地方の生き残り戦略としての「教育」~青森市を例として~

まず現状認識として、日本という国は衰退している。
そして国全体としては少子高齢化が進行している。

この少子高齢化は2050年をピークとして
この国全体で今後、20年以上つづくことが
統計上、すでにわかっている。

今回は地方都市として青森県 青森市 を
一つのモデルケースとして考えてみよう。

おそらく日本国内の他の数多の地方都市にも共通する問題を
抱えているから、参考になると思う。

青森市は2023年現在で28万人程度の中核都市である。
たしか今年28万人を割ったと記憶している。

私の記憶だと、筆者が青森市の高校生だった30年前は
人口30万人都市だった。

2005年、日本国内全土で行われた「平成の大合併」で
隣接する自治体 浪岡町(当時:人口2万人)と合併して
それでも今年、人口28万人を切った。

国の統計予想としては
2045年時点での人口は16万人を切り
かつ人口の半分以上が老年人口となる。
つまり人口の半分以上が65歳のお年寄りだということ。

当然、これだと電気、水道、道路といった
都市のインフラの現状維持は不可能である。
ていうか、たぶん財政破綻すると思う。

これでもかなり楽観的な数値だ。

今年度だけでこの国、全体で80万人の人口が減る。
私の学年の出生数が全国で約200万人だったのに対し
今年、この国で生まれる子の数が80万人を切ると言われているので

他所から子育て層を引っ張ってこない限り
自動的に若者人口は減り続けることになる。

そう、この国はすでに
人口の争奪戦が始まっている。

で、日本全国、どこでも通用する話なんだけども
教育水準の高い街は必ず生き残る。
カネ持ってる子育て層が外部から流入してくるからだ。

青森市なんかをとってみても
都市計画として見た場合
市内の全域をなんとかしようと思ったら
市内全域が一様に衰退するのは目に見えている。

であれば、「残す街」と「潰す街」の選別が必要になるわけだが
潰される側の街の住人たちはこぞって反対するし
市長なり知事なりがそんなことをやろうものなら
下手したらリコール運動おこされてクビが飛ぶもんだから
誰もやりたがらない。

そんな中、地方都市が生き残るための戦略としては
大きく2つ挙げられる。

一つは小中学校の学区制の撤廃
もう一つは統廃合による小中一貫校の設立である。

小中一貫校の話は次の記事の回にゆずるとして
今回は小中学校の学区の撤廃の話に特化して書いてみる。

青森市の場合、市立の小学校・中学校は
基本、居住している住所ごとに学区が設定されており
だいたい、徒歩かスクールバスで通学する。

これについて、まずは一部の中学校で
学区制を廃止し、青森市内全域からの通学を認めることとする。
ついで青森市内すべての中学校で学区制を廃止し
越境入学を認める。

この段階を追って
最終的には市内の小中学校すべてについて
学区制を廃止する。

こうすることで人口の流動性を高める。

すでに青森市内だけに限ってみても
地域間における教育格差はかなり広がっている。

具体例としては県内トップの進学校
青森高校(定員240名)への合格者数について
青森市内の状況を見てみると

青森市立 南中学校(1学年180名程度)から
青森高校への進学者数が毎年40名程度で

青森市立 浦町中学校(1学年150名程度)から
青森高校への進学者数は毎年20名程度で

青森市立 浪岡中学校(1学年150名程度)から
青森高校への進学者数は毎年2名程度である。

格差が、かなり激しいと言ってよい。

まずは進学校受験に強い南中学校、浦町中学校の
学区を廃止して市内全域から生徒を募集するようにすると
青森高校への進学を希望している
市内の親子層(教育意識が高く、比較的裕福な層)が
まずは流入してくる。

中長期的に見た場合
カネ持ってる子育て層が子どもが生まれたのを期に
この中学校の近辺に居を構えるようになる。

市内全域の小中学校の学区を撤廃した場合
事実上、地域間で「子育て層」の奪い合いが起きる。

身も蓋もない話だが
進学実績の高い地域は住民の民度が高く、富裕層が多く、
そして治安が良いのに対し
進学実績の低い地域はその逆である。

今のまま、何もしなければ
市内全域の小中学校すべてが一律、生徒数を減らしていくだけであり
それは長期的にみれば一律に学力が落ちていくということを意味する。

生き残り戦略として「デキる生徒の奪い合い」を容認して
実績のある学校に生徒が集中するようにしていくことは
最重要課題である。

また、これにより人気の低い地域は子育て層が他地域へ流れるので
通常の人口減のペース以上に生徒数が減ることになる。
これによって小中学校の統廃合を一気に加速させることができ
財政負担を大きく減らすことができる。

「そんなの弱者切り捨てじゃないか!」と
非難する人もいるだろうが、はい、その通りである。

てめーら一体、いままでどんな自助努力してきたんだよ、と。

この国は少子高齢化と人口減による
「人口の奪い合い」がすでに始まっており
それは「仁義なき戦い」であり

「弱肉強食の世界」である。

それに気づかない人は現状認識が甘い。

この仁義なき戦いで生き残ろうとしない地域は
街全体が地盤沈下して滅ぶだけである。

市長がどうにかしてくれる
知事がなんとかしてくれる
国がなんとかしてくれる

なんて甘い考えは捨てた方が良い。

これが一つの戦略としての「学区撤廃」の話である。
もう一つの戦略として「小中一貫校の開設」については
次の記事で書いてみよう。

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