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遊戯王って運ゲーなの?

 皆さん初めましての方は初めまして、そうでない方は前回までの記事を読んでいただきありがとうございます。その辺の決闘者の衣玖(いく)と申します。

 今回は先日よりTwitter(現:X)話題になっている、遊戯王=運ゲー問題について切り込んでいこうと思います。

 なお筆者の意見は濁さずに伝えるので、読んでいて気分の悪くなった人はブラウザバックしてください。

運ってなに?

 そもそも運って何なんですかね?
 遊戯王は運ゲーだと嘆いている人間の大多数は、自らができる努力を怠り遊戯王を批判しているように感じます。

 ところで皆さんは『ブルーロック』という漫画を読んだことがありますか?
 日本をサッカーW杯で優勝させるため、最強のストライカーを生み出すという目的に沿って多くのストライカーの卵同士で潰し合わせるサッカー漫画です。

 その11巻に掲載されている87話「LUCK」にて運のカラクリについて解説されています。 

 この話の直前の試合で、主人公の潔世一は相手チームの蜂楽廻と激突し、その結果ボールがランダムな場所に飛んでいきます。
 そのボールは相手チームのエースである糸師凛の足元へ落ち、彼のシュートによって潔世一のチームは敗北します。

 勝利した糸師凛は潔世一に勝因を問われた際に「"運"だ」と答えます。
 この時点で糸師凛は運とは何たるかを理解しています。

 その話を聞いた青い監獄(ブルーロック)の発案者である絵心甚八は"運"は"偶然"以外の何者でもないと言い放つ潔世一に対して話を始めます。

 特に必要なこと話している3枚分だけ画像を貼らせていただきます。

 要するに、人事を尽くして天命を待つということです。

 作中で糸師凛はボールが落ちてくるかもしれない地点へ唯一駆けていました。
 その結果として糸師凛はゴールを決めることになったのです。
 この理屈を理解した潔世一は後の試合で似たようなシチュエーションで決定打となるゴールを決めることになりますが、世間では「ごっつぁんゴール」という100%運によるゴールとして認知されます。

遊戯王で尽くせる人事

 はい、話を遊戯王に戻します。

 遊戯王において、尽くせる人事はいくつもあります。
 それらを尽くした上でそれでもなおコントロールできない部分が"運"ということになります。

 では尽くせる人事とは何か?
 筆者の中では以下のものが挙げられます。

・カードプールの知識
・デッキ構築
・デュエルの進行
・相手の癖の把握

 人はこれらを総称してプレイングと呼ぶこともあります。

カードプールの知識

 まず誰もが簡単に磨ける部分として、カードプールの知識が挙げられます。
 そしてこれはこの後の内容全てに絡む最も重要なものだと筆者は考えています。

 例えば皆さんはこのようなカードを知っていますか?

 雑に言えば何でもモンスターをサーチできるカードです。

 今更テキストの解説など要らない気もしますが、知らない人もいる可能性を考慮して簡単に解説します。

 まず《A》というモンスターを相手に見せ、それとステータスの1箇所だけが共通する《B》というモンスターをデッキから相手に見せます。
 そして見せた《B》というモンスターとステータスが1箇所だけ共通する《C》というモンスターをサーチします。
 なお見せた《A》と《B》は裏側表示で除外されます。

 このカードを用いるに際して、要求されるのはカードプールの知識です。
 特別難しい話ではありません。
 《A》と《C》を繋ぐ《B》にあたるカードに何を採用するのか、というだけの話です。

 例えば【BF】では《BF-毒風のシムーン》を初動札として使いたいことから《スモール・ワールド》を採用することがあります。
 「BF」のメインデッキのモンスターは《BF-極光のアウロラ》を除いて全て闇属性・鳥獣族で統一されています。


 つまりこの《BF-極光のアウロラ》というカードは《B》にあたるカードとして採用できるということになります。

 ところが守備力が0のため《BF-無頼のヴァータ》や《BF-嵐砂のシャマール》などを《A》とすることはできません。
 また本体のスペックがあまりにも低く、素引きした際の活用手段に乏しいことから、極力採用したくはありません。

 そこで《B》には相手のモンスターを除去できる《多次元壊獣ラディアン》や事実上ノーコストで非チューナーを用意できる《泣き神の石像》などが採用されやすいです。
 後者はレベル2の《BF-雪撃のチヌーク》や《BF-下弦のサルンガ》を《A》にすることができませんが、先攻展開では不要な《増殖するG》や使いどころの無さそうな《灰流うらら》を《A》にできるため比較的安定して《BF-毒風のシムーン》へ繋げることができます。
 逆に適当な「BF」モンスターを《灰流うらら》に変換して相手の《増殖するG》へ備えることもできます。

 このように、素引きしても腐りにくく、なおかつ基本展開に絡まないことから裏側表示で除外されても問題無い《B》にあたるカードを探し出すためにはカードプールの知識が要求されるのです。

 無論、適当なデッキレシピをコピーすればなんとなく運用方法はわかるのでカードプールの知識なぞ無くてもデュエルはできますが、猿真似ではそれよりも上に行くことはできません。
 またデュエル中に「この手札から《BF-毒風のシムーン》に繋げられるかな」と即座に判断できるかも重要となります。
 《B》にあたるカードを全て引いている場合は適当に《スモール・ワールド》を発動しても目当てのカードに飛ぶことができないためですね。

 無論、カードプールの知識についてはデュエルする相手のものも要求されます。

 ちょうどいいのでこのまま【BF】を例に挙げたまま話を進めます。

 例えばあなたの手札に《灰流うらら》があるとします。
 あなたは相手の【BF】の展開のどこに使いますか?
 《黒い旋風》でしょうか。《BF-幻耀のスズリ》でしょうか。《BF-無頼のヴァータ》でしょうか。はたまた先ほどの《スモール・ワールド》でしょうか。

 それぞれのカードに使用した場合の裏目を考えてみましょう。

 《黒い旋風》は1ターンに1度の誓約がありません。
 その場だけでは止まるかもしれませんが、《BF-毒風のシムーン》から入った場合は追加の召喚からサーチを繰り返されるでしょう。
 《BF-星影のノートゥング》による追加の召喚権から追加のサーチも行われるかもしれません。

 《BF-幻耀のスズリ》も同様です。
 また《黒い旋風》がある場合は確実に通したい方を後に処理する形でチェーンしてケアされる可能性もあります。

 《BF-無頼のヴァータ》は墓地肥やしをしながら《ブラックフェザー・ドラゴン》を特殊召喚できます。
 この《ブラックフェザー・ドラゴン》は別のSモンスターの素材になりながら《ブラックフェザー・アサルト・ドラゴン》のコストにもなります。
 1ターンに1度しか使用できない誓約からここがマストカウンターになりやすそうな雰囲気があります。

 そして《スモール・ワールド》ですが、これは万能サーチである反面、《A》を見せるタイミングは効果の処理時であり《灰流うらら》を使える場面では何をサーチするかの予測すら立ちません。
 良く言えば相手の動きを未然に止められますが、悪く言えばデッキタイプがわからないまま適当に投げることになります。

 いずれも相手の手札と状況によって使うべきか否かが異なります。
 《黒い旋風》に使うことが正解の可能性もありますし、《スモール・ワールド》に使うことが悪手となる可能性もあります。

 また《墓穴の指名者》などで《灰流うらら》を止められるだけであれば手札が1枚減るだけで済みますが、《PSYフレームギア・γ》が直撃するとさらなる展開に繋げられます。
 場合によっては《灰流うらら》を投げたせいで相手が動き始めて負けた、ということもあり得ます。

 特に知識も無く無警戒に妨害を投げてそれが通らないのと、知識があり通った場合と通らなかった場合の比較やリスクを加味してでもここで妨害を投げなければ負けそうといった思考をした上で妨害を投げた結果それが通らないのとでは雲泥の差です。
 前者の思考回路の持ち主が「遊戯王は運ゲー」と嘆くのです。
 少なくとも《PSYフレームギア・γ》に限っては知っていれば避けられた悲劇でしょう。

 さらに「わからん殺し」されたのは運が悪い、と言う人もこの世にはなぜか一定数います。
 初見殺しという言い方もありますが、端的に言えば知名度の低さを利用して相手の妨害や除去を吐かせて本命を通して勝つことです。

 例えばこの世には【ホーリーナイツ】というデッキがあります。
 レベル7・光属性・ドラゴン族のモンスターを何度もフィールドに出すことに特化しているテーマで、事実上このテーマで使うことを想定している《聖夜に煌めく竜》をエースモンスターとしています。

 初めてこのカードを見た人もいるかもしれませんが、遊戯王OCGでは投げ売りされたことで有名な『SELECTION 10』で初登場しました。
 登場から3年弱しか経っていないカードです。

 一度でも見たことのある人は、このカードのテキストを正確に説明できるでしょうか?
 恐らくほとんどの人が説明できないと思います。
 遊戯王OCGでは環境レベルで成績を残したことがなく、マスターデュエルでも「ドラゴンメイド」と抱き合わせのシークレットパックのハズレURくらいの認識しかされていないと思います。
 リリース当初に【ドラゴンメイド】を組もうとしたらいっぱい出てきて砕いた、という人もいるでしょう。

 さて、このカードは

①手札から召喚・特殊召喚された場合にフィールドのカード1枚を選択して破壊できる。
②闇属性モンスターとの戦闘では破壊されず、闇属性モンスターの効果でも破壊されない
③相手モンスターに攻撃するダメージステップ開始時にその相手モンスターをエンドフェイズまで除外し、もう一度続けて攻撃できる。

 という3つの効果を持っています。

 ①の破壊効果はありふれたものですが、【ホーリーナイツ】を知らない人はレベル7・光属性・ドラゴン族のモンスターが何も思いつかないためその効果を素通しし、このカードの着地を許すことになるでしょう。
 その結果、このカードの破壊効果への対処に迫られることになります。

 ②の耐性は遊戯王における闇属性モンスターの比率を考えればそこそこ信頼できます。
 破壊効果を持つ高打点モンスターである《アクセスコード・トーカー》には強く、このカードを知らない相手ならば1回は破壊効果を適用させ、さらに攻撃してくることでしょう。

 ③の一時的な除外は刺さる場面が限定的なものの、相手モンスターの情報を一時的にリセットしたりそのまま直接攻撃を通したりと便利な効果です。
 《アクセスコード・トーカー》はこれにより攻撃力をリセットされます。

 このようなマイナーなカードを見かけること自体が稀であり、さらに敗北を喫することは少ないでしょう。
 しかし、例えば上記のように《アクセスコード・トーカー》で処理して勝とうとした際には壁として立ちはだかり、それが原因で負ける可能性もあります。
 知っていれば《トロイメア・ケルベロス》で除去できただけに残念ですね。

 これを「初見殺し」と吐き捨てて終わらせるのは自分の勝手ですが、あなたの知識不足が敗因であることも認めましょう。

デッキ構築

 続いてはデッキ構築に関する話です。

 あなたが今使っているデッキはどのように組みましたか?
 一からオリジナルで組み上げた。いいでしょう。
 既存のアーキタイプにカードを足した。いいでしょう。
 インターネットで拾ったレシピを参考にした。いいでしょう。
 インターネットで拾ったレシピを丸パクリした。いいでしょう。

 筆者は他人のデッキレシピを丸パクリすることに対しては肯定的です。
 既に組み上げられ結果を残すような構築は、多少の粗があったとしても全く回らない紙束であることはほぼありません。
 その構築から学びを得ればいいのですから、知識0の状態でデッキを組むより遥かに良いです。

 ただし、丸パクリした構築を思考停止で回すだけの人には嫌悪感を覚えます。

 他人の構築をコピーした人は、各カードの採用枚数とその理由を考えたことはありますか?
 採用されているカードと類似したカードと比較したことはありますか?
 実際に入れて試したことはありますか?

 公開されているデッキレシピの大半は、それらの検討をした上で結果を出したものなので、自分で使う場合はその過程をすっ飛ばすことができます。
 しかし「強い人が使っていたから」と思考を止めてデッキを回し、予想していなかった相手と当たって負けた際に「運が悪かった」と嘆くのはNGです。
 それは運が悪かったのではなく、そのデッキを使う上であなたがその状況を想定せず甘えた結果なのです。

 そもそも各プレイヤーを取り巻く環境はそれぞれ異なります。
 現在でこそ《エフェクト・ヴェーラー》は立派な妨害手段としての地位を確立していますが、登場当初は強いけど使いどころが難しいカードくらいの扱いを受けていました。
 要するに公開されているデッキレシピの使われる環境とそれをコピーするあなたの環境は必ずしも一致しないということになります。

 例えば参考にしたデッキのサイドデッキに《多次元壊獣ラディアン》が採用されているものの、メインデッキに「壊獣」などの除去カードが採用されていなかったとします。
 しかしあなたはマスターデュエルで同じデッキを構築し、ランクマッチで【@イグニスター】と遭遇、《ジ・アライバル・サイバース@イグニスター》を突破できずに敗北しました。

最大攻撃力6000の完全耐性持ち

 この時悪いのは参考元のデッキレシピでしょうか?
 違います。あなたが悪いのです。

 サイドデッキが存在するということは遊戯王OCGの大会などにおける環境です。
 メインデッキだけではなくサイドデッキも含めてマッチ戦を想定した構築になっているはずです。
 つまり1戦目は負けても2戦目と3戦目で捲れるように、恐らく3戦目には後攻になることを想定して後攻寄りのカードを多めにサイドデッキに投入した構築です。
 そのことを考慮せずにデッキをコピーした結果敗北したのならば、それは思考停止でコピーしたあなたのせいです。

 メインデッキでどう考えても対処できないカードのために《多次元壊獣ラディアン》をメインデッキに入れておこう、という意識の欠片でもあれば、引き次第ではありますが覆せた結果だったかもしれません。

 別のパターンを考えてみましょう。

 あなたの環境では多くの人が《幽鬼うさぎ》を多用しているとします。
 加えてあなたの愛用するデッキはPモンスターが多く、Pゾーンのカードに《幽鬼うさぎ》を当てられる機会が増えてきたとしましょう。
 上記の環境では《PSYフレームギア・γ》を投入せざるを得ないと判断し、あなたは《PSYフレームギア・γ》を投入しました。

 ところが周りの人もそれに対応してモンスターがいない状況では《幽鬼うさぎ》を使わず、モンスターが出てからPゾーンのカードに《幽鬼うさぎ》を使うようになりました。

 あなたは既に《墓穴の指名者》だけでなく《抹殺の指名者》まで採用していますが、対策カードが足りないと考えるようになりました。

 さて、どんなカードを採用しますか?

 筆者ならこんなカードを採用します。

 相手によるPゾーンのカードの破壊と、Pゾーンを対象にする効果を無力化するカードです。

 《幽鬼うさぎ》の横行する《幽鬼うさぎ》をPゾーンのカードに当ててくる環境で最大限に輝くカードです。
 お互いにPカードを使うのであれば【魔術師】や【イグナイト】はこれ1枚で1ターン動けなくなるため《墓穴の指名者》よりも強力なカードとなるでしょう。

 こういったカードは汎用的なものではなく、かなり限られた環境でピンポイントに輝くものです。
 しかし自身の置かれた環境において最大限に活用できるカードがあるかどうかというのは、カードプールの知識を磨かなければ判断できず、またそのような環境で輝けるカードの存在を知らずに「毎回《幽鬼うさぎ》を食らって負ける!運ゲー!」と嘆くのはお門違いです。

 そして構築の話では【ガジェット】が欠かせません。
 もっとも最近遊戯王をプレイしている人の中には【ガジェット】なぞ組んだことがないという人も多いと思いますが、他のデッキにも通じる話です。

 【ガジェット】は大きく分けて「6ガジェ」と「9ガジェ」が存在します。
 前者は3種類の「ガジェット」を2枚ずつ、後者は3枚ずつ採用した形ですね。

 40枚デッキを想定した6ガジェの場合、初手にいずれかの「ガジェット」モンスターを引き込む確率は約57.7%です。
 2戦中1回は初手で「ガジェット」モンスターを引くことができる確率です。

 一方で9ガジェの場合は約74.2%にまで跳ね上がり、4戦中3回は初手に「ガジェット」モンスターを握れるため安定度で言えばこちらの方が上です。

 しかし「ガジェット」モンスターは1枚の召喚に成功すると芋づる式に後続がサーチできることが強みであり、手札で重複することは余程の理由が無ければ好ましいことではありません。
 具体的には《マシンナーズ・フォートレス》の特殊召喚コストに充てるなどの明確な用途や、《エフェクト・ヴェーラー》や《デモンズ・チェーン》などが流行してサーチが通りにくい環境であるといった理由です。

 また、6ガジェで2枚が重複する確率は約26.4%ですが、9ガジェでは約48.7%とやや高い数値となります。
 3枚重複する確率に至っては6ガジェは約8.5%ですが、9ガジェはなんと約26.5%になります。

 つまり6ガジェで2枚重複するよりも9ガジェで3枚重複する確率の方が僅かながら高く、単体では手札で腐る2枚目以降の「ガジェット」モンスターの利用方法を用意できなければ9ガジェで組む利点は薄いということになります。

 これはあくまで確率論であり、実際には6ガジェでも重複しまくったり9ガジェでも全く引けなかったりということはあり得ます。
 しかし、とりあえず机上論からデッキを組むことも時には大切でしょう。

 ここまで纏めて筆者の過去記事から引用した内容ですが、難しいことはありません。先述した通り確率論です。

 これは1枚初動の採用枚数でも同じことが言え、例えば12枚体制で用意していれば約85.1%の確率で1枚は初手に引き込めます。

 制限カードの初動札1枚のみに頼った展開を想定して、引けなかったから「運が悪かった」などと言うのはやめましょう。
 それをサーチできる他のカードやドローソースを駆使して手札に引き込む確率を可能な限り上げ、その上で引けなかった場合は運が悪かったと言えるかもしれません。

 2枚初動となる【電脳堺】などはよりシビアになります。
 安易にデッキ枚数を増やすと必要なカードが揃わず、カードの採用枚数の配分を吟味する必要が出てきます。

 構築の段階でできる努力を怠った結果の敗北は運ゲーなどではありません。
 あの時の反省でこのカードを入れよう、あの状況を対処できるカードはないのかな、とデュエル後も反省して構築を磨くことが肝要です。

デュエルの進行

 次はデュエルの進行についての話です。

 何を言っているんだ?と思われる人もいると思いますが、濁して書いてあるだけで要するにプレイングの話です。
 しかし改めて考えると構築段階からプレイは始まっておりプレイングという言葉が不適切なのでは?ということで見出しはデュエルの進行としています。

 この記事では以降「デュエルの進行=プレイング」ということで話を進めます。

 さて、皆さんがデュエルする中で、一度は「さっきのプレイングミス(以降:プレミ)だったなー」と反省したことがあると思います。
 フリープレイも含めて、常に最適解でプレイし続けた人は流石にいないでしょう。

 世の中には2種類のプレミがあります。

・回避できなかったプレミ
・回避できたはずのプレミ

 前者に該当するものは比較的多く、例えばマッチ戦における1デュエル目の先攻/後攻の選択権はその代表例です。
 マスターデュエルではシステムによる完全なランダムで選択権がどちらかに委ねられるため、人によっては選択できる機会に恵まれず「運ゲーだよ」と嘆くこともあるでしょう。

 確かにそれ自体は完全な"運"ですが、あまりにも選択権が得られず先攻で動けない経験を繰り返したのであれば、返し札を多めに採用したり後攻前提のデッキを組んだりすることでストレスを比較的軽減できるはずです。
 特に後者は自身に選択権が与えられても後攻を選ぶだけなので選択権はほとんど関係無いですね。

 他にも【クシャトリラ】の多い環境だからと除外メタを多く積んだ構築で臨んだところ、全く想定していないデッキタイプと遭遇し、メタが機能しなかったパターンもあります。
 デッキ選択の段階では恐らく悪手ではなかったのでしょうが、結果として敗北に繋がっていることから一種のプレミと呼べるでしょう。

 さらに局所的ではありますが、あえてマイナーなテーマのデッキを使ったところ偶然にもミラーマッチとなり、《抹殺の指名者》が刺さって敗北することもあり得ます。
 牽制用に《増殖するG》を投げたらそのままデッキを全て引かされて負けることもあります。

 これらは良くも悪くも"運"が悪かった、で片付けられることではありますが、後攻寄りのカードを多めに採用する、除外メタだけでなく他のメタカードも広く採用する、といった構築段階からとれる回避手段があったはずです。
 結果論にはなりますが、デッキ選択あるいは構築段階というスタートラインの時点でのプレミと呼べるでしょう。
 しかしこればかりはどうにもなりません。特に後者は仕方ないと言うしかないでしょう。

 ところが後者の回避できたはずのプレミについては擁護できません。

 連戦に次ぐ連戦で緊張し、プレミしてしまうことはあります。
 人間なのでそういう時もありますが、常にベストパフォーマンスを発揮できるように己を鍛えることも肝要です。

 さて、回避できたはずのプレミについて、あなたはどのようなものを思い浮かべますか?

 例えばあなたの手札に《エフェクト・ヴェーラー》と《無限泡影》があったとしましょう。
 相手の手札はわかりませんが1枚残っており、相手はフィールドのモンスター効果を発動しました。

 この時あなたはどちらのカードを発動しますか?
 あるいは発動自体しませんか?

 仮に発動するとしましょう。発動しないと話が進まないので。

 《エフェクト・ヴェーラー》を投げる場合、ケア手段の筆頭候補としては《墓穴の指名者》があります。
 一方で《無限泡影》を投げる場合、ケア手段の筆頭候補としては《禁じられた聖槍》があります。採用率の高さから《抹殺の指名者》もあり得るでしょう。

 他の情報が一切無ければ、どちらが飛んでくるかは不明です。完全に運です。
 しかし、《禁じられた聖槍》の採用率の低さを考慮すると《墓穴の指名者》である可能性の方が高く、投げる場合は恐らく《無限泡影》が正解となります。

 ところが相手の墓地に《墓穴の指名者》が2枚あるとしましょう。
 この場合は《墓穴の指名者》を使われる可能性が無いため、《無限泡影》を使うよりも安全に《エフェクト・ヴェーラー》を投げる方が理想的と思われます。

 また、自分の手札に「ビーステッド」上級モンスターがある状態だとしましょう。
 《無限泡影》に対してケア手段を使われた場合はどうしようもありませんが、《エフェクト・ヴェーラー》に《墓穴の指名者》を使われた場合はそれにチェーンして《エフェクト・ヴェーラー》を除外する形で「ビーステッド」上級モンスターの効果をチェーンすることで、《墓穴の指名者》を回避しながら相手モンスターの効果を止めることができます。

 相手の手札がわからない以上は運に依るところとなりますが、自分の取れる戦法次第では相手のケア手段を透かしながら妨害を通すことができます。
 さらにカードそのものの採用率などの側面からも分析することで、受ける可能性の高い妨害を考慮してカードをプレイすることができます。

 他にも、除去する必要の無いカードまで処理して更地に直接攻撃をしたことで《冥府の使者ゴーズ》を誘発してしまう、合計攻撃力が足りている状態なのに不要な展開をしたことで《原始生命態ニビル》を誘発してしまうといった比較的安易なミスは散見されます。

 類例として《拮抗勝負》に対して《サイクロン》などを発動してしまうとフィールドが1枚残らず消し飛ぶことは有名ですが、《相剣大邪-七星龍淵》の効果はなぜか発動する人が多いです。
 当然全部消し飛びます。

 これも回避できたはずのプレミです。

 デュエルしていれば多くの場面で選択を迫られます。
 誰もが常に間違わずにプレイできるわけではありません。筆者もプレミすることくらいたくさんあります。
 しかし遊戯王を運ゲーと批判する人は、そういった場面で非合理な選択をし、その結果敗北することが多いです。

 少なくともカードプールの知識が豊富ならば、初見殺し向けのデッキに遭遇してもマストカウンターを見極めて適切な処理ができることでしょう。
 無知から来る初見殺しも回避できたはずのプレミに分類されます。

 事前にできる努力を怠ってはいませんでしたか?
 デュエル中にミスはありませんでしたか?
 プレイするカードは適切でしたか?

 遊戯王OCGでは常に動画を撮影しながらデュエルするわけではないので、後から見返すことが難しいです。
 しかしマスターデュエルにはリプレイ機能があります。
 運ゲーで負けた!と嘆く人ほど、リプレイを見返しましょう。
 そこで運ゲーだと感じた場面に繋がるプレイを研究し、自分には何ができたのかを考えることが大切です。

相手の癖の把握

 最後は相手の癖を把握するという話です。

 短時間で見抜くことは難しいですが、フィールドや手札だけでなく相手プレイヤーそのものにも気を配れるようになるとできるプレイがあります。

 例えば相手フィールドには攻撃力3200の《召命の神弓-アポロウーサ》のみがいるとしましょう。
 自分の手札には4種類の「未界域」モンスターが存在します。

 「未界域」モンスターの①の共通効果には1ターンに1度しか使用できない誓約が存在せず、手札から離れなければ何度でも発動できます。

 ところが相手プレイヤーや《召命の神弓-アポロウーサ》の効果を発動し「未界域」モンスターの効果を無効にしました。

 この時、相手プレイヤーに対して意識を配れていると、「もしかしてこの人は次の「未界域」モンスターの効果にも《召命の神弓-アポロウーサ》の効果を使ってくれるのかな」と考えることができます。
 そこでまだ使っていない「未界域」モンスターの効果を順々に発動すると相手は《召命の神弓-アポロウーサ》を毎回発動し、結果的に損失ほぼ0で《召命の神弓-アポロウーサ》を無力化できました。

 仮に最初に見せたカードを続けて発動していた場合、《召命の神弓-アポロウーサ》の効果を使うのをやめていたでしょう。

 相手の知識不足に付け入る形で《召命の神弓-アポロウーサ》を処理しましたが、これは知識の足りなかった相手が悪いのです。
 デュエルの卓に着いたら正々堂々戦います。わざわざ知識不足を指摘する必要はありません。
 また相手から「なんで教えてくれないの」だの「卑怯だ」だのと言われる筋合いもありません。

 他にも以下のようなことができます。

・相手は魔法・罠ゾーンの左端(こちらから見ると右端)にカードをセットする癖があるため、右端に《無限泡影》をセットしておく
・相手は《永遠の魂》の発動と同時に①の効果を発動する癖があるため、サイドチェンジで《神の警告》を積んでおく
・相手は《氷剣竜ミラジェイド》を右端(こちらから見ると左端)に出す癖があるため、《ケンドウ魂 KAI-DEN》の効果で処理する

 相手の行動の癖を把握することで、より有利にデュエルを進めることは可能です。
 主に互いをよく知る仲であるほど可能ですが、初対面でもできないことはないです。

 逆に上記のような癖のある人は、そこを付け込まれて敗北することが多々あるでしょう。
 特に《召命の神弓-アポロウーサ》や《無限泡影》は汎用性が高くマスターデュエルでも遭遇しやすいため、ランクマッチで負けないためにも自分の癖は把握しておきましょう。

遊戯王における"運"とは?

 先述したのは全て自力でなんとかなる範囲の話です。

 言い換えると、それ以外の自力でコントロールできない部分は概ね"運"になります。

 例えば先述した《エフェクト・ヴェーラー》と《無限泡影》のどちらを使うか問題については、相手の手札がわからない以上、通るかどうかが最終的に運に依ることとなります。

 また確率論からデッキを構築し、初動札が9割の確率で手札に来るとしても、10戦に1回くらいのペースで初動札が引けない事態となるでしょう。
 その時の対応をどうするか、乗り越えられるかという点は構築次第で解決し得る問題です。

 つまるところ、遊戯王は運ゲー!負けたのも運!と嘆く人は以下のことを思い返してください。

敗因となりそうなカードの対策はできているか?
 できていなければ対策しましょう。
 対策できないのであれば引かれたら負けと割り切りましょう。
 そもそも知らないカードで負けるようならあなたの知識不足です。

環境に合った適切なデッキ構築はできているか?
 できていなければ構築を見直しましょう。
 どう頑張ってもデッキの枠が足りなければ取捨選択が大切です。
 欲しい効果のカードがあるか探したい場合は条件を絞って検索するなりして探しましょう。
 あなたが今使っている端末はそういうことができるものです。

デュエル中のプレイは適切だったか?
 リプレイを見返したり、相手にお願いして状況を再現してもらったり、デュエル後も思考を止めないようにしましょう。
 相手から得た情報アドバンテージさえも利用しましょう。
 結果的に勝ち/負けに繋がったもののこの時はどう考えていたのか、悩んだ場面ほど記憶に強く残りやすいです。
 また詰みとなった場面で解答になりそうなカードがあるかも調べてみるといいでしょう。

 できる努力は無数にあります。
 デュエルの前から戦いは始まっており、デュエル中はもちろん、デュエル後も自己を研鑽することはできます。

 やれることをやり、可能な限り努力した上でもなお自力でコントロールできない部分こそ""となります。
 とりあえず遊戯王は運ゲー!と嘆く人は全カードプールを把握してから嘆きましょう。

最後に

 そういうわけで、切り詰められるところが無くなった人だけ嘆いてください。
 構築を悩むだけで無限に時間が使えるので、運ゲーだと嘆くことはほとんど無いはずなんですけどね。

 例えばお互いにフィールドや墓地が更地で1でも殴れば終わるのに引いたカードが《灰流うらら》だったとしましょう。
 それを伏せてターンを返すか握ったままターンを返すかで悩んだ結果負けたら、流石にそれは運負けと言えるでしょう。

 その時は「あの時こうすればよかったのかー」とひとしきり嘆いた後に気持ちを切り替えましょう。
 そんな場面は滅多に存在せず、後から悩んでもどうしようもないので、引きずるだけ無駄です。

 趣味にそんな時間使えるか!と言う人は嘆く権利すらありません。
 別に努力しなくてもいいので、真面目にやってる人の邪魔をしないでください。

 以上、筆者のお気持ち表明記事でした。
 おまけに読めば読むほどしょうもない話を置いておきます。
 暇な人は読んでください。

 皆さんも前向きに頑張って遊戯王を楽しみましょう。

おまけ

 遊戯王に限らず、カードゲームにおいて勝利に近付く手っ取り早い方法は相手の嫌がることをやることです。

 初動札に対して妨害を当てる、展開中に《原始生命態ニビル》を当てる、《スキルドレイン》などの永続カードで相手を縛るといったことが挙げられますね。

 なぜかこの相手の嫌がることをやるという内容を対面に物理的な攻撃をする風呂に入らず悪臭を放つ過剰なシャカパチを繰り返す相手のカードを雑に扱うなどの行為と捉える連中が一定数います。

 わざわざ「ルールの範疇で」という注釈をつけなければ理解できないのでしょうか?
 盤外戦術は相手の表情から手の内を読むだけでいいんですよ。なぜルール外から嫌がらせをすることを想像するのでしょうか。

 改めて書きますが、相手の嫌がることをやるとは、適切な場所で妨害を当てて相手のやりたいことをやらせないことを指します。
 カードゲームなのですから、カードゲームの範疇で戦ってください。
 カードゲームのルールに相手プレイヤーを殴ってはいけない、プレイ前に風呂に入らなければいけない、なんて書くのはアホみたいじゃないですか。

 カードのプレイとは関係の無い話題なのでおまけに書きました。
 これを読んだ皆さんはそんな盤外戦術をしない人間だと願っています。

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