どんくさシスターズ誕生会

8歳上の女友達がいる。
月1、月2、そのくらいのペースで会っている。
大げさに言えば親友といったポジションだ。
ふたりとも7月生まれ。
今日はふたりきりの誕生会を開いた。

誕生会を開いた、というのは言い過ぎた。
ただ、いつも通りドトールで待ち合わせてコーヒーを飲んだ。
いつもと違うことは、合流したときお互い
「お誕生日おめでとうございます」
を言い合ったこと、コーヒーに加えてケーキも食べたことくらいだろうか。
「とりこさんにはいつもなにかもらっているから」
と言って友達がケーキをおごってくれた。 
そして、いとこが送ってくれたけど肌が弱くて使えない、と言って、ロクシタンのシャンプー、コンディショナー、シャワージェルのミニボトルセットをくれた。
「うわあ!いいんですか?
ロクシタンって高いんですよ!
ブランドなんですよ!」
と言ったけれど、彼女はロクシタンを知らなかった。
肌が弱くて使えないのならば、ありがたくいただいておこう、と思い受け取った。
その後わたしの用事でセリア、手芸店をのぞき、用事が済むとショッピングモールに移動した。

「今日の服装いいですよ!
ウエストが細くてスタイルがいいから、そういうタイトな服を着てると若く見えます」
ケーキをおごってもらったからというわけではないけれど、今日のわたしは友達を褒めちぎった。
ほんとうにそう思っていた。
友達はスレンダーな体型をしている。
いつものダボっとしたTシャツを着ているときに比べて、今日のややタイトなTシャツを着た彼女は、数段カッコよく見えた。
後ろ姿のウエストラインがシュッとしていた。
58歳でこのウエストラインはすごい、わたしも見習わなくては、そう思った。
会っている間なんどもなんども彼女のスタイルを褒めた。

「とりこさん、お腹すいてない?」
友達が言った。
「そんなでもないです。
今日待ち合わせ前にコンビニの30円引きのおにぎりふたつ食べたんです」 
わたしは答えた。
それは、ほんとうのことだった。
けれど、いつものわたしなら、そう聞かれたら友達とごはんを食べにどこかのお店に入る。
今日はちょっとお金の遣いすぎを気にしていたのだ。
「お茶でもして帰ろうか」
友達が言い、わたしも同意した。
けれどふたりが飲んだのは、お茶ではなくお酒だった。

ショッピングモールの地下1Fに、ちょい飲みセットというメニューを出しているお店がある。
セットの内容は、ドリンク1杯、枝豆、お刺身、大きなアジフライ、それで1100円。
前にもふたりで来たことがあるお店だ。
友達がそのお店のメニューをしげしげとながめていたから、またそこに入った。
お酒なら飲もう!
そう思った。
ふだんお酒を飲むことはない。
だからこそ、たまに飲むお酒は大好きだ。
友達はちょい飲みセットをノンアルコールビールで、わたしは単品でシークワーサーサワーを頼んだ。

「グループホームの食事が、3日に1回くらい揚げ物なの。
野菜も少なくて。
わたし肌荒れしちゃった」
友達はなんども、野菜が食べたい、揚げ物が多すぎる、とこぼした。
ちょい飲みセットの大きなアジフライがきたときも、彼女は言った。
「とりこさん、これ食べていいですよ。
わたしはほんとうに、揚げ物ばかり食べているから」
遠慮すべきだったのかも知れない。
けれど素直にいただいた。
シークヮーサーサワーで酔っていた。
つまみもほしかった。
アジフライは熱々だった。
ああ、美味い!
そう思った。

今日は特に友達と、なにが盛り上がったわけでもなかった。
それでも、慣れた相手と飲むお酒は美味しかった。
以前来たときは、お酒2杯でちょうどよかった。
けれど今日は、お酒1杯でちょうどよかった。
いい感じに酔って、飲みすぎてもいない。
「やっぱりたまに飲むと楽しいですね」
わたしは飲みながらなんどもなんどもそう言った。
お会計のとき、自分の飲んだシークヮーサーサワーの420円を支払い、それに続いてお会計をしている友達を見ていると、彼女はレジのお兄さんに
「お兄さんモテるでしょう」
なんてちょっかいを出していた。
彼女もノンアルコールビールでご機嫌だったのだろう。

「また飲みに来ましょうね」
別れ際に、また言った。
「うん、また飲みましょう!」
友達は答えた。
たまに一緒にちょっぴりお酒を飲める友達ってすごくいい、と思った。
次回から、事前に予算をきっちり組んで、ちょい飲みセットを頼める1100円をちゃんと取っとこう。
来月もしくは再来月、またちょい飲みセットで飲み会をするのが楽しみだ。




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