R6 会社法

行政法と会社法はビックリしました

第1         設問1

1        Dらは監査役なので、会社法(以下略)385条1項に基づき取締役に本件株主総会1を開催することをやめるよう差し止め請求できないか。

(1)1 乙社は甲社の発行済株式総数の20%に相当する10万株を保有しており、「総株主の議決権の百分の一以上の議決権(会社法(以下略す)303条2項)」を有するので、乙社の本件議題提案は適法である。

 また、乙社の株主総会招集請求に対し甲社は招集通知と発しなかったので、乙社が裁判所の許可を得て本件臨時株主総会1の招集通知を発したのは適法である(297条4項1号)。

(2)ここで、招集が乙社により行われているため、本件総会の開催者が乙社なのか甲社取締役なのかが問題となる。

 確かに乙社は総会を招集してはいるが、株主総会の開催を一株主に認めるのは妥当でないので、開催は会社取締役と解すべきである。
*直接適用と類推適用の分岐点であり、かなり迷った挙句、二択に敗れました。とても残念ですが、勉強不足で太刀打ちできませんでした。

 したがって、本件株主総会は甲社取締役により開催されることになる。

(3)385条1項該当性の検討

ア 本件招集通知は株主への利益供与(120条1項)による違法のおそれがあるので、総会開催は「取締役が・・・法令・・に違反する行為を・・・するおそれがある」といえる。

イ 「著しい損害が生じるおそれ」とは、会社の経営の基礎を危うくするおそれのある行為をいう。同2項による裁判が前提となっているので抽象的なおそれで足りる。

 本件各議題は後者の取締役及び監査役を全員解任して入れ替える内容なので、利益供与に基づく決議によって会社経営陣が変わることにより会社の経営の基礎を危うくする抽象的おそれが認められる。

 したがって「著しい損害が生じるおそれ」が認められる。

ウ よって、Dらは甲社取締役に株主総会の開催をやめるよう請求することができる。

2 Dらは、招集通知に「著しく不当な事実がある」として取締役会に報告し、株主総会をやめることを求めることができるが、総会差止の実効性は低いと考える(382条)。

2        小問2

(1)株主に商品券を贈る行為は利益供与に該当し、招集手続きには120条1項違反の違法があり取消事由となる(831条1項1号)と主張する。

ア 120条1項は会社が利益供与を行うことを禁止するところ、本件商品券は乙社が送ったものであり、会社の利益供与ではないとも思える。

イ もっとも、乙社の提案が可決されれば甲社の経営陣は全員乙社の指名した者となるところ、利益供与により乙社に株主の議決権行使が歪められればこれが実現するため、本件利益供与は実質的には会社が行ったものと同視できると考える。本件書面には「乙社提案の各議題のいずれにも賛成した方には・・・商品券を・・・贈呈」と記載されており、株主の権利行使についての利益供与に該当し、乙社により株主の議決権行使が歪められている。

 そして、同2項により無償で財産上の利益を供与した場合は利益供与が推定されるところ、乙社は無償で商品券を供与しているので、乙社の利益供与が推定される。

ウ ここで、1000円の商品券は社会的儀礼の範囲とも思えるが、株主の議決権をコントロールする目的は社会的相当性を欠くので推定は破られない。
 そして、利益供与を基礎付ける本件書面は招集通知と同封されおり一体とみるべきである。
エ よって、本件招集は利益供与に該当し違法であるため、Eの主張は認められる。

3        乙社および利益供与を受けた株主が議決権を行使しており、831条1項3号に該当し違法であり、取消事由となると主張する。

ア 「特別の利害関係を有する者(以下、「特別利害関係者」)とは、決議について他の株主とは共通しない特別の利害を有する者をいう。

イ 乙社の提案は経営権争いであり、株主は経営者を選ぶ権利を有するので、原則として特別利害関係者には該当しない。

ウ もっとも、本件では前記の通り利益供与がなされていること及び、決議により乙社が実質的に後者の経営権を握ることから、乙社は他の株主とは共通しない特別の利害を有する者に該当するといえる。

エ 乙社および利益供与を受けた株主が議決権を行使したことにより議決されたこと自体が「著しく不当な結果」といえると解する。

オ よって、要件を満たし、Eの主張は認められる。

第2         設問2

1        本件株式併合の効力は本件決議2で効力発生日として定められた日に発生しており、株式の併合をやめることの請求(182条の3)は出来ない。

2        本件株式併合は本件決議2に基づいているので、決議から3カ月以内であれば、本件決議2を取消すことで本権株式併合を無効にできると解する。株式併合は株主に重大な影響を与えるので、決議に取消事由が存することは無効事由となるからである。

3        831条1項該当性の検討

(1)原告適格は「当該決議の取消により株主・・・となる者」にも認められるところ、丙社は決議取消の効果で本件株式併合が無効となれば株主に戻るのでこれに該当し、原告適格が認められる。

(2)決議に至る手続その他に違法等はなく、1号には該当しないし、2号解答事由もない。

(3)本件株式併合は本件計画①ないし③とあいまって甲社株主から丙社だけを締め出す目的であり、特別利害関係者の議決権行使による著しく不当な決議(3号)に該当し取消事由となると主張する。

ア 確かに、発行済み株式の3分の2を有し経営権争い目的のAらは他の株主とは共通しない特別の利益を有するといえるし、特定の株主だけを追い出すための決議は平等原則に反するので、不当な決議に該当するとも思える。

イ もっとも、株主の地位は会社の健全な経営を基礎としており、これが害される場合には経営権に関わる決議は原則として3号に該当しないと解する。

 会社の健全が害されるかの判断は株主自身が判断すべきであり、その判断が事実誤認に基づくなどその基礎を欠くか、社会正義に反し著しく不合理といえる場合には3号に該当し取消事由となると解する。

ウ 本件総会2には、全ての株主が出席し、決議に際し代表取締役Aが丙社の提案を説明するとともに甲社と競業関係にある丁社のために経営に介入されることを防ぎ、甲社の独立を維持するために丙社を締め出す必要があると合併の必要性を説明しており、株主の判断は事実誤認に基づいてはいない。

そして、Aらは甲社の経営の独立を維持するために丙社を締め出すという会社の利益のための経営権争いを目的としており、株主に共通する利益が目的ともいえる。そして、株式の買取価格は公正な価格と認められるものであったことも含めると、決議は社会正義に著しく反し不合理であるともいえない。

エ よって3号にも該当せず、丙社の主張は認められない。

以上

4.8枚くらいでした。問題が想定外過ぎて開き直って思い付きばかり書いてしまいました。耐えていてほしいです。

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