朱に交われば赤くなる(3)
先生に呼ばれた僕は
職員室へと向かう。別室で話しましょうと言われ、指導室に入る。
「どう?学校生活には慣れたかしら?」
4月の入学式から数えて、まだ一週間も経っていない。僕は答えた。
「それなりに」
彼女は納得した様に、
「やっぱりね。私、気になっていた事があるの。このクラス、男子はあなた一人よね。正直言っていいのよ。
あなたは入学式後、このクラスに移った後、こう思った筈。
やったー。男は俺一人だ。もてまくり放題だぜ」
少し、違う気もしたが、今は先生の考えを知る為に、
「それなりに」
「ちっ、ちっ、」
先生は、人差し指を立て、左右に振りながら、
「でも、現実は違った。あなたの思い描いた学園生活は、一週間も立たず、脆くも、崩れ落ちた。
私が感じていることは、あなたは今、悲しいことにクラスの誰とも打ち解けていない状態」
確かにそうだ。この先生は、
稀に良いことを言う。先生は続く。
「考えてもご覧なさい。もしその状況で、席替えをし、隅っこにでも座るような事になれば、余計、あなたは孤立するはめに陥るのよ」
先生はそこまで考えていてくれたのか。
確かにそうかもしれない。だが、解決方法が見通せない。
僕は正直言ってこのクラスには馴染めていない。
決して、いじめられているわけではなく、クラスメートの態度は、何故かよそよそしい。
かと言って、僕のほうからアクションを取ろうとしても、空振りに終わる。
唯一、表情をかいま見れたのは、お尻に手を添えて座ったので、隣の女の子がくすくす笑った時だ。
でも、僕ときたら、恥ずかしくて、何の返しも出来なかった。
僕は思い切って先生に悩みを打ち明けた。
「そりゃ、そうでしょう。あなたの現状は今、羊の群れの中にいる一匹の狼なのよ。
羊が向こうからホイホイと仲良くしてくるとでも思っているの。打ち解けるには羊の皮を、被るしかないのよ」
僕は自分の顔を触りながら、羊の皮は似合うだろうかと考えながら、学校を、あとにした。