「ホームレスの日」日曜礼拝

"Homelessness Sunday"の上手い訳語がみつかりません。エピファニー4週目の日曜礼拝の今日は、ホームレスについて考え、祈る日でした。

今、私が通っているイギリス聖公会の聖マーティン教会は、とりわけホームレス支援に積極的な教会です。しかし、それだから今日のような機会が設けられたわけではなく、ホームレス問題に対する取組みはメソジスト教会も積極的ですし、政府でさえ、日本政府の施策がほぼNothingなのに比べて、Homeless Reduction Act, 「ホームレス削減法」が2018年に設置され、カウンシルにはホームレスの人を救済する義務があります。

ホームレス問題を日英で比較した場合、といっても私はその分野の専門家ではなく、あくまでも社会福祉学専攻の博士課程在学生としての私見ですが、その内実や文化的背景など、さまざまに異なっているので単純にどちらの施策が優れているとはいい難い面があるのも事実です。日本での最近の傾向としては、ホームレス概念を広く捉える研究者が増えている印象です。

要するに、物理的に住む場所があったとしてもそこが当人にとって「ホーム、home、家庭」とはいえない“顕在化していない”状態もまた、ホームレスに含める傾向が強まってきていると思います。もちろん、いわゆる一般的にホームレスといった場合に想像できる状態、路上生活者で段ボールハウスに住んでいる、あるいは住むところが一定でないネカフェ難民といわれる状態も、今なおホームレスに該当すると捉えられています。

一方イギリスでは、”顕在化していない”ホームレスという概念はほとんどないようで(主に留学中の大学の同僚でポスドクのSからの情報によります)、「いわゆる」のホームレス、しかもこちらにはネカフェなどありませんから、ずばり路上生活者を指します。(追記:一方、以下に言及するサムの説教は、まさにhomelessness とhouselessnessの話ですね。社会福祉学上の学究よりも教会者たちによる社会正義の追求の方が、この問題についての鋭い感覚をもっているようです、たまたまの“比較”でこういうのもどうか、ですが)この、日英のホームレス問題の違いについては、両国の文化的背景からも考察する必要があるので、ここではそこには踏み込まないことにします。

イギリスでは、そしてホームレスが集中するロンドンではとくに、ホームレス人口が近年爆増しています。ロンドンの中でもセントマーティン街は、ホームレスの方々が集中するところの一つです。今日の礼拝後の、ホームレス支援団体The Connection との合同勉強会でも、「セントマーティンの援助が知られているから困っている人が集まってくるのか、それとも援助が必要な人に対してセントマーティンが援助しようとするから困窮者が集まってくるのか、どちらが先なのかその因果関係は『鶏と卵』の問いになっちゃうけど」と報告者がおっしゃっていました。

ちなみにホームレス問題だけではなく、社会問題のあらゆる面でここ10年間ほど、イギリスでは福祉予算の削減が続いています。それは端的に、こちらの政権与党・保守党の意向によるのですが、それに対しては当然、ジャーナリズムの鑑、社会問題に敏感なガーディアン紙のようなマスコミは鋭く切り込んでいます。

今日の礼拝の司式はリチャード・カーター司祭でした。司祭によるThe Collect, 特祷が素晴らしかったので、以下に転記・翻訳しておきたいと思います。

「愛なる神さま、あなたの家にはすべての人のために場所がありますね。あなたのみ霊を通して、すべての人が、そのニーズを真に満たす家をもてる世界を形作ってください。知らない人たち、難民たちをあなたが歓迎するように、私たちの心を開いてください。不平等に対して、あなたのまこと、光を照らしてください。私たちが自分の役割を果たせるような勇気で満たしてください、私たちを途方に暮れさせることなく、どこから始めるべきかを示してください。あなたの中にある家へと私たちを導いてくださる、ホームレスであるイエスの御名によってお祈りします」

ちなみに今日の説教は、サム・ウェルズ主任司祭によるものでした。この説教もテーマがホームレスであって、学究司祭のサムらしい、大変優れた説教でした。興味がある方は、facebook等で動画が公開されていますので、ぜひ。その他の司祭たちも皆素晴らしい方ばかりですが、このリチャード&サムのコンビは最高の組み合わせだと、個人的にはそう思います。

追記・礼拝、午後の勉強会参加後は、遅めのお弁当を食べながら教会のクリプトでしばし自分の研究をした後、お隣にあるナショナルギャラリーへ、再び。良い絵、好きな絵は秘密にしておくとして、変な絵をアップしておきますので、笑って〆ていただければ幸いです。

わたしの大好きな大天使ミカエル、ですが。彼の頭上に置かれた十字架をじっとみていると、吉田戦車『伝染るんです』にこういうキャラいたな(頭上にこけし、だったはず)と、ふと。
ミカエルが退治している、右下のこの生き物は何だ?15世紀の作品なのに、スターウォーズに登場するキャラとして十分通用するぞ
閉館近くまでナショナルギャラリーで過ごし、駅に向かう途中の聖マーティン教会。側面がこんな感じにライトアップされているとは!



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