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『理系とーくラボ』ポスターのクイズ解説(フェルマーの最終定理の拡張)

私の所属しているコミュニティ『理系とーくラボ』(https://community.camp-fire.jp/projects/view/269163)のポスターが公開されました。

『理系とーくラボ』のポスター


このポスターに、以下のクイズを寄稿しました。

$${x^3 + y^3 = z^3}$$を満たす自然数$${x, y, z}$$は存在しません。
では、$${x^4 + y^4 + z^4= w^4}$$を満たす自然数$${x, y, z, w}$$は存在するか?

①存在する
②存在しない
③2023年時点ではわからない

今回は、このクイズの解説をしていきます。

自力で解きたい方は、まだスクロールをしないようお願いします。












答えは、「①存在する」です。
一つの例として、$${2682440^4 + 15365639^4 + 18796760^4 = 20615673^4}$$が成り立ちます。(最小の自然数組ではないです。)

もともと、「$${3}$$以上の自然数$${n}$$について$${x^n+ y^n = z^n}$$を満たす自然数組$${(x, y, z)}$$は存在しない」という予想が17世紀にピエール・ド・フェルマーによって提起されました。

$${n = 4}$$の場合はフェルマー自身によって証明が与えられ、$${n = 3}$$の場合は1760年にレオンハルト・オイラーによって完全な証明を得ました。(つまり、$${x^3 + y^3 = z^3}$$を満たす自然数$${x, y, z}$$が存在しないことは1760年に証明されました。)

その後、$${n = 5}$$の場合、$${n = 7}$$の場合と特殊な場合のフェルマーの最終定理が証明され、約350年後、アンドリュー・ワイルズによる完全証明に誤りがないことが1995年2月13日に確認されました。

以上がフェルマーの最終定理が辿った顛末ですが、では「拡張するとどうなるか?」も気になるところです。

$${n = 3}$$の場合を証明したオイラー自身が、1769年、指数と変数の個数を1個ずつ増やした$${x^4 + y^4 + z^4 = w^4}$$、$${x^5 + y^5 + z^5 + w^5 = v^5}$$、……にも同じように自然数組が存在しないことを予想しました。

フェルマーの最終定理同様、このオイラーによる予想もきっと正しいだろうと長く信じられて来ましたが、1966年にレオン・J・ランダーとトーマス・R・パーキンによって、指数と変数個数が5であるオイラー予想を満たす自然数組が発見されました。

$${27^5+84^5+110^5+133^5=144^5}$$

そして1988年、ノーム・エルキースによって指数と変数個数が4であるオイラー予想を満たす自然数組が発見されました。

$${2682440^4 + 15365639^4 + 18796760^4 = 20615673^4}$$
(ノーム・エルキースが論文で示している判例が上式で、最小の自然数組はRoger Fryeによる$${95800^4+217519^4+414560^4=422481^4}$$)

このクイズで言いたかったことは、数学の勉強をしていると「当たり前のことなのになんでわざわざ証明するんだ?」と思わされることがしばしばあるのですが、「どれだけ当たり前に成り立つように見えても、証明するまではどう転ぶかはわからない」ということです。


もしご興味があれば、『理系とーくラボ』(https://community.camp-fire.jp/projects/view/269163)にも参加してみて下さい。


参考資料



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