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幻に終わった那須川天心vs吉成名高について

 先日(2024年2月12日)、RWS JAPAN(ラジャダムナンワールドシリーズジャパン)が後楽園ホールで開催されました。
 メインイベントはラジャダムナンスタジアム認定スーパーフライ級統一王座決定戦。

 吉成名高は正規王者プレーオプラーオ・ペップラオファーから1Rいきなりダウンを奪い、その後も危なげなく、フルマーク判定の完勝でラジャダムナン3階級制覇を達成しました。

 吉成名高が試合をするとSNS上で那須川天心の名前が飛び交うのは恒例行事の1つです。
 仮にRIZINでのあの出来事がなかったとしても、恒例行事自体は無くなっていなかったのかなとは思いますけれど、行事の中身はもう少し穏やかなものだったのかもしれないですね。

 そのRIZINでのあの出来事(幻に終わった那須川天心vs吉成名高)について雑なお話を少々と。

 独断と偏見と暴言と戯言と妄想です。妄想多めです。
 悪しからず。
 

 


榊原代表



 2021年の大晦日、那須川天心のRIZIN引退試合で那須川天心vs吉成名高が組まれようとしていました。
 しかし、条件面(ルールと契約体重)で折り合いがつかずこの試合は幻に。
 そのことについて、榊原代表が吉成サイド(加えてムエタイ界にも)に対して辛辣なコメントをします。
※この辺りの一連の流れを仮に知らない方がいたら「榊原 天心 吉成」でググってみてください。

 当たり前の話ですが、どちらの選手・選手サイドも悪くありません。

 RIZIN及び榊原代表に非があると考えるのがごくごく普通だと思います。
 榊原代表は日本格闘技史上間違いなくナンバー1のプロデューサーだとは思いますが、その反面、こいつマジでいい加減にしろよなと罵りたくなるようなことが過去にはちょいちょいありました。
 ですが、僕はこの時の発言に関しては、まあわからないでもないかなって感じでした。
 決して正しかったことだとは思いませんが。

 吉成名高は2018年12月9日にラジャダムナンスタジアムミニフライ級王座を獲得します。
 そして、翌年の2019年4月14日にルンピニースタジアムミニフライ級王座も獲得します。ルンピニー王座を獲得したのは日本人で吉成が初めてです。

 ですが、世間一般はおろか格闘技ファンの間でも吉成の知名度はそれほど高くなかったと思います。
 あくまでムエタイ・キックファンの間だけの限定的なものだった記憶です。
 その吉成の知名度が飛躍的に向上したのはやはりRIZINに出場したからです。

 なぜ吉成名高がRIZINに出場出来たか。
 日本人史上初の2大殿堂王者だからという理由だけでRIZINに出場出来たわけじゃないですよ。

 那須川天心がRIZINにいたからです。

 どれだけ吉成名高が日本ムエタイ界において、過去に類を見ない実績を残してきた選手(これからも残すであろう)だとしても、吉成のルールで継続的にRIZINに出場させるメリットなんてRIZIN側にないですからね。
 那須川天心もRIZINデビュー戦はMMAだったし。

 ようはRIZINは吉成名高に投資をしたわけですよ。
 那須川天心vs吉成名高を組むために。

 那須川天心vs吉成名高の勝敗結果がどんな形になろうと、那須川天心が去った後の席に吉成を座らせようとしていたかもしれない(まだこの時はフジテレビと繋がっていましたし、地上波存続の為にも吉成には価値があったでしょう)
 
 ファイトマネー等は知る由もありませんが、扱いはかなりの高待遇だったと思います。

 ですが、投資は回収できませんでした。

 投資が回収できなかったことなんて、RIZINにおいて沢山あったことだけど(これからもあるでしょう)、今回はさすがに何かは言いたくなる気持ちもわからんでもない。
 投資が失敗するたびに文句を言っていたらキリがないですけどね。

 勿論、それはあくまでも興行側(RIZINサイド)の一方的な都合です。

 選手側(吉成サイド)からしたら、コロナ渦でタイで試合をするのが難しかったことや、日本最大の格闘技団体で試合することにメリットがあるから出場しただけであって、那須川天心と戦うためにRIZINに出場していたわけではないでしょう。
 
 もっと深く妄想を膨らますと、このときの榊原発言には天心サイドに対する気遣いもあるのかなと。
 天心vs武尊という世紀のビッグマッチが正式決定した後の発言ですしね(天心vs吉成が流れたときには天心vs武尊はまだ決定していないですが)
 ビジネスにおいてこの時期最大限に配慮しなければならないのは天心サイドなので。
 

 結局、この2ヶ月後榊原代表は吉成に直接謝罪(辛辣発言の翌日には動画で謝罪)

 吉成名高はこの後、RIZIN LANDMARK vol.2、超RIZINの2大会に出場しました。

 交渉事って、ときには本音をぶつけたり、怒らせたり、相手を袋小路に追い詰めたり、一旦険悪になった過程を経てからまとまる場合もあります(あくまでときには)

 榊原代表の交渉の仕方がどういったものかは全く知らないですけど、少なくともこの人の劇場は、発言、謝罪、オファー等全てひっくるめて考えなければいけないので、エンドクレジットが流れたからといって席を立つと大事なシーンを見逃すことになるかもしれませんね。
 


那須川天心


 僕はそもそも、吉成が天心に対戦要求的なことをしていたときから、割と冷ややかに見ていたので(ルールも体重も違い過ぎる)、試合が流れたことに対しては何とも思わなかったです。

 余談ですが、僕の中で幻に終わった試合の中で、最も実現して欲しかったのはヒクソン・グレイシーvs桜庭和志です。断トツです。

 天心絡みでいったら、那須川天心vs武居由樹はキックで見てみたかったですね。契約体重でケチがつかない同階級だったし。
 アマでは確か天心の3勝1分だったと思いますが、プロだとどうなるかわからないですし。
 天心vs武居の試合はキックでは見られなくなってしまいましたが、もしかしたらボクシングでは見られるかもしれません。
 仮に実現したら佐藤大輔に煽りVを作ってもらいたい(まず難しいだろうけれど)
 武居の入場曲はいつものI Was Born To Love Youではなく新生K-1のテーマにして、未だにTHEMATCHの恨みで発狂してる信者達を巻き込んだら、それなりに盛り上がりそうですね。

 大分話が逸れました。
 閑話休題。

 ただ、例えRIZIN側から言わされてたにせよ、RIZIN以外でも天心戦について吉成は言及していたし、天心のキック引退は既に決定事項なのだから、最後のチャンスは大晦日のRIZINしかないわけなので、吉成に対してある程度の非難はいくだろうなと思っていました。
 SNSってそういうところだし。
 吉成を叩く連中はクズで馬鹿だということは大前提としてね。

 更には那須川天心も叩かれました。
 これはさすがに意味が分からなかった。いくらSNSってそういうところだとしても。
 
 これは再三言っていることだけど、那須川天心のことが嫌いだっていうのは理解できるんですよ。
 それはもうめちゃくちゃ理解できます。

 僕は天心のことが好きだけど、それはたまたまこの世界線だけかもしれなくて、別の平行世界では天心のことを蛇蝎の如く嫌っている自分もいるだろうなと思っています。しかも割と隣の平行世界だったりして。

 だけど、このことに関してはさすがに天心を叩く理由が全くないでしょ。
 
 吉成サイドが出した条件の53.5kgって天心がプロになって一度も落としたことがない契約体重ですよ。受けるわけがない。
 そもそも、天心自体は吉成戦に全く興味を示してなかったのに。

 もう一つの55kg肘有に関してですが、天心はプロになって肘有の試合を4試合していますけれど(全てが旧KNOCKOUT)、最後に肘有の試合をしたのは2018年2月のスアキム戦です。
 そこから約4年。やるわけないじゃん。ボクシング転向も決まっているのに。
 
 MMAルールも肘有ルールも天心の挑戦ですよね。あくまで。
 自身とRISEをメジャーにするための。


吉成名高


 天心サイドからするとあり得ない条件ですが、吉成サイドからしたらこの条件が妥協ギリギリラインだったのでしょう(MIXも提案していたらしい)
 肘有にさえしてくれれば、55kgという圧倒的不利な契約体重でも勝機を見出していたっていうのにはちょっと震えますけどね。

 実際、SNS上では肘有だったら55kgでも勝っていた、肘有だったら負けるから天心は逃げたっていう意見をチラホラ見ます。
 勝敗はどうなったかわからないですが、これで逃げたって言われるのはさすがに気の毒ですね。
 今の吉成名高に、契約体重はそちらの適正でいいからルールは肘無でと試合をオファーして断られたら、吉成は肘無じゃ負けるから肘無から逃げたっていう奴いたらヤバいでしょ。

 実際の話、どこまで吉成名高が天心戦に向けて真剣に動いていたかは分かりません。
 ただRIZINに参戦してから、本来の適正よりは上の契約体重で試合をしていっていたとは思います。2021年10月のRIZINでは53.5kg契約、12月のBOMでは55.35kg契約でしたし。
 ですが、思った以上に体が大きくならなかったんでしょう。
 こればっかりは仕方がないですね。

 あとは、天心は53kg付近になら落とそうと思えば落とせる的な発言は割としていましたし、そのことを吉成サイドはピュアにも信じていたかもしれない。


 ↑は2021年6月13日に開催されたRIZIN28の対戦相手が全く決まらないことに対しての天心のtweetです。
 

 ↑は断られた相手が武尊ではないという補足説明のためにオファーした条件をtweetしたものだと思います。

 その後、吉成はこのtweetをするのですが、吉成サイドは、いわゆる吉成から天心に対戦要求したと言われるとき(2020年の大晦日)から一貫して55kgなら肘有、肘無なら53.5kgという条件だったら戦うという話だったらしいです。
 それならこのtweetした時点でそう明言しても良かったとも思いますけどね。
 このときに「55kg RISEルール」だったオファーが、大晦日に突如変わるとは思えないし。
 このtweetだと残り半年で体が出来れば対戦しますとも読み取れちゃうしね(たとえ、挑みたい気持ちはあるって婉曲に書いていたとしても)

 まあ、でもそれはいろいろと難しいかな。

 ちょっとだけアホなことを言わせてもらうと、どうせだったら、大晦日の交渉の際に53.5kg肘無とかは選択肢に入れないで、肘有だったら契約体重は何キロでもいいとか言って欲しかったですね。
 その方が肘有ルールに対するこだわりと凄みが増す。
 何にしても断られるのは分かり切っているんだしね。
 あくまでアホな僕の意見です。

 那須川天心は、肘有ルールを始め、MMAルール、メイウェザーとのボクシングエキシ等、様々な挑戦をしてきました。その様々な挑戦の結果が、それまで新生K-1とその他の団体という日本キック界の勢力図を変え、RISEを国内ナンバー2の団体に押し上げ、その様々な挑戦(特に無謀とも言えるメイウェザー戦)によって武尊に対しての立場をBサイドからAサイドに変えました。

 でも、これはあくまで天心が作った道です。

 吉成名高が同じ道を歩む必要は全くない。
 吉成名高は自分が作った道を歩いていけばいい。

 吉成名高は日本ムエタイ界の救世主であり、最後の希望の光です。

 旧KNOCKOUTに参戦したころの那須川天心も、ムエタイとは言いませんが、純キック(肘有キック)の希望の光と期待されていました。
 が、彼は純キックにとっては、ただの通りすがりでちょっとふり向いてみただけの異邦人でした。
 それだけならばまだしも那須川天心の影響や、RISEが大きくなることで、純キック側からの人材流出がひどいことになりました。
 志朗、江幡兄弟、大﨑兄弟、安本晴翔、花岡竜等、スター候補がどんどん流出していきました。

 那須川天心の影響力は凄まじいものがあります。良くも悪くも。
 その影響力が全ての業界にとってプラスなわけではないということです。

 吉成名高も自分がある程度実力を発揮できる条件なら、当然、那須川天心と戦いたかったでしょう。それは格闘家なら自然なことだと思います。
 ただ、試合が実現するとしたら55kg契約肘無ルールでしかまずありえません。
 それは吉成にとっては厳しい結果になった可能性が高い。 
 
 やらなくて良かったんじゃないですかね。
 
 そのことによって、本来進むべき道が逸れたかもしれない。
 肘無キックにリベンジしなければいけないとかなったりして、肘無・肘有を行ったり来たりしてフォームを崩したりとかね。例えばですけれど。
 当然、やったことによってリターンはあっただろうけれど、やらないことのリターンの方が大きいような気がします。

 勿論、見たいですよ。吉成の挑戦も。
 叶うなら吉成のクローンを作って

 吉成弐高→肘無キック
 吉成禰高→ボクシング
 吉成乃高→MMA

 とか超見たいですよ。
 あれだけの才能なんだもん。
 全部、成功しそうだし。

 ただ、それはまだ今じゃないでしょう。

 (了)

 
 

 



 

 


 




 

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