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「炎上甲子園」 企画書 


【キャッチコピー】

炎上日本一を決める「燃える戦い」が始まる!


【あらすじ】

飲食店で醤油差しをペロペロしたり、
悪質なあおり運転をしたり・・・
なぜ毎年、ネットやメディアをにぎわす「炎上」が発生するのか。
それは暇を持て余した、とあるビリオネアグループのお遊びだったのだ。
ビリオネアたちは日本全国を7つのエリアに分け、
各エリアの見込みあるユーザーに対して
「炎上甲子園」のオファーを出すのだ。
優勝特典は10億円!
選ばれた各エリアの炎上プレイヤーたちは、
知恵と勇気をもって「どのように炎上させるか」を競い合うのだった。
そんな炎上甲子園が今年も開催されることになった。
優勝を手にするのは誰だ!?
燃える炎上バトルがネットやニュースを賑やかすであろう。


【第1話のストーリー】

第1話 タイトル Ubabar Eats(ウーババーイーツ)

ある日突然、東京に住む主婦・石渡花子(58歳)の
スマホにメッセージが届いた。
タイトルには
「優勝賞金10億円 炎上甲子園へのお誘い」
とある。
実は花子の夫・幹郎はコロナ禍の影響でリストラされ、
花子は不慣れなパートをしている。
経済的に不安がつきまとう中、
怪しいと思いながらもその賞金額に惹かれるのであった。

メールの概要は以下だ

・私たちは財を築いたビリオネアグループだ
・炎上甲子園という炎上日本一を決める大会を主催している
・貴殿は関東エリアの代表に選ばれた
・代表者は合計7名
・“炎上行為”により、最も炎上させた参加者に10億円を提供
・参加特典として裁判に発展した際の弁護士費用及び損害賠償額は保証
・再生回数(RT含む)、インパクトなど、総合的に判断して優勝者を決定

花子は思った。
訴えられても弁護士費用や損害賠償額が保証されるなら、
参加すべきではないか。
夫もこのままでは再就職は厳しいだろう。
転勤で頑張っている息子・道夫にも負担をかけられない。
老後を豊かにするには炎上甲子園で優勝するしかない!”
と。

そこで花子は動画投稿サイトを参考に
自転車によるあおり運転

宅配サービス員が届ける食事にイタズラする
という炎上行為を思いついたのだ。

さっそく花子は宅配サービスに登録し、電動自転車をレンタル。
ファーストフード店の前にて待機。
お昼前、スマホに注文を知らせる通知音が鳴る。
チーズバーガーにポテトL、烏龍茶Lの注文だ。
配達先は渋谷にあるIT企業。

健康を気にするようになった花子は、
このポテトを手作りの芋煮に変えることにした。

花子は炎上目的且つ迅速に届けるため、
首都高を自転車で逆走し、渋谷へ急いだ。
「え?配達員、しかもおばさんが自転車で首都高を逆走??」
その姿は多くのドラレコに収められ、瞬く間に炎上するのだった。

さらに炎上は続く。
無事に配達先のIT企業に届けたのだが、
食べようとした青年が、ポテトが手作りの芋煮に
変えられていることに気がついたのだ。
「なにこれ・・・俺、山形出身だからこの芋煮が懐かしいよ」
ふと郷里に思いを馳せ、SNSに投稿する青年。
この「チーズバーガー芋煮セット」も、
炎上するのであった。

そして、花子はネット上で
Ubabar Eatsと呼ばれた。

きっと彼女は「早く」「体に良いもの」を届けたかったに違いない、と、
誤解する者もいた。


【第2話以降のストーリー】

世間では石渡花子はUbabar Eatsと呼ばれ、
ネットやニュースを日々賑やかしている。

そんな情報を歯軋りしながら見ている男がいた。
その男の名は斉藤紳助(22歳)、
ホストを挫折したバーテンダーだ。

紳助の元には関西エリア代表として
炎上甲子園のオファーがきていたのだ

「もしかして、あのババア・・・」
紳助は焦っていた。
彼も炎上甲子園で優勝を狙っている。

苛立ちながら、どうすれば最高の炎上が実現するか、
シェイカーをシェイクしながら思案していた。

「おい!お前、いつまでスカして振ってるんや!」
眼の前のカップル客の男性(20代後半)が
クレームを付けてきた。
とっさに紳助は思った。
“こいつの酒をめちゃ濃くしてやろう”と。

紳助は注文のたび、
男性客の酒を異常に濃くして
酒を提供し続けた。

男性客は女を口説きたいらしく、
酒強いアピールをしている。
滑稽な口説き方が面白く、紳助はそのシーンを隠し撮りし、
「濃い酒を飲ませて口説く男を酔い潰してみた」動画を投稿することに。

男性客が5杯ほど飲んだ頃、
明らかに呂律が回らなくなり、
同じことばかり話すようになっていた。
更にトイレに立ち上がるたびに、
両手を少し前に出し内股でフラフラと歩き、
まるでゾンビのような様だった。

男が無様に酔い潰れていく動画を、
炎上日本一を目指して投稿
した。
世間の反応は上々だった。
再生回数およびRTも順調で、
情報番組でも取り上げられた。

炎上から数日後、
動画投稿サイトのコメント欄にいくつかの書込みが寄せられた。

・私、この酔っぱらい客にやり逃げされた
・この男と3回関係を持ってお金を貸してから音信不通になった
・こいつ既婚者なのにマチアプで女を漁っている

などなど、酔い潰れた男性客の悪評が
コメントされるようになったのだ。

紳助はBARを解雇されたが後悔はなかった。
女泣かせのヤリモク男を一人退治したのだから。


人々は各エリアで炎上甲子園が開催されているとは知らず、
今年もネットやニュースでは「炎上」で盛り上がっていた。
炎上甲子園の参加者の一部を紹介しよう。

【北海道代表】
雪国を代表する炎上プレイヤー
「久米雪子」(22歳女性 芸術大学)
大量の雪を近所の嫌味を言う自治会長の家に押し付けたい。
しかし、普通に大量の雪を置くだけでは物足りない。
雪子は「放送禁止ギリギリのエログロ雪像」
己の芸術性を発揮し、嫌味自治会長の庭に作り上げた。
近所では自治会長の性癖・人間性が疑われ炎上するも、
冬の間、マニアの観光名所となり、過疎の街は賑わうのであった。

【中四国代表】
不良高校生を撃退したラーメン屋店主
「武蔵麺蔵」(50歳 飲食店経営)
お店の隣が不良校で有名な男子校。
例の醤油差しペロペロ事件があってから、
模倣する生徒が多く、店主の頭を悩ませていた。
彼は世界一辛いと言われるデスソースを
醤油差しの口に塗って対策をし、
舐めて悶絶する不良高校生の姿を動画投稿。
結果、同高の悪評が広がり、同高は閉校され街が平和に。

などなど、今回の炎上甲子園はクオリティが高かった。


さて、炎上甲子園、最後の参加者を紹介しよう。
彼の名は石渡道夫(26歳)。九州エリア代表だ。
部品メーカーに勤めていたが、
東京本社から福岡支社に転勤してから土地が会わず、
退職をし、失業保険で暮らす日々。

彼はネットもニュースもほぼ見ない、
鉄道写真にしか興味がない、生粋の撮り鉄だ。
だから彼の母・石渡花子がUbabarEatsとして
炎上していることを彼は知らない。

だが彼の父・幹郎はコロナ禍でリストラにあい、
求職中とは知っていた。
そろそろ東京へ帰り、職を探し、
両親を支えようと思っていた矢先に
炎上甲子園のオファーが届いた。

道夫は悩んだ。
10億円もあれば、家族みんな経済的に困らないだろうし、
また、道夫は法を犯しても撮りたい鉄道写真があったのだ。
道夫は決心した。

九州の豪華寝台列車が年に1回だけ、
趣のある駅「南風駅」に到着するタイミングがある。
その到着シーンを、
線路に侵入した上で、
最高のアングル、
最高の迫力で撮影しよう
と。
そして、線路への侵入を結果的に炎上行為にしよう
と。

豪華列車と南風駅がシンクロする写真、
その写真が撮れるタイミングは
明日の7:45だった。
時刻は深夜24時30分。
道夫は侵入経路を確保すべく、
急いで現地に向かうことにした。

同時刻、女子高生の知花夏美は遺書を書いていた。
入学した高校に馴染めず、
やがてイジメに発展し、教師に相談するも、
それがクラス中に露呈してしまったのだ。

追い詰められた夏美は、思った。
どうせ死ぬなら、
ニュースに取り上げられるような死に方をしよう。
あの豪華寝台列車に飛び込んでやろう。と。
列車が南風駅のホームに到着するのが7時45分の予定だ。

その日の6:30
すでにホームの先端には撮り鉄が溢れる。

そのホームのベンチには夏美がうつむいて座っている。

道夫は昨夜のうちに線路内に侵入できるように
有刺鉄線にペンチで切れ目を入れ、
あとは引き剥すだけの状態にし、
線路脇の道路で待機している。

7:00
撮り鉄たちの人数は増え、醜い小競り合いが始まる。

夏美は最後に好きなものを、と自販機でココアを買った。

道夫は線路脇の道路で待機。

7:30
撮り鉄たちを規制するために警察たちが出動。

夏美は遺書の入ったカバンをベンチの下に置いた。

道夫は線路脇に有刺鉄線の切れ目を確認

7:40
何人かの撮り鉄が公務執行妨害で逮捕された。

夏美は親に感謝のメッセージをスマホに綴っていた。

道夫は目立たぬように有刺鉄線を引き剥がした。

7:44
ついに電車が目視できる状況になった。

撮り鉄たちはシャッターを押し出した。

夏美はホーム先端に小走りに走り出した。

道夫は線路内に侵入し、
豪華寝台列車が走る線路の真ん中に立ちはだかり、
最高のアングルでシャッターを切り続けた。

その場にいた撮り鉄たちと、ホームにいた乗客たちは、
一瞬、道夫が何をしているか分からなかった。

7:44:10
豪華寝台列車の汽笛と急ブレーキ音がけたたましくなった。

夏美はホーム先端に向けて走り出している。

道夫はシャッターを押し続けいる。

7:44:30
夏美はホーム先端から線路に飛び込もうと、

撮り鉄たちを押しのけた。響く撮り鉄たちの怒号。

道夫はシャッターを押し続けいる。

7:44:50
夏美はホーム先端から線路に飛び込んだ。

撮り鉄の怒号は悲鳴に変わった。

道夫はシャッターを押し続けいる。

7:44:59
シャッターを押し続ける道夫のカメラに、
落ちてくる夏美が収められた。
道夫は一瞬、何が起きたか分からなかったが、
本能的にシャッターを押し続けた。

7:45:00
夏美は線路に落ちたが、
その眼の前で、豪華寝台列車は停まった。

道夫が線路に不法侵入したから、
豪華寝台列車は停まったのだ。

予期せぬ形で、道夫は夏美の命を救った。

この出来事も瞬く間に「炎上」した。



エピローグ
ビリオネアたちは今回の炎上甲子園に満足していた。
各炎上は好結果に結びつき、
世間をにぎわすには十分だった。
さて、肝心の優勝者は・・・

石渡道夫は不登校児・学生を豪華寝台列車の旅に招待をし、
鉄道の素晴らしさを伝えることにした。そこには夏美もいた。

花子は食堂車を改装して作った「子ども食堂“ウーババー”」を開店。
名物ママとして人気になり、
夫・幹郎が仕入れなど切り盛りをしていた。

関わる人みんな、笑顔であった。


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