(番外編)石丸市長の安芸高田市の4年間・公人としてどうなのか

 私の石丸市長歴は、選挙に出る当初からである。ブームになって、にわか石丸ファンになった人とは歴史が違う。私の関心は、ポピュリズムであるが、それをめぐって、石丸市長の政策を中心に、何回か書いてきた。
 今回、しばらくぶりにnoteを書きはじめたのは、改革派とされる議員さんが、応援しているのに驚いたからである。自由とか民主主義とか言っているのに、それと真逆な石丸市長を応援する心情は何なのか。
 劣化などという評論家的言説で済ましてはいけないのだろう。なぜならば、議員さんの行動は、私たちや私たちの子どもたちの未来と密接に関わるからである。
 今回は、東京都知事に出るということなので、東京都民の参考のために、安芸高田市の4年間を紹介しようと思う。安芸高田市の人ならば。多くが知っていることであるが、知らない人もいるかもしれないので、念のために紹介したいと思う。
 ただ、ここに書いたのは、ほんの一端である。なにせ、私の石丸市長歴は、市長に出る当初からだからである。 
 今回のサブタイトルは、「公人としてどうなのか」である。

1.「議員から恫喝された」とXに何度も投稿。しかし、裁判では「恫喝そのものがなかった」と否定される

 守旧派と戦うという触れ込みの石丸市長であるが、自作自演だったと裁判で明らかになってしまった。

■事案 
 議会の全員協議会の場で、議員から「議会を敵に回なら政策が通らなくなる」等と恫喝されたとⅩに投稿し、それ以降も同様の内容の投稿を繰り返した。これが訴訟になった。

■完全敗訴判決
 令和5年12月26日の判決では、石丸市長側(国家賠償法の適用を受けたので、石丸市長を代表とする安芸高田市)の完全敗訴となった。
 主文は、「被告安芸高田市は、原告に対し、33万円及びこれに対する令和3年9月28日から支払済みまで年3パーセントの割合による金員を支払え」である。

■「恫喝」誰も聞いていない、録音もない
 裁判の証拠調べでは、市長派の議員も含め、「恫喝は誰も聞いていない」と証言した。
 議会なので録音テープがあるが、そこには恫喝はなかった。むしろ、穏やかな雰囲気だった。
 あるのは、市長お手製の「恫喝あった」という手書きメモだけ。
 これではとても裁判にならない。

■控訴
 市長は第一審で負けたが、専決処分で控訴を決めた(本来は、控訴は議会の議決が必要)。
 令和6年4月24日に控訴審があり、即日結審した。新たな証拠も出せていないので、審理しても無駄ということである。
 今度の7月3日に判決がある。即日結審なので、どうみても結論は動かないだろう。 

■損害賠償や弁護士費用は安芸高田市(市民の税金)
 大事な点は、損害賠償額や控訴審のための多額な弁護士使用は、安芸高田市持ち(つまり市民の税金)である。
 裁判は権利であるので自由であるが、町にお金がないと言っているのに、町のお金を使っている。これでは安芸高田市民が怒るのは無理もない。

■確定したら、市長への求償が争点
 裁判が確定したら、今度は、安芸高田市から市長への求償権の行使が問題になる(国家賠償法第1条2項)。ただ、そのころは、安芸高田市長を辞めていなくなっているので、どうするのだろう。

2.選挙ポスター代金の未払いが続いている

 これは市民を痛めつけて、どうするのかという事案である。

■事案
 急遽、選挙に出ることのなり、選挙用のポスターをつくった。その代金のうち、公費負担部分からはみ出た自己負担分の支払いをめぐる裁判である。
 業者は、かかった費用をきちんと払ってほしいといい、市長は、公費負担部分を超える部分は支払わないと争った民事事件である。一審、控訴審とも石丸市長の完全敗訴となった。

■背景
 急遽の選挙で、公示までに間に合わせるための10日間での特急仕事になった。ちょうど海の日の4連休も入る。業者は休日出勤でやるしかない。
 選挙のポスターは簡単ではない。写真ひとつとっても、何回も撮り直しをし、好印象になるように、修正もするのだろう。手間もかかる。
 ポスターやビラの制作費、配送したチャーター代、休日出勤までした労務費等を払ってほしいという訴えである。

■第1審判決(令和5年5月30日)
 石丸市長の主張は、「公費負担の上限である34万円余りを報酬額とする合意があった」である。
 しかし、判決では、
 ・営利企業が赤字になることをいとわずに業務を請け負う理由は乏しい。
 ・報酬額は製造原価、業務量など固有の事情を基に算出されるべきだ。
として、業務内容に見合う額という共通認識があったと認めるのが相当であるとした。
 業者側が示した見積書の額をもとに、残りの報酬として差額にあたる72万円余りを支払うように命じた。
 これに対して石丸市長は控訴する。

■控訴審判決(令和5年12月13日)
 裁判官は、印刷会社が、市長から、ポスター等の印刷を依頼されてそれを納品するまでの経緯を、両当事者の供述やその間のメールの遣り取り、納品書(の記載内容)などの証拠をつぶさに検討して
 ・印刷会社が「公費負担の上限額34万円余りを代金とする」意思を示していた(市長の主張)とは認め難い
 ・契約の確定から納品まで極めて短期間だった上、両者の間で以前に同様の取引が行われたことはなく、代金を決める際に公費負担額を重視すべきとは言えない
として、市長に残額72万円余りの支払いを命じた1審判決を支持して、市長の控訴を棄却した。

■最高裁へ上告(令和5年12月15日)
 石丸市長は、一審判決を支持した控訴審判決を不服として、令和5年12月15日に最高裁判所に上告の手続を行った。
 最高裁では、憲法違反、重大な訴訟手続の違反、判例違反、重大な事実誤認もなければ、相手にされないので、結局、棄却になると思われる。

■後づけの理由 
 石丸市長は、裁判を続ける理由を「公費負担のあり方を問う」ためとしている。その意味はよくわからないが、選挙ポスターが高すぎるということらしい。
 でも、問いたかったら、自分が安いところに頼んで、「ほら、こんなに安くできる」と示せばよいのではなかったのか。

■大事なのは公人としてどうなのか
 業者だって、仕事をしたお金で、職員の給料や協力会社へ経費を払わないといけない。
 市民に寄り添うのが市長の役割なのに、こんな理由で、支払いを渋られたら業者もたまったもんでない。
 最高裁までということで、業者は、さらに費用を回収できない期間が延びてしまった。

■相手側の名前をさらす

 それだけではなくて、石丸市長は、自分のXで業者名を明かすことをやっている。
 実際、それに呼応した石丸アノンたちが、「選挙に巣食う利権業者、ぼったくり業者」と、業者に誹謗中傷を繰り返すことになった。
 ここまでくると、説明するのが、いやになってくる。

3.台風が来るというのに(災害対策本部が立ち上がるというのに)、遠く千葉まで遊び(トライアスロン)に行く

 公人という意識なしに市長になってしまった。

■災害本部長が、大型台風がくるというのに、千葉まで遊びに行く
 この4年間で、一番、驚いたのが、大型台風が来るということで、災害対策本部が立ち上がるというのに、本部長になる市長が、ひとり広島から、はるか千葉県の九十九里浜へ、トライアスロンをやりに行ったということである。
 こんなことがあるんだと、さすがにびっくりした。

■最強クラスの台風が来る
 令和4年9月18日の朝の新聞報道では、17日夜には中心気圧は910へストパスカル、最大風速55メートル、瞬間最大風速75メートルの「最強クラスの台風の恐れ」とされていて、19日の夕方には広島県を直撃すると予想だった。

■災害対策本部が立ち上がる
 そこで、安芸高田市では、18日には災害対策本部を設置して、避難所を開設した。地元の消防団の人たちは、19日0時には屯所に詰め、警戒体制に入った。
 最悪の事態を想定し、慎重を期して準備するのが災害対策の基本である。
 ところが、災害対策本部である市長は、大型台風が来るというのに、18日に開催された「九十九里トライアスロン」出場のため、はるか千葉まで出かけてしまった。

■幸い大きな被害にならなかった
 ただ、台風14号、幸いにも大きな災害もなく、19日には抜けていったので、安芸高田市には、大きな被害が出なかったから、それはよかったと思う。

■千葉県の森田知事を思い出した
 この話を聞いて、千葉県の森田知事を思い出した。視察の途中に、自宅の様子を見に行って、それで散々たたかれ、結局、選挙に出れなくなった。
 今回は、自宅の様子を見にいくどころの話ではなく、はるか千葉県に遊びに行ってしまったのである。

■離れていても携帯やインターネットがある
 石丸市長の弁は、準備はきちんとやって広島を離れた。
 必要な指示が出せる体制をとっている。今はどこにいても連絡はつく。携帯電話やインターネット、動画の共有だってできるということである。

■能登半島地震や東日本の災害では
 災害は、想定を超え、いつどこで、どんな被害になるか分からない。
 災害時には、新幹線や飛行機はすぐに止まる。高速道路だって通行止めになる。実際、能登半島では、あちこちで孤立した。千葉から広島に戻れない場合もあることを考えなかったのか。
 災害時、ネットがつながらないというのは、いやというほど体験している。

■災害時のリーダーの心得
・緊急事態が発生した場合(または発生が予想される場合)は、最悪の事態を想定して、一刻も早く本庁舎に駆けつける。
・市町村長は、災害等が予想される場合には、即座に本庁舎に駆けつけることが出来るよう待機する。
 公人のイロハであるし、どこの首長も普通にやっていることである。

■石丸ファンの人からは、上がいなくても動くのが組織だと言われる
 
石丸ファンは、準備したからいいんだとか、被害がなかったからいいんだという。「組織というものが分かっていない」とも言われた。
 本当にそう思っているのだろうか。要するに、職員総出で、まさかにそなえているときに、社長はひとりゴルフに行っちゃつてもいいということである。
 老婆心ながら私は、忠告する。「そういう会社はすぐにつぶれるか、ブラックだから、そんな組織にいるとしたら、早く転職した方がいいですよ」と。

■これでは安芸高田市の市民からノーと言われるのは無理もない
 いずれにしても、この顚末を聞いた安芸高田市の人たちは、がっくりきたろう。市民の命や財産を守るのがリーダー(市長)の役割ではないか。「みんなのことより、自分の趣味を優先するのか」。ひどく落胆したのではないか。

4.専決処分の多用

 地方自治の基本が理解できない。

 無印良品でも、控訴の申立てでも、議会の議決を必要とするのが、地方自治法の決まりである。重要事項を決めるのは議会の役割というのが地方自治の原則である。
 専決処分は、どうしようもないとき(たとえば津波で議会が流された)にやる例外中の例外である。
 これについては、すでに書いた。
安芸高田市石丸市長を応援する人たち・ポピュリズムの時代(1)|右往左往 (note.com)

 議員で石丸市長を応援する人がいるが、議員としての自分の役割を否定されるような話である。どのように考えているのだろうか。

2024年5月20日 投稿、一部訂正
 


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