食品メーカーの研究職が語る最近の食品事情②

加工によって諸経費は更に積み重なる

ハウス食品様の「完熟トマトのミートソース4袋入り」という商品を用いて食品の加工にかかるコストなどについてもう少し掘り下げてみようと思う。食べ応えがあり、パスタにたっぷりかけると非常に美味しい。


原材料名を見ると、「トマトペースト(アメリカ製造)、牛肉、みそ、ガーリックペースト、コーングリッツ、乾燥にんじん、食塩、乾燥玉ねぎ、砂糖・ぶどう糖果糖液糖、牛脂豚脂混合油、香辛料、酵母エキス加工品/増粘剤(加工デンプン)、調味料(アミノ酸等)、酸味料、乳化剤、着色料(パプリカ色素、カラメル)、香料、甘味料(スクラロース)、(一部に小麦・牛肉・大豆・豚肉を含む)」とある。
原材料名表示は、配合率の多い順に記載され、「/」の後に添加物と呼ばれる物が記載される。1番先頭の原料には製造国や原産国を記載することになっている。末尾には特定原材料等の28品目のアレルゲンが記載されている。(各原材料の隣に該当するアレルゲンを記載する場合もある)

先頭を見ると「トマトペースト(アメリカ製造)」と記載されている。
「ハウス食品がトマトが入ったミートソースを作っている」と聞くと「ハウスさんがトマトとかひき肉とかを買ってきてミートソースにしてるのかなあ」と想像する方もいらっしゃるかもしれないが、実際にはきっとそんなことはない。トマトのヘタを綺麗に取り、綺麗に洗い、ほぼほぼ液体状のペーストにして、販売するという食品加工メーカーが存在する。もしかしたらペーストにするメーカーはペーストにしているだけで、すでにヘタや汚れは取れたトマトを買ってるかもしれない。

最初の原材料の「トマトペースト」だけを見ても最低でも トマト農家→トマトペーストメーカー→ハウス食品→(食品問屋)→(スーパーなどの量販店) が介在し、それぞれの企業がそれぞれの存続のため、利益を乗せる。
加えてそれぞれの間で人件費、包材費、製造設備費、物流費などなどがかかる。トマトペーストの包材費だけ見ても、トマトをトマトペーストメーカーに運ぶ段ボールが存在し、トマトペーストを詰める袋が存在し、その袋が入った段ボールなどが存在すると想像できる。

燃料の値段が上がればトイレットペーパーなどの石油製品の値段が上がる‼︎というのはなんとなくイメージしやすいが、食品だって加工の加工を繰り返しながら高い燃料で物を運ばなくてはいけないから、どんどん値段が上がってしまう。

こういう話をしてしまうと「加工」とは凄い悪者のように感じてしまうが実際はもちろんそうではない。
そもそも「加工」とは長く保存したり、どこでも色んなものが食べれたりすることを人類が望んだ結果著しく発展した技術なのだ。加工を否定したければ地産地消を貫けばいいのだが、なかなかそうもいかない人が多いだろう。
お金をかければ一次産業をしない人でも便利に簡単に美味しいものにアクセスできるような社会構造になった現代では、包材費や物流費が上がってしまえばその影響をモロに受けてしまうのもやむなし、ということになってしまう。

特に値上げが顕著なここ数年

食品の値上げは今に始まったことではないが、ここ数年の値上げはやはり驚きを隠せないレベルになっている。
次回の記事ではここ数年、なぜここまで異常な値上げが起こっているのか、その原因を紹介したいと思う。
ざっくり言うと世界人口の急激な増加、天候不良の影響などのずっとずっと昔からある原因に加えて、ここ十数年で食糧と燃料が競合し出していること、更に更にコロナ禍とロシア・ウクライナ問題が拍車をかけているといった具合だ。
中国の暗躍と日本の酷い円安の影響も痛い。

それではまた次回。

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