別れ、巡り 2

十一月、いつもより少し肌寒い朝だった。
「おはよー」
「あ、愛やっと来たー。ねえ、数学全っ然分かんない。これ何がどうなってんの?」
「愛―僕も数学は無理―」
「樹、文系だもんねー。ちょっと待って。荷物片してくる」
隣の教室を覗くと友人二人がノートや教科書を睨んでいた。
机に突っ伏している茶髪の子は霜月四葉。
眼鏡を拭いてかけ直している子は月桂樹。
「まじで意味分からん。暗号かこれ」
私は二人と別のクラスだった。
机に荷物をしまって、また隣の教室に戻った。
「おまたせ。どこ?」
「これ、何証明しなさいって。そうなるんだからそうなるんじゃん!!っていうか中学生の問題が宿題ってふざけてるの?」
「問題に八つ当たりしない。僕らできてないんだから仕方ないじゃん」
「ああ、ここはねー……」
「おお、なるほど」
「あーいー。これは?」
「これはまず同類項を……」
「同類項?」
「……えっとねー」
「……愛はすごいよね。文武両道で人に教えるのうまくて、大抵のことは器用にこなして」「……急にどうしたの」
「あ、変な意味じゃないんだよ。ただ、尊敬するなーって」
「尊敬?」
「そ。私なんて何にもできないからさ」
「……私はそんなにすごくないよ」
「……」
気まずくなってしまって二人の手も止まった。
「さ、ほら続きして。もうすぐ朝練も終わる頃だし」
「あ、地理のも終わってなかった。」
どうしようって顔で数学の宿題を収めながら地理のワークを出した。
「それは僕教えられるよ。愛、隣のクラスなんだし、そろそろ戻るでしょ?今日もありがとう。」
「……どういたしまして」
さっきの会話が引っかかって上手く言葉が出なかった。

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