福祉の世界に 7 特別養護老人ホーム編
前回もお読み頂きありがとうございます。続きになります。
介護の世界の人間関係
さて、事件の概要を書く前にこの世界において、個人的に感じた人間関係について書こうかなと思います。個人の主観や経験に基づいて記載します。なので、こういうとこばかりではないと思います。全部が全部という訳ではありませんので。
高齢者施設において、経営する母体も色々あります。
例えば、病院や高齢者福祉とは全然関係ない会社が経営していたり…
個人が立ち上げた事業所等々で様々です。一時は、介護保険を扱えば儲かるという利用で参入してくる会社もありました。
介護職の離職率をご存じでしょうか。また、離職理由についてご存じでしょうか。
・必要とされている仕事なのに給料が安い
・人間関係
が大きな理由だと思われます。
まず、給料についてです。
10年程前に比べると、確かに給料は上がっています。待遇もかなり改善されています。しかし、未だに一般企業さんと比べると安いのが現実です。もちろん、物価の高い都会・田舎・地方都市で賃金の差がありますので一概に断定出来るものではありません。
10年程前は、サービス残業当たり前、賞与・昇給なし、有給が使えない等の施設が当たり前にありました。今後の高齢者社会の日本において、福祉は大事な仕事です。給料も上がらず、人手も確保出来ない…このままではどうなっていくのでしょうか。
次に人間関係です。
この業界は、なぜか他人の足を引っ張り合います。根本的に仲良くやろうとしません。他人の悪口を言い、プライベートを詮索したがります。
そして、大きな施設に勤めると意味の分からない派閥やルールがあります。
私の体験談ですが、以前勤めていた施設で研修に参加しなければ給与をカットするという謎ルールがありました。しかも、休日でも強制参加でした。言葉は悪いですが脅しです。参加した事はありませんが…
そして、一番の問題が会社内で権力があるポジションに福祉関係の知識が全く無い人間が就く事があります。これが非常に厄介です。この手のポジションに就いた人間は自分の知識不足を補おうとせず、他人の意見を聞かず、権力を振りかざしてきます。この権力が厄介で、複数施設経営している所になると逆らえば異動させられます。
何度も書きますが、10年程前の個人的に感じた事です。あくまでも個人の主観で当時のものです。
事件の発生の前兆
当時、Uさんは派閥争いやくだらない事には興味が無くずっとプロとしての仕事をされていました。職員皆が嫌う職員とも分け隔て無く話をしたりしていました。
私が勤め始めた当初は2ユニットしか開所しておらず、入居希望が出始めてからもう2ユニット開所する予定でした。つまり合計で4ユニット。入居者数でいえば40人です。
4ユニット開所した時点で、全職員会議がありました。食事を作る担当である栄養部署、看護部署、事務関係部署も含まれました。総勢職員約70名程です。
この全職員、施設のトップである施設長であるDさんから話がありました。
『各部署にユニットリーダー、副リーダーを選出し近々に発表します。資格の有無に関わらず、能力がある者を選出します。』
職員数や入居者数が増加してきたので当然の事だと思いました。
この選出を機に自体が加速していきます。
当時の施設の状況、問題
当時の施設長はDさん。
自由なやり方で、固定概念に縛られず、見た目で判断しない大きな器の持ち主。職員の意見に耳を貸し、一人一人の顔と名前を記憶しており必ず声をかける人。
当時は副施設長というポジションがありました。そこに居たのがNさん。元女子高校の教諭。どういう経緯でこの施設に来て、副施設長のポジションにいるのか不明。Dさんとは逆方向の考え方で、Dさんと常に対立している。見た目にもうるさく、一部の職員以外から疎まれている。通称『N派』と言われる派閥のボス。この方の影響で職員の異動や退職する人が結構いた。とにかく職員に会えば、必ず文句や説教をする女性。N派に属さない人を『D信者』と揶揄していた。
当然、現場職員にも派閥が出来る。N派に所属する職員。D派というものは無く、N派に所属しない者はNさんのなかでは、『D信者』であった。
私はNさんに何度も説教された事があった。Uさんも一緒である。色々な事で怒られ、身に覚えのない事や私生活の事まで言われていた。しかし、私達は気にしていなかったしどうでも良かった。Uさんも同じだった。この頃になると二人で福祉について語る事が増え、プライベートの相談をお互いにしあう等の仲良しになっていた。
選出
数日後、選出が発表された。
他の部署は割愛。
介護ユニットだけ。
4ユニット、つまり8人選出されました。
4名N派の人間でした。推測になるが、DさんとNさんが話合っても合意に至らず半々で落しどころをつけた様な感じだったんだろうと思います。
Uさんはリーダーになり、Uさんのユニットの副リーダーに私がなりました。
私は、派閥争いに興味が無くUさんと仕事が出来るだけで喜んでいました。
事件勃発
とある日。Dさんはお休み。私は出勤。
ユニットに内線が来ました。Nさんからでした。
N『下の階の1ユニットの職員が病欠だからそちらのユニットから応援を出して。』
私『別のユニットにお願い出来ませんか?今日はこちらは2名勤務で、1名は入浴介助です。応援を出してしまうと見守りやトイレ介助の人が居なくなってしまいます。』
N『私の業務命令が聞けないの?』
私『いえ、そうではなく物理的に無理であり入居者が困ってしまいます。緊急時の対応も出来なくなってしまいます。他のユニットは3名勤務の所もありますのでそちらに相談してください。』
N『あなた、副リーダーの〇〇さんよね?D信者の』
私『信者とかではなく、無理な物は無理とお伝えしているだけです。ちなみに派閥に興味は無いので、そのような言い方はよろしくないと思います。』
と内線を切りました。頭にきたとか怒り心頭だった訳ではなく、冷静に受け答えをしましたが…
Nさんは、その後Dさんに話をします。
私が暴言を吐き、電話を切ったと。
Dさんに呼ばれ、事情を説明しました。
『そんな事だろうと思ったよ。わかった。』
とDさんとの話は終わります。
Uさんにも報告がいきましたが、Uさんからは
『何も間違ってないから大丈夫』と言われました。
しかし、休日であるUさんその後呼び出され施設に来ます。
Dさんは施設を開けていました。
Nさんに呼ばれNさんとUさんは話をする事になりました。
確か、事務室のような所で話をし合っていたと思います。
事務職員から急いで事務室に来てほしいと内線で連絡がありました。夜勤の職員も来ていたので、ユニットを任せすぐに向かいました。
聞いた事のない声の怒号。
すぐ事務室に入りました。
私の見た事のない形相のUさんがNさんに怒号を浴びせていました。
すぐに間に入り、UさんとNさんを離しました。
Nさんは怯えており、Uさんは怒り心頭で感情を抑えるのに必死な感じでした。事務員の連絡によりすぐに施設長が帰ってきました。
ある程度の事情を聞いた施設長はUさんとNさんを帰しました。
Dさんは私の所に顔を出し、理由を説明してくれました。
Uさんは、私の対応は間違っていない事を伝え余計な派閥争いや属さない職員に対し嫌がらせをするなと告げた様でした。
すると、Nさんより職員を罵倒する発言や差別的な言動がありUさんは我慢出来なかった様でした。
次回に続きます。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?