【第5回】森林環境税の導入で国民の負担増 レベニュー・ニュートラルも同時に行うべきだ

 2024年度から国内に住所のある個人に対して、1人年額1000円の「森林環境税」が住民税に上乗せされる。国民の負担増や景気の足を引っ張ることにつながらないのか。

 そもそもなぜ森林環境税が創設されたのか。林野庁によると、「パリ協定の枠組みの下における我が国の温室効果ガス排出削減目標の達成や災害防止等を図るための森林整備等に必要な地方財源を安定的に確保する」とある。そして、2019年3月に「森林環境税及び森林環境譲与税に関する法律」が成立した。徴収額の目標は年間620億円だという。

 国税として徴収した森林環境税は、「森林環境譲与税」として市町村と都道府県に対し、私有林人工林面積、林業就業者数及び人口による客観的な基準で按分して譲与される。市町村においては、間伐等の「森林の整備に関する施策」と人材育成・担い手の確保、木材利用の促進や普及啓発等の「森林の整備の促進に関する施策」に充てることとされている。また、都道府県においては「森林整備を実施する市町村の支援等に関する費用」に充てるという。

https://www.rinya.maff.go.jp/j/keikaku/kankyouzei/kankyouzei_jouyozei.html#t2
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 こうした環境問題に関する負担は、様々な角度から提案されている。その典型が「炭素税」だ。炭素税とは、石炭、石油、天然ガスなどの化石燃料に炭素の含有量に応じて課す税金のことだ。化石燃料の需要を抑制し、二酸化炭素排出量を抑えるという経済的な政策手段である。

 世界の常識として、新たな環境税を導入する際には、「レベニュー・ニュートラル」も同時に行う。レベニュー・ニュートラルとは、増税した分だけ減税するということだ。単なる増税だけにせず、経済成長にとって負荷にならないように、どの国でも相応の対策をしている。しかし、日本ではその話が一切出てこない。

 炭素税導入の際に、菅義偉政権の環境大臣だった小泉進次郎氏は、レベニュー・ニュートラルについては何も述べなかった。マスコミも質問をしなかったので、事務方は何も話さなくていいということになり、何となく増税だけの話になっていたが、世界の常識としておかしいのは明々白々だ。

 足元の経済を見ると、今年1~3月期の実質国内総生産(GDP)の内訳(年率換算)は、民間消費が2・4%増、住宅投資が0・7%増、設備投資が3・8%増、政府消費がほぼ横ばい、公共投資が10・1%増、輸出が15・6%減、輸入が9・0%減だった。

 コロナも5類に移行し、行動制限もなくなったので、今後は消費等の増加も期待できる。だが、岸田文雄政権の増税や保険料引き上げの緊縮体質は、懸念材料だ。

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