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遊戯王のテキストはKONMAI語って話題のやつ

 皆さん初めましての方は初めまして、そうでない方は前回までの記事を読んでいただきありがとうございます。その辺の決闘者の衣玖(いく)と申します。

 今回はTwitter(現:X)で定期的に話題となる、KONMAI語に関する記事です。

 先に立場を表明しておくと、筆者は既にKONMAI語と呼ばれる言語は廃れていると考えています。
 にもかかわらず未だに遊戯王はルールが難解!KONMAI語!と言われるのかについて個人的な見解を述べる記事となります。
 読んでいて不快に思った方は容赦無くご使用の端末を叩き割ってください。

KONMAI語って何?

 まずこれについて明確に定義を定めなければ話は平行線のままとなります。

 筆者はこの記事においてKONMAI語をこのように定義します。

KONMAI語とは正常にプレイすることすら困難なカードテキストのことである。

 どういうことかというと、基本的な国語力、読解力、ルールを把握した人間でも扱う際に頭を抱えるレベルのカードテキストのことを指します。
 テキストからは読み取れない裁定と呼ばれることもあります。

 例えば《光と闇の竜》については運用する上で想定されるパターンに対して特殊な裁定が多く出ていることからKONMAI語の代表格として扱われることがあります。

 現代風のテキストに書き直すなら以下のようなテキストになるでしょうか。

このカードは特殊召喚できず、このカードの②の効果は同一チェーン上では1度しか発動できない。
①このカードがモンスターゾーンに存在する限り、このカードの属性は「闇」としても扱う。
②モンスターの効果・魔法・罠カードが発動した時に発動する。このカードがフィールドに表側表示で存在する場合、以下の効果を全て適用する。
●その発動を無効にする。
●このカードの攻撃力と守備力は500ずつダウンする。
③このカードが破壊され墓地へ送られた時、自分の墓地のモンスター1体を対象として発動する。自分フィールドのカードを全て破壊する。その後、対象のモンスターを自分フィールドに特殊召喚する。

 ここまで書いておきながら、これでもテキストには不備があります。
 ③にあたる効果の部分ですが、対象を取れるモンスターが不在でもフィールドのカードは全て破壊する&何も破壊できなくても対象のモンスターは蘇生されるというこのカードのみに存在する特殊な裁定となっています。

 似たような効果の《グリーディー・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン》は、何も破壊できなかった場合は自己再生できません。
 というか一般的に「その後」のテキストがある場合はそれより前の処理ができなければ適用できないので《光と闇の竜》がおかしいのです。

 一方で②にあたる効果は《召命の神弓-アポロウーサ》という非常に似通った効果を持つカードが登場しています。
 ただし任意発動ではなく強制発動であるため《光と闇の竜》が複数体存在する場合は少々面白い処理になります。
 具体的には《A》の発動を1体目が無効にしようとチェーンを組み、また同時に2体目がチェーンを組むため、2体目の効果で《A》の発動が無効になった後に1体目は効果が不発(既に無効になっているものを無効にできない)になります。

 また効果を無効にしてから攻守を下げますが、攻守を下げられなかった場合には発動を無効にする処理も行われません。
 《ドラゴンメイド・シュトラール》が《ドラゴンメイド・ハスキー》を特殊召喚できない状況であれば効果の発動を無効にできないのと同じです。
 《召命の神弓-アポロウーサ》はそのテキストのため《あまのじゃくの呪い》でステータスの増減が反転している状況では効果発動を無効にできませんが、《光と闇の竜》は1度だけ発動の無効を行い攻守が500ずつアップします。ただしその後はそのターン中は一切発動しなくなります

 このようにテキストからは読み取れない情報が多く、上記の裁定を把握していなければまともに運用することができません。
 特に破壊と蘇生の効果については対象不在や破壊できないパターンが頻出するため、正確な内容を理解していなければいけません。

 他にも例外処理が多く発生する《ポール・ポジション》や《天変地異》などもシンプルなテキストながら頻出するパターンに対応が追いついておらず、遊戯王マスターデュエルでは未実装のカードとなっています。
 もはや電子ですら処理ができないカードです。

今でもKONMAI語ってあるの?

 先に伝えておくと、現時点では上記のようなパターンはほとんどありません

 2014.3.17から施行されたマスタールール3(以降:9期)に伴い、カードテキストには①②③などの番号が振られるようになりテキストが整備されました。
 また効果外テキスト(カードにかかる誓約であり効果ではない)や誓約効果についてはそれらの番号よりも前に書かれるようになったため、それ以前のテキストでは判別しづらかったものも一目でわかるようになりました。

 よく挙げられたのは《BF-東雲のコチ》と《BF-大旆のヴァーユ》でしょうか。

 どちらも「BF」に属するモンスターであり、チューナーでありながら特定の条件下ではS素材にできない効果を持ちます。

 あえて旧テキストを載せましたが、皆さんは判断できますか?

 最新テキストを載せると以下のように変貌します。

 《BF-東雲のコチ》には①などの番号すらついていません。
 これは効果外テキストのみが書かれているためです。
 つまり、《BF-東雲のコチ》はいかなる状況であっても特殊召喚されている場合はS素材にできないということになります。

 一方で《BF-大旆のヴァーユ》は①の後にS素材にできない旨が書かれています。
 これはそのテキストが効果の一部であることを示しているため、何らかの理由で効果が無効になっていればS素材にできるということになります。

 旧テキストではどちらも似通っており、さらに《BF-蒼炎のシュラ》で効果を無効にしてリクルートすることもよくあったため、その差異を把握しておかなければ運用できませんでした。

 似たようなカードに《クイック・シンクロン》も存在します。

 自身を特殊召喚できる効果、「シンクロン」チューナーの代わりになる効果、「シンクロン」チューナーを要するモンスターのS素材にしか使用できない効果が書かれています。
 さらに登場は《BF-大旆のヴァーユ》のわずか3ヶ月後であるため、テキストが似通っていました。

 実際には自身を特殊召喚する効果以外は全て効果外テキストであり、いかなる状況でも「シンクロン」チューナーの代わりになり、「シンクロン」チューナーを要するモンスターのS素材にしか使用できないことは変わりません

 《シンクロン・エクスプローラー》という「シンクロン」モンスターの効果を無効にしながら蘇生させるモンスターが存在します。
 その効果で《クイック・シンクロン》を蘇生させた場合にどうなるかを考えた場合に必ず直面する問題ですが、上記の通り「シンクロン」チューナーの代用としてのみS素材にできる点は変わりありません。

 このように旧テキストからは読み取りづらくカード毎に裁定を理解していなければまともに運用できなかったカード達も、マスタールール3以降に再録されたことで明文化されるようになっていきました
 先ほど挙げた《光と闇の竜》《ポール・ポジション》《天変地異》といったカードは9期以降に再録されておらず、テキストが古いままで読み取りづらいといった問題が残り続けています。

 では肝心のそのようなカード達は実際に使われているのでしょうか?

再録されていないカード達

 まずどれだけのカードが再録されていないのかを考えてみましょう。

 2023.11.20時点で遊戯王ニューロンに登録されているカードが全部で12,616枚。
 テキスト整備に影響が無い通常モンスター(Pモンスターを除く)を除くと11,946枚。
 そこから以下のカード達を抜きます。
・P効果を持たない通常Pモンスター 4枚
・効果を持たない融合モンスター 60枚
・効果を持たない儀式モンスター 15枚
・効果を持たないSモンスター 3枚
・効果を持たないXモンスター 2枚
・効果を持たないLモンスター 5枚
・《ヴィクトリー・ドラゴン》を除くマッチキルモンスター 32枚

 現時点で何らかの効果処理を要するカードはトータルで11,825枚ということになります。

 一方で8期以前に登場したカードから上記の内容を抜くと全部で5,628枚であり、現存するカードのうちの約半分になります。

 そしてそこから9期以降に再録されたことのない通常モンスター以外のカードのみをピックしていくと、3,863枚になります。(若干誤差があるかもしれませんごめんなさい)

 つまり、8期以前に登場したカードのうち1/3ほどが9期以降に再録されているということになります。
 また言い換えると現存するカードのうち1/3ほどがまだテキストが整備されていないということにもなります。

 皆さんはその中からどれだけのカードを使用していますか?

 例えば「E・HERO」融合モンスター達は書籍付属カードが一定数存在しており、再録されていないカードも散見されます。
 《E・HERO アブソルートZero》や《E・HERO エリクシーラー》などは現在でも比較的使用されるカードでありながら再録されていない典型例でしょう。

 また「DEUL TERMINAL」出身のテーマである「ガスタ」「リチュア」「ラヴァル」「ナチュル」などは再録の機会に恵まれず、未だに8期以前のテキストしか存在しないカードが多く在籍しています。

 しかし遊戯王はKONMAI語としてこれらのカードを触りながら批判する人はどれだけいるのでしょうか?
 少なくともこれらのカードに複雑な効果処理はほとんど存在せず、効果がやや不明瞭だった《ナチュル・ビースト》や《ナチュル・パルキオン》は既に再録されているためテキストから読み取れない事例はほとんどありません。

 再録されていない難解なカードを未だに使い続けている人は相当な古参プレイヤーであり、少なくとも当人はそのカードの裁定については詳しくなっているはずです。
 そうでない新参プレイヤーはそういったカードに触れる機会すら与えられないでしょう。
 特に《ポール・ポジション》は遊戯王マスターデュエルに実装されていないことから日常的に遊戯王OCGで使っている人間が身近に存在しない限り見る機会すらありません。

今なお批判されるKONMAI語とは

 テキストが整備され始めてから早9年半が経ち、効果を持つカードのうち2/3以上が新テキストとして登場しています。

 それでも遊戯王はKONMAI語!などと言い続ける層が一定数います。
 そのような人間の主張として2種類あるように感じました。
 具体的には以下の点を批判しています。
・8期以前の古いままのテキストからは読み取れない処理が野放しになっている
・「送る」と「捨てる」、「選ぶ」と「選択する」など単体では似たような結果になる行動の単語によって処理が異なる

テキストからは読み取れない処理

 上の画像にある《間炎星-コウカンショウ》や《武神器-ハチ》のような「○○して発動できる。〜〜を選択して破壊する」というテキストは8期以前には散見されました。

 現在のテキストに当てはめて考えると、「○○して発動できる」よりも前の段階で対象を取っていないことから対象を取らない効果のように捉えることができます。
 しかし実際には対象を取る効果であり、コストを払い対象に取ってから効果解決時に最後の処理を行います。

 《武神器-ハチ》のテキストを現代風のテキストに直すとしたら以下のようになるでしょう。

このカード名の効果は1ターンに1度しか使用できない。
①自分フィールドに「武神」獣戦士族モンスターが存在する場合、墓地のこのカードを除外し相手フィールドの魔法・罠カード1枚を対象として発動できる。そのカードを破壊する。

 実にシンプルですね。
 まあ元から墓地発動の《サイクロン》くらいの効果しか持ってないのでシンプルで当然なのですが、これで対象を取る/取らないの話は終息します。

 また類例として《墓守の長》のようなパターンも存在します。

 テキストが古く「アドバンス召喚」の単語すら「生け贄召喚」となっていますが、見てほしいのはそこではなくその後の文言です。

 「このカードが生け贄召喚に成功した場合、〜〜できる」と書いてあります。

 発動タイミングを満たした際に発動機会が与えられるカードのテキストには4種類あります。

・時の任意効果
・時の強制効果
・場合の任意効果
・場合の強制効果

 テキストを見ると場合の任意効果のように見えますが、実際には時の任意効果となります。

 このようにテキストが整備されるようになった9期よりも以前のカードには古いテキストゆえの不備がいくつか見られ、9期以降のカードを多く目にしている人にとってはテキストと処理の食い違いが発生していると感じられるでしょう。

 これを批判したところでどうしようもありません。再録を待ってください。
 テキストの整備に乗り出した9期以降のテキストでこんなことが起きているならともかく、それより前のカードに文句を言っても変わりません。

 それでもゲーム作品などではある程度わかりやすいようにエラッタされるといった配慮がされています。
 例えば《墓守の長》については以下のようになっています。

 こういったテキストの整備に文句があるのであれば、自分がKONAMIの社員になって最新テキストになっていないカードを優先的に再録できるような立場になればいいのではないでしょうか。

単語によって処理が異なる

 だいたいインターネットで声がデカい連中が主張してるやつはこれです。

 例えば「手札を捨てる」と「手札を墓地へ送る」が筆頭になるでしょうか。

 結果としてどちらの処理をしても手札のカードは墓地へ送られます。
 しかしその処理は異なり、それをトリガーとする効果も異なります。

 現実の例で言えば、被保険者の死亡により死亡保険が支払われるとしても、自殺・他殺・病死・老衰など死亡理由によってその後の対応も異なるでしょう。

 また同格と呼べるほど多く言われるのが「選択する」と「選ぶ」ですかね。
 前者は効果の発動時点で対象を取りますが、後者は効果解決時に影響範囲内からカードを選ぶことになります。
 日常生活の範囲ではどちらもほぼ同じ意味の言葉であり、非プレイヤーから見ると何が違うんだとなる言葉でしょう。

 一応「選択する」には「適切なものを選び、不適切なものを切り捨てる」といったニュアンスがあります。
 対する「選ぶ」は「複数の中から1つを取り出すこと」を意味する言葉であり、そこから転じて対象を取る/取らないを指す言葉になったのではないでしょうか。

 こうして考えると、ややわかりにくいもののKONMAI語と呼ぶほどの問題ではありません。
 踏み込んだ内容ではありますが、日本語の範疇の話ではないでしょうか。

 なお12期に突入した現在では、もはや「選択する」「選ぶ」といった語句すら使用されていません
 新たなるテキスト整備によってこれらの問題すら解決するようになりました。

 少なくとも12期以降に発売されたカード群を用いてデュエルする際には、進行上で処理が難しい問題はほとんど無いと思われます。

 これらのような内容をKONMAI語と批判する人は、まず日本語と社会常識の勉強から始めてみてはいかがでしょうか。

最後に

 複雑怪奇、効果処理がわかりにくいといった遊戯王の常識は過去のものになりつつあります。
 そのようなカードでもテキストの整備によって読みやすくなり、扱いに困るカードは徐々に減っていっています。

 にもかかわらず遊戯王はKONMAI語!テキストが意味不明!という論を遊戯王全体の話かのように広げることは良くない行為です。
 公式もテキストが古く書き方が統一されていなかった時代を反省して今のようなテキストに整備しているのでしょう。

 各々のユーザーが遊戯王に対してどのように思うのかは自由ですが、少なくとも難解なテキストは数を減らしており、9期以前ほどの複雑さはありません。
 新規ユーザーにとっては参入しやすく、引退ユーザーにとっては復帰しやすく、古参ユーザーにとっては不自由さの少ない良い環境へと変貌していっています。

 願わくば誰もが楽しめる環境作りを各々が心掛けて遊戯王に向き合ってもらえると、ひとりのユーザーとして喜ばしい限りです。

 最後まで読んでいただきありがとうございました。

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