ある教団での会話 (6/7)
まず、オメガたちと会った場所を目指した。
ほどなくして、$${a^2 + b^2 = c^2}$$の消し跡があるところまでたどり着いた。
そこから、オメガたちが歩いて行った方を目指した。
直進していくと、なんとなく異臭が漂ってきた。
「なんのにおいだろう?」
進めば進むほど、においが強くなっていく。
オメガの部屋を目指していたが、好奇心が働いて、先に異臭のする場所を突き止めようと思った。
場合によっては、一目散で逃げなければならないかもしれない。
異臭のする場所に向かう前に、先に逃走経路を確認した。
教団施設の出入り口までいって、頭の中で経路を思い浮かべながら、また今いた場所戻った。
そこから、目的の場所に向かう。
近づくにつれ、鉄のような、腐敗臭のような匂いが強くなった。
そして、床に紙が乱雑に撒かれていた。
そのうちの一枚を拾い上げて、中身を読んだ。
……自然数の比で表せない数ーー
ーー、ーーー、教団の○義と相容れない、…
走り書かれていて、全ては読めなかったが、かろうじて判読できた箇所はこのように書かれていた。
自然数の比で表せない数
丁度、同じ疑問を持っていた内容だったので、他の散らかっている紙にも手を伸ばした。
次の紙には、整った字で書かれていた。
「この世界は調和で成り立っている、だからこそ森羅万象を自然数の比$${\frac{a}{b}}$$で表せる。逆に言えば、この世に実在するもので、自然数の比$${\frac{a}{b}}$$で表せないものはない。そうでなければならない、と思っていたが、オメガのやつがとんでもないことをしでかした。ああ、奴はなんてことをしてくれたんだろう、古代語が読めるからって。オメガは自分が今言っていること、今やっていることの重大さが分かっていないようだが、私は気づいてしまった。願わくば、時を戻してほしい。」
読み進めていくうちに、私は気づいた。
この筆跡は、ゼータのものだ。
廊下に漂う異臭も忘れて、私は書かれている内容に食い入った。
この紙の内容は、「だからこそ教祖はこの真理を隠したんだ。」で終わっている。
私は、今読んだ内容を忘れて、部屋に戻ろうかという考えが頭をよぎった。
しかし私はここで部屋に戻ったら、絶対に心の不完全燃焼を起こすだろうことを予感していた。
好奇心に負けて、私は3枚目の紙を拾い上げた。
1枚目、2枚目と続いて、3枚目もこの"とんでもないこと"に関わる内容だろう。
期待してめくったが、残念なことに、私の読めない古代語で書かれている。
しかし、筆跡からして、これもゼータが書いたものだろう。
前半に、先ほど私が部屋の中で考えた、$${a^2 + b^2 = c^2}$$、$${c^2 = 2}$$といった文字列が並んでいたので、多分同じ内容に関する話だろう。
後半を何としても読みたかったが、この短時間で読み解けるわけがなかった。
ひとまずゼータに紙が落ちていたことを伝えようと思った。
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