R6 司法試験 国際私法 問題2

国際私法第2問


第1         設問1

1        小問1

(1)       通則法31条1項は「養子縁組は」と規定するので、同項は養子縁組の成立及び効力についての規定と解される。

 本件は養子縁組の成立の問題なので同項により準拠法決定される。

(2)       同項は、縁組当時における養親となるものの本国法を連結点として配分的結合する。養子は養親のもとで生活することになり、親族関係等の法律関係もその地で発生することになるからである。また、養子となる物の本国法によれば第三者の承諾等または公的機関の許可等が成立要件となるときはその要件も備えなければならないというセーフガード条項が規定されている。

(3)       本件では、養親Aとの関係ではAの本国法である日本法が適用され、養親Bとの関係ではBの本国法である甲国法が適用される。尚、甲国法①は甲国における国際私法なので日本での準拠法決定には影響しない。

 養子Cの本国法は乙国法であるところ、乙国法は身分登録吏への届け出を要件とするが、セーフガード上行為該当するかが問題となる。

セーフガード条項の趣旨は不当な養子縁組を防止して子の不利益防止する点にあるところ、前記要件は戸籍管理のためであり、子の不利益防止ではないためセーフガード条項には該当しない。

(4)      よって、本件では甲国法の要件を満たす必要はあるが、乙国法の要件を満たす必要はない。

2        小問2(1)について

(1)      試験養育の結果について甲国で公認されたソーシャルワーカーによる報告書の提出が必要となるが、ソーシャルワーカーの代行を家庭裁判所職員または児童相談所職員が代行することが考えられる。

(2)      児童相談所の職員は子供の成育状況を判断する専門家なので、試験養育の結果の判断については児童相談所職員がより適していると考える。

(3)      よって、ABが児童相談所に相談した後に試験養育し、その結果について児童相談所職員が報告書を作成することで要件②を満たせると考える。

3        小問2(2)について

(1)      乙国民法③がセーフガード条項(通則法31条1項後段)に該当すれば、養親Aの嫡出子であり12歳のFの同意が必要となる。

(2)      前記の通り、セーフガード条項は養子の不利益防止の趣旨である。嫡出子の同意は、嫡出子の不利益防止の要件ではあるが、養子の利益を守るための要件とは言えないので、養親の嫡出子は「第三者」には該当せず、セーフガード条項には該当しないと解すべきである。

(3)      よって、乙国民法③の適用は無く、Fの同意が無くても本件養子縁組成立可能である。

第2         設問2

1        小問1

(1)      録画の方法による遺言が有効か否かは遺言の方式の有効性の問題なので、遺言の方式による法律により判断する。

(2)      同法2条1項1号により行為地方に適合する方式は有効となる。

本件遺言はBが滞在していた丙国のホテルの一室で録画されており、行為地法は丙国法となる。

(3)      丙国法⑤1により録画の方式は認められている。そして、本件遺言に際し、Bが氏名、撮影日及び遺言の内容を発言している様子が録画されているので、「遺言者が遺言の趣旨、氏名と年月日を口述」しており、同席したRが氏名及び遺言が正確である旨発言している様子が録画されているので「承認が遺言が正確である旨とその使命を口述」していると言えるため、同法2も満たし、有効である。

(4)      よって、録画の方法に寄っていることは無効事由とならない。

2        小問2

(1)      遺留分については遺言ではなく相続の内容の問題なので、通則法36条により準拠法決定する。

(2)      同上により準拠法は被相続人の準拠法となるので、本件ではBの本国法である甲国法が準拠法となる。

(3)      この場合には「外国法によるべき場合」として通則法42条が適用され得るが、甲国法と日本法では遺留分額が異なっているだけであり公序違反とは言えないので、同法により甲国法の適用結果は否定されない。

(4)      よって、本件では甲国法が適用される。仮に通則法42条が適用されれば、日本法が準拠法となる。

                              以上

4枚目最後の行まで書きました。量だけは豊富です。 

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