「いっすーくるま」です。単車の事故編②

働き始めてから4日目、この日も何事も無く1日が過ぎて行きました。5日目、何かあるような気がしますか?んんー、どうでしょう。この日は、先祖が帰って来る8月13日のお盆でした。仕事を終えると私たちの歓迎会が行われたのです。午後10時半過ぎ調理場で作った料理とビール、ウイスキーが寮へ持ち込まれました。2階の1部屋へ私たちと先輩たちが、集合して乾杯と同時に全員でビール、ウイスキーを飲み干していきました。当時、18才でしたが、あまり深く考えないで頂きたいと思います。随分と宴会も盛り上がってきた時、その部屋から横須賀の友人の姿が消えていました。
「あいつ何処行ったんだろう」と2階の部屋の窓を開け、視線を外へ移したのです。すると、彼は、オートバイのエンジンを掛けようとしていました。それを見た私は、部屋の皆へ「あいつ酔ってるくせにバイクに乗ろうとしてるよ。俺、止めに行って来るぜ」と言って下へ駆け下りて行ったのです。エンジンを掛けようとする彼の所まで来た私は、少し大きな声で話しかけました。
「おい、おまえ、随分と酔ってるのに、バイクなんかに乗って大丈夫かよ。絶対に事故るぞ」
「あっ、俺、全く酔ってないよ。大丈夫、大丈夫。」
この「大丈夫、大丈夫」という言葉の魔力には、絶大な力があると思います。この魔力によって、私は、「あっ!そうか大丈夫なのか」と安心してしまったのです。
「よし、おまえ1人じゃ、心配だから俺も一緒に行くよ。」
そう言った私は、2階に居る友人から、もう1つヘルメットを投げ落としてもらい、それを被るとオートバイの後部座席へ跨りました。バイクがエンジン音を上げて走り出したのです。後部座席から私は。友人へ話しかけました。
「なぁ、俺たちは酒飲んでるから、少し頭を冷やさねぇか。」
「そうだな、よし、逗子海岸へ出て夜中の海で泳ごうぜ。」
「そりゃいいな。真っ黒な逗子海岸で頭冷やそうぜ。」
バイクが逗子海岸へ停まると、私たちは、服も脱がずに、そのままの格好で真っ黒な海へ歩いて行ったのです。膝まで海へ浸かった時、私は、友人へ言い放ちました。
「服着たまま泳いじゃおうぜ」
私は、そのまま沖へ向かって飛び込んで行ったのです。友人もあとを追うように飛び込んで来ました。
2人で雄たけびを発しながら、泳ぎまくりました。若さのための怖いもの知らずなのか、稲川淳二さんの世界なら、完全に夜中の真っ黒な海では、海中へ引きずり込まれるかもしれません。ふっふっふっー!
どれくらい泳いだかは、全く不明ですが、思いっ切り泳ぎ、騒いだせいで酔いが回ったような気がしました。
「そろそろ帰るとするか」の言葉で、2人は、真っ黒な海から上がって砂浜まで歩いて来ました。私は、アロハの上下を着ていましたが、海水に濡れて体にへばり着いたアロハなど格好の悪いもので、直ぐに友人へ話し掛けたのです。
「早く帰って、シャワー浴びようぜ」
「そうだな」
私たち2人は、びしょ濡れの身体のまま、オートバイへ跨り、エンジン音を轟かして寮へと走り出したのでした。実は、私と運転手の友人の記憶は、ここで、プッツリと切れてしまって居るのです。時間は、深夜0時前だったようです。果たして、この後、小坪トンネルで取り付いた何物かの導きで恐ろしい現象が起きるのか・・・・・・お楽しみに、今日はこの辺で・・・・。

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