドに張ることでできるその内側のスペースをマイクは果敢に使ってみせたのです。

さらに元FWらしいドリブル突破も大きなストロングになります。CBからボールをもらって、1枚2枚剥がして前進。相手を引きつけて、サイドに張ったクルークスに渡し、自分は内側のレーンに侵入。クルークスからペナルティエリア付近でリターンをもらう。この形は2023のセレッソで非常に多く見られました。

2023はマイクにとって大きな飛躍の年に

こうして右サイドはクルークスとマイクの連携。左サイドはカピシャーバと山中の個の力。そして中央でクロスを仕留めるレオ・セアラ。セレッソの2023はこんなシーズンでした。

結局この形は、レオセアラの相棒となっていた加藤陸次樹選手(現・サンフレッチェ広島)の移籍やカピシャーバ対策などで、苦戦を強いられ、最終的には香川をアンカーに置く4-3-3に挑戦することになります。

そしてこの年の8月。国際親善試合としてドイツ戦とトルコ戦が控えていた中、マイクは日本代表に選出されます。当時国内組で選出されたのは伊藤敦樹選手(浦和レッズ)、大迫敬介選手(サンフレッチェ広島)、森下龍矢選手(名古屋グランパス、現在はレギア・ワルシャワに期限付き移籍)の3名だけでした。特にマイクは初選出とあって注目度は高くなりました。

ついに日本代表まで駆け上がる

ドイツ戦では出番はありませんでしたが、トルコ戦ではスタメン出場していきなりアシストを記録。久保建英選手(レアル・ソシエダ)とも連携は良好で、大きなインパクトを残します。

2023シーズンはベストイレブンに

結局J1リーグ戦では31試合に出場して1ゴール2アシスト。記録的には昨シーズンを下回りましたが、チームの中心としてなくてはならない存在となっていました。
2023シーズンのベストイレブンに選出され、名実ともにセレッソを代表する選手となったマイク。1人の選手が大きく羽ばたいていく過程を間近で見られたのは、いちサポーターとしてとても嬉しい気持ちがありました。

しかしそれと同時にマイクとの別れが近づいているだろうことも薄々感じていました。


陸からマイクへ、受け継がれた「2」
世界へ駆け上がれ!2024シーズン

2023〜2024にかけてのオフ。
セレッソはかなり大きく動きます。

新加入として川崎から登里享平選手、札幌から田中駿汰選手とルーカス・フェルナンデス選手とJ1で既に実績を残している選手を相次いで獲得。

その一方でこの数年チームを支えていた選手が株多くチームを離れました。
セレッソのバンディエラ、丸橋祐介選手は契約満了に伴ってサガン鳥栖へ移籍。原川力選手はFC東京へ、中原輝選手はサガン鳥栖へ、徳真もガンバ大阪へと移籍。

そして衝撃が大きかったのが陸のガンバ大阪移籍でした。2023シーズン、マイクの台頭もあって出場機会が激減した陸はシーズン途中にJ2のヴァンフォーレ甲府に期限付き移籍。その期限満了後の動向が注目されていた中、選んだのは最大のライバル、お隣への移籍。


そんな激動のオフを経て、開幕前に2024シーズンの背番号が発表されました。

マイクの背番号は16から2に変更されました。
陸が長年背負っていた2番を、マイクが背負うことになりました。さらにチームの副キャプテンにも就任。リーグ戦でもキャプテンマークを巻くようになりました。

キャプテンとして試合に出ることも増えた2024


1月には日本代表に再度選出されてアジアカップに出場します。チームとして好成績を残すことはできませんでしたが、マイクはバーレーン戦で強烈なミドルシュートを放つなど攻撃面で躍動。一方で守備面では屈強な中東のウインガーに苦戦する場面もありました。Jリーグではなかなかお目にかかれないタイプの相手と対峙した経験は大きかったんじゃないかなと勝手に思っています。

ほぼオフがないままチームに合流したマイクは開幕後も出ずっぱりでした。しかしノボリとともにSBがゲームを作るスタイルは開幕から好調で、一時は首位に踊り出るほどでした。

しかし少しずつ得点力不足が露呈してくると、大阪ダービーではノボリとマイクが揃って負傷。セレッソに加入してから長期の負傷離脱をしたことのなかったマイクだったので、2023シーズンからの疲労がかなり溜まっていた状態だったのかなと思います。(実際負傷前から少し精細を欠く場面はあった)

そんな中、持ち上がったのがオランダも名門AZへの移籍でした。AZには同じく日本代表の右SB、菅原由勢選手が所属していますが、今オフでの退団が濃厚で、マイクはその後釜として期待されています。最初にニュースが出てから正式発表まではほんとに4日ぐらいしかありませんでした。
まさに急転直下の移籍劇になりました。

でも多くのセレサポは遅いぐらいだと思ってるんじゃないでしょうか。2023のオフに移籍する覚悟もしてましたから。それがチームに残って背番号2を継いでくれただけでも嬉しかった。

既にヨーロッパに渡ったマイク。
新天地での背番号はプロ入りした長崎とセレッソでも2年間着用した「16」。
背番号「2」のマイクはほんとに4ヶ月ほどで終わってしまいましたが、多くのセレサポの記憶に残る「2」だと思います。

これからも世界で駆け上がれ!マイク!
また日本代表で会いましょう!!

がんばらんば毎熊


受け継がれる「16」

さて、マイクが2番になったことで16番が空いた訳ですが、今季からその「16」を背負っているのが、マイクの直属の後輩にあたる奥田勇斗選手です。

新たな「16」 奥田勇斗

元々ガンバユース出身の奥田は、マイクと同じ桃山学院大学卒。昨シーズンは特別指定選手としてセレッソに所属していましたが、今季から正式にセレッソ入りを果たしました。

そんな奥田の今季初出場は、マイクが負傷した大阪ダービー。急遽の出場となったものの、問題なく右SBをこなしてみせた。

その後マイクが復帰するまで右SBとして出場を重ねてハイパフォーマンスを披露している。

マイクの海外移籍のためにチーム離脱が正式発表された後の初めての試合となった浦和戦。スタメン出場した奥田はセレッソ移籍後初ゴールとなるスーパーゴールを決めます。

マイクを送り出すこの試合。
マイクから「16」を受け継いだ奥田がゴールを決めたのは何か運命的なものを感じる瞬間でした。

陸からマイクへ受け継がれた「2」
マイクから奥田へ受け継がれた「16」

現状奥田しか右SBが本職の選手がいないので、この夏に補強に動くとは思いますが、またネクスト毎熊、ネクスト奥田が出てくるのを楽しみにしています!

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