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オールラウンダーと呼ばれたい

障害者の作業所で働いている。
そこだって立派な職場だ。
日々みんなの中で、コツコツと作業にいそしんでいる。
わたしの通う作業所の看板商品は、本真珠のネックレスだ。
オールノットという本格的な技術で、本真珠を糸で組み上げ、ネックレスに仕上げる。
ネックレス1本、数万から数十万する。
華やかでビッグな仕事だ。
けれど、作業所での作業は、そんな華やかでビッグな仕事だけではない。
今日頼まれたのは、工場からの委託品の作業だった。
クギが欠けていないかひとつひとつチェックする、クギをひとつひとつ部品に打ち込む、部品を50個まとめて袋詰めする、そんな作業だ。
ひとつの作業に数銭。
地味な作業だ。
けれど委託品をナメてはいけない。
作業所の収入を支えているのは、そんな、地味な委託品の作業なのだ。
雨のせいか、今日はなかなかやる気が出なかった。
指導員さんに言ってみた。
「楽な作業がしたいんです。みかんの皮をむくとか、おやつを食べるとか、そんな作業がしたいんです。」
指導員さんはピシャリと答えた。
「却下です。」
そこで、コツコツと部品を50個数えて袋詰めする、その作業に没頭することにした。
だんだん楽しくなってきた。
わたしは思った。
「いい仕事をしよう。
早くて正確、そんな仕事をしよう。」
そうなのだ。
ネックレス作りという華やかな表舞台に立つことは、確かに楽しいし、やりがいがある。
けれど、必要に応じて委託品という裏方に回れる、裏方に回りいい仕事をする、それができる人材は意外と頼りにされる。
ひとつ数銭、そんな仕事でも、社会に必要とされている大切な仕事だ。
華やかな仕事にしか興味ない、地味な仕事なんてしたくない、なんて、そんな人間にはなりたくない。
どの作業をまかせても大丈夫、そう言われる人材を目指そうと思う。
そしていつか、オールラウンダーと呼ばれたい。





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