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【短編集】『白狐』

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#オリジナル小説

【連載短編】『白狐』12

「吉田さん」  トイレを出てすぐ、後ろから声をかけられた。  振り返る前に、それが八尾君の…

【連載短編】『白狐』11

 八尾君が現れたのは、同窓会がまもなく始まろうという時だった。  司会の幹事が会場に呼び…

【連載短編】『白狐』2

「先輩は、大学行くつもりなんですか?」  清水は自転車を押して歩く俺の隣を歩きながら聞い…

【連載短編】『白狐』3

 白狐の噂を持ち込んだのは、桐田だった。 「ビャッコの話。聞いたことないん?」  最初俺は…

【連載短編】『白狐』4

 放課後のホームルームで、教師がもうすぐ始まる冬休みについての話をしている。  年末年始…

【連載短編】『白狐』5

 終業式の日は、12月をさらに冷やす雨だった。  午前中で下校になった俺は、昇降口で清水…

【連載短編】『白狐』6

 親のたてる物音は、どうしてこんなにも煩わしく感じられるのだろう。  反抗期は既に終わっても、彼らのたてる物音がやはり好きじゃない。皿が重なる音、足音、唐突な深いため息、洗濯物を干したり取り込んだりする音、車のドアを閉める音、雨戸を開け閉めする時の音。  親がたてる物音は、自分が人生で一番なじみ深い分、ただの物音として処理することができない何かがある。 「お帰り」 「ただいま」  仕事から帰ってきた母親が、玄関で靴を脱ぐ。 「もう、ちょっと聞いてや。大変なんよ、仕事が」  母

【連載短編】『白狐』7

 街灯に白い息。  俺は自転車を漕ぎながら、彼女は本当に来るだろうかと思った。彼女の真面…

【連載短編】『白狐』8

 鳥居の前で二人して立ち止まった。  本殿に続く石の階段は長く続いていて、その上を高く伸…

【連載短編】『白狐』9

 ホテルの駐車場を何周もして、ようやく空きが見つかった。  どうして今日に限って、こんな…

【連載短編】『白狐』10

 私と八尾君が付き合い始めた時、私たちはお互い高校2年生だった。  高校生にも恋人がいる…