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耐え難いお隣さん(備忘録12)

1ヶ月以上も入院していると同部屋で退院していく人もいたり他の部屋から移動してくる人もいたり。隣のベッドのおじいさんが他の部屋に移っていかれ入れ替わりに来られたSさんは膝の半月板損傷のようでまだ手術してさほど時間がたってないらしい。移って来られてからずっと「痛い、痛い
」を繰り返す。日中はもとより夜中まで。よっぽど痛いんだろう。しばらくすると今度は「帰りたい」が加わってきた。ときどき泣きが入りだす。看護師さんや療法士さんに対してだけじゃなく、もうずっとひとりごとが続く。とても厄介だ。そんな日が数日も続いた。いいおじさんなのに小学生低学年か!と心の中でつっこむしかない。話しやすい作業療法士(OT)さんにそのことを投げてみる。やはりずっとそんな感じらしい。独り言は止まらなかった。
ある夜、消灯時間ほともかく時計の針がてっぺんを超えてもつづき、ついに僕は耐えられなくなり、意を決してナースステーションへ泣きつく。何回も担当されている看護師Tさんが夜勤だった。それまでもSさんをなだめたりして対応はされてたのだが、ここ数日のSさん様子を伝えて対処してもらうよう話す。Tさんはすぐにグズグズ独り言を言っているSさんのもとへ。話される内容はいつもと同じことだが、現状では帰るわけにはいかないことを何度も何度も説明。患部に取り付けてあるコルセットや主治医の方針も丁寧にコンコンと説明していた。Sさん、やっと静かになった。すこしだけ眠れた。Sさんは爆睡で大いびき。このまま落ち着いてくれ、と願うのみだった。

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