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神田川の秘密 スチュワーデス殺人事件の現場 宮下橋
十六の(3)スチュワーデス殺人事件の現場、宮下橋
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事件のあった時の橋は木製の橋
橋の上流にはH型の鉄パイルが善福寺川に打ち込まれ、川は分厚い鉄板で全面を覆い隠されていた。ここも工事中だった。「八幡橋及び大松橋(オオマツハシ)PC桁製作・架設工事」というのがその名前で、発注者は東京都建設局 第三建設事務所 第二課。下高井戸調節池工事と同じ部署が発注者になっているが、連絡先電話番号は別だった。同じ課でもデスクが違うのかもしれない。
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ここの看板には工事費が表記されていて、7億1,388万円。受注業者は(株)安部日鋼工業。工期は令和2年3月16日~令和2年11月27日となっていて、工期延長の看板が随所にあった。地方自治体から発注される土木工事は建設計画と予算があり、入札を経て執行されていくのが通常の流れではないかと川旅老人は思っている。この看板に表示されている工事費用は入札価格ではなかろうか。万円単位まで堂々と金額を表示しているのが小気味良い。
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工事の内容や目的、費用などがわかりやすく書かれている
安部日鋼工業は創業が1949年、資本金3億円。顧客リストを見ると国土交通省、NEXCO、都道府県、鉄道会社などで、PC(プレストレスト・コンクリート)を得意としている会社のようだ。最近、鉄道の枕木を見るとほとんどがセメント材でできているが、これはPCまくら木と言うらしい。圧縮には強いが荷重による引張力には弱いというセメントの弱点を技術的に克服したセメント資材をPCという。PC橋、PCトンネル、PCタンクなど幅広い用途があって、顧客の顔ぶれにも納得がいく。売り上げは300億円ある。
完成予想図によると橋の長さは17、4メートル。河床から橋までの護岸の高さは約8メートルくらいだろう。川底2メートルくらいから橋桁の高さまで石積みの護岸が造成される予定になっていた。神田川も、支流の善福寺川も人の手によって切れ目なくその姿を変えているのだ。江戸の町へ向かって流れていた神田川と今の時代を流れる神田川とは同じ川ではないし、ほんの数年前の神田川とも違っている。川の営みが違い、姿が変わり、人が関わり、形を意図的に変えさせられている。
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工事の看板に標記されている大松橋は八幡橋から数えると下流に5本目の橋で、そこはすでに工事が終わったのだろうか。足元の建設現場は宮下橋から上流の八幡橋、御供米橋(オクマイハシ)、大成橋(タイセイバシ)の約300メートルの区間が高い工事塀で囲われ、善福寺川は鉄板で覆われていて川の流れは見えない。
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工事区間の善福寺川左岸脇に大きな中洲を持った和田堀池があって、うっそうとした雑木林に囲まれていた。武蔵野の風情そのものと言った感じで、池には無数の落ち葉が広がっていた。
池を見、和田堀公園をしばらく歩き、宮下橋に戻った。
橋の下流、50メートルといかないところが、事件(スチュワーデス殺人事件)の現場である。
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