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神田川の秘密28 あっ、財布を忘れてきた。お腹がすいたのに何も食べられない。家に帰れない。

二十八の2 あっ財布を忘れてきた。お腹がすいた。どうする?家に帰れるか。

亀歳橋はきれい橋と読む
難しい

 中央線のガードを潜ると、神田川に架かる最初の橋は大東橋、次が南小滝橋、亀歳橋(キレイ)ときて、早稲田通りの小滝橋になる。この間、橋の上から眺める神田川は桜と融和し合って、どこから見ても美しい。桜はメンテナンスが行き届いているらしく、枝ぶりが良い。大東橋を過ぎた辺りは皆が皆、老人だった。そう言えば、この僅かな距離(600m)を歩いていた人のほとんども老人だったし、写真を撮っている人も老人だった。夫婦で歩いている人たちも何組か見かけたが、揃いも揃って老夫婦だった。曜日と時間を考えれば当然なのかもしれないが、この一帯には高齢者が多く住んでいると想像がつく。昼の新宿区にいる若者や働き盛りの壮年層はビルの中に閉じ籠っている。これが今の日本の姿なのだろう。

 お昼の時間は十分に過ぎていた。歩いたし、桜を見たし、スマホで写真を撮りまくったからお腹が空いていた。小滝橋のたもとのスーパーで、お弁当を調達しようと入った途端、財布がないことに気がついた。忘れてしまったのだった。高田馬場まで歩くつもりで計画をしていた川旅老人は一気に気力を失った。SUICAの残高も分からない。帰りの電車賃が無かったらどうする。途端にブルーな気分になった。

神田上水公園のベンチに座る老人の一人となって、地図を広げた。

神田上水公園にくつろぐ人たちも老人が多い

 力を落とした老人の背を優しく押してくれたのは神田川と桜だった。
ーこの道をもう少し歩いてみるかー
 左岸の遊歩道をしばらく行くと、左手に高いネットを張った野球場が見え、若者のチームが練習試合をしていた。その先は落合水再生センターで、野球場も、それに隣接する落合中央公園も、地下は巨大な下水処理工場の施設が埋設されている。

右手の桜の下を神田川が流れ
左手の白い建物は落合水処理センター
跨線橋に上がる陸橋の上から撮影

東京都下水道局の広報では
「1日に処理する下水の量は50万㎥、全部を砂濾過による高度処理をして神田川に放流している」と書かれている。
「一部を再生水として西新宿や中野坂上地区のビルのトイレ用水や城南三河川の清流復活事業に活用している」と報じている。ここから放流されている水はポンプで組み上げられて川を流れていた地下水とは生い立ちが違っている。これを「清流」と見るかどうかは大いに意見が分かれるところだろう。名称が水再生センターとなっていて、下水処理場ではないところも一つのポイントだろうか。

 歩道橋があって、上がり切ったところから水処理施設の区域総体を眺めてみた。通常なら見学を受け入れているそうだが、今は(当面3月31日まで)コロナで受け付けを停止している。

神田川の上流方向
桜は三分咲

川、桜、遊歩道、再処理施設を一望した。

長い階段を若い女性が3人上がってきた。
歩道橋を渡って西武新宿線方面に行くらしい。歩道橋と言っても跨線橋で、鉄道線路を渡るのだからかなりの高さがある。階段数も多く、老人は上がってこない。写真を数枚撮って、息を切らしながら元の遊歩道に降りて行った。

 水再生センターの正面の橋は久保前橋、次が平仮名のせせらぎ橋でその角はせせらぎの里公園になったいる。ここまで桜の並木が途切れることなく続いていた。
桜イコール春。西武線の下落合駅が近い。SUICAで改札を通ったら、乗り継ぎ、乗り継ぎして家の最寄駅で降りる。SUICAが不足した場合は、駅員に相談する。そこまで考えて、気分は落ち着いた。

場所によっては満開の桜を見ることができる
もう一息演出があれば、桜の名所になれる


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