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【1人用声劇台本】がんばり屋さんへ贈る頭文字

この作品は、朗読用作品として執筆したものです。
使用する場合は、以下の利用規約を必ずご覧ください。

これは、頑張っている人へ向けて贈る言葉。

【上演時間】
約10分

【配役】
・私……語り手
 ※性別不問
 ※人称、口調変更可



私:はじめて会った日のこと、覚えてる?私はちゃんと覚えてるよ。
私:私と君が出会ったのは、私が共通の知り合いと一緒にいたときだった。そこへたまたまやって来た君と会ったんだよね。
私:君はまだ右も左も分かっていない様子で、少し戸惑っていた。周りの皆に何でも聞いていた。私はそれを遠くから眺めていたの。初々しくて、少し可愛かったなあ。
私:初めて君がみんなと遊ぶことになったとき、そこに私も呼ばれた。君は緊張したっていうけれど、私にはすごく落ち着いているように見えた。堂々とした、しっかりした人だなあって思ったんだ。


私:つまり、そのときの君は私にとって、知り合いのそのまた知り合い。それだけだったの。
私:それでも君が私の前に度々現れるようになって。二人だけで会うことも、話しをすることも増えていったね。
私:それでも私は、君との距離を縮めようとはしなかった。私よりも、もっと他にも素敵な人がたくさんいるんだから、私に構うことはないって思ってたのかも。


私:ピントを合わせるように、君はいつでも私に合わせてくれた。歩み寄ってくれた。
私:そうやって君に構ってもらえることが、ちょっと嬉しかった。
私:それで、私から一緒に遊ぼうって誘ったりするようになったんだ。


私:いつも君は楽しそうに笑っていた。誰とでも親しげに話す君の声を、私はそっと聞いていた。
私:君は正面から向かい合って、相手の言葉に耳を傾ける。相手の心の中に躊躇なく入り込んでいく。
私:だから、君と話す人は皆安心して楽しそうに話していた。


私:バカみたいに正直で真面目な君は、すぐに人気者になった。
私:それを見て、君は私がいなくてもやっていけるんだなって思ったんだ。
私:そこには嬉しい気持ちと、少し寂しい気持ちがあった。


私:ある日、君は私のことが一番だって言ってくれた。
私:私はその言葉を受け取ろうとしなかった。疑ってしまったの。
私:だって私はそんな言葉を言われたことはなかったから。
私:私はそんなことを言われるような良い人間ではないから。


私:すると君は、何度も何度も、一番だって言ってくれた。私と一緒にいてくれた。
私:だから私は、君のその言葉を信じることにした。
私:私も…君のことを大切に思うようになっていった。
私:君と一緒にいられる時間がどんどん楽しくなっていったんだ。


私:でもね、最近ちょっと気になることがあるの。
私:君はとてもがんばり屋さんだよね。
私:それは君のいいところだと思うんだけど、頑張り過ぎちゃうところがあるよね。


私:いつも忙しそうにしてる。大変そうにしてる。
私:君は「好きでやってることだから」「他の皆はもっと頑張っているから」って言うけれど、君がたまに疲れた様子でいるのを見ると、やりきれなくなる。


私:こう思ってるのは、私だけじゃない。きっと他の人も思ってる。
私:それは、いつも君が頑張っていることを知っているから。君のことが大切だから。
私:だから、お願い。あまり無茶はしないで。
私:自分のことを、もっと大切にして。


私:連絡をとっても君は「迷惑をかけられないから」って言って何も言わないけれど。
私:たまには頼ってきてもいいんだよ。甘えたっていいんだよ。
私:君を受け止めるくらいの器の大きさは、私にだってあるんだからね。


私:からかいでも冗談でもお世辞でもなく、君のためにできることなら、君の役に立てるなら、何でもしてあげたいんだ。
私:だから、こっちへ来てちょっと休んでみない?


私:楽な姿勢で聞いてね。目を閉じて。深呼吸して。……落ち着いたかな?
私:恥ずかしいから、こういうことはあまり言わないけど…今日は特別だよ?


私:もう十分、君は頑張ったよ。


私:よく頑張ったね。偉いよ。…お疲れ様。


私:ろくにお話しもお芝居もできない私のそばにいてくれて、ありがとう。
私:君がよければ、もう少しだけ、そばにいてくれないかな。
私:だって、君が私のことを慕っているのと同じくらいには、私も君のことを慕っているんだから。
私:…え?もっとはっきり言ってくれないと分からない?


私:しかたないなあ。ちょっと耳貸して。
私:私も、皆も、君のこと…
私:…大好きだよ。


私:苦しいことも楽しいこともたくさんあると思うけど、
私:ここにいるときだけでも、君が安心して笑顔でいられますように。
私:ところで、最後に。
私:各段落の一文字目を繋げて読んでみると、どうなると思う?


  《終》

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