見出し画像

9/25 『サベージファングお嬢様 史上最強の傭兵は史上最凶の暴虐令嬢となって二度目の世界を無双する』を読んだ

面白かった。

初めて読む作家。タイトルがキャッチーだったのと、あとは表紙イラストに惹かれて買った。ジャケタイ買いだ。あらすじもほとんど見ないままに買ったが、ちっちゃく書いてある副題を見るとどうやら転生ものであったようだ。「今流行りの」という意味での転生ものを買って読むのは何気に初めてではないかしら。
ただ現代人が異世界に転生するのではなく、同世界人が過去に、それも別人の姿となって転生するというので結構ややこしい。しかも主人公の意識が宿りだしたのは10歳前後からだし、そういうのは転生と呼ぶものなんだろうか。この分野には詳しくないのでわかりませんが……。
副題で『史上最凶の暴虐令嬢となって』とは言うが暴虐令嬢だったのは前世と主人公・エンヴィルが「転生」する前までのミレーヌであって、エンヴィルが「転生」して以後はグングン株価改善しているのでややタイトルに偽りアリではある。なんせエンヴィル、史上最強の傭兵である以上にとても常識人なので、好き勝手やらない限り、いや好き勝手やっていても周囲からの評価が上がる。
こうなると前世のミレーヌが何故ああも最悪の悪姫になってしまったかに思いを馳せてしまう。ひとえにスルベリアの髪を持って生まれ、はじめから莫大な魔力とそれに伴う約束された権力を手にしてしまったからであろうか。両親(母親は特に姿を見せなかったが)も娘としてではなく財と権力をもたらしてくれる宝物として扱っていたがために、「神の寵児」という呼び名を鵜吞みにし、両親から注がれなかった親としての愛情を神に……その証である莫大な魔力に求めたがゆえの暴虐だったのなら、おこないの是非はともかく、その生涯を哀れに思わないでもなかった。
ともあれ中身に史上最強の傭兵をブチ込んで仕切り直される「神の寵児」の人生であったが、学園編はちょっとどうかなというか、あんまりうま味がないようにも思った。何故ならよき理解者も切磋琢磨できるライバルも既に入学前に得てしまっているから、学園生活ですることがあんまりない。しいて言うならほんとに勉学に励むことくらい(ただ、エンヴィル自身は前世ではできなかったそれが楽しいみたいで、隠居してから大学に通いだすおじいさんめいてちょっと微笑ましかった)。貴族のボンボンとの諍いとかもあるが、既に王子付きの近衛兵とか軍事強国で武威を誇る皇女とかを相手にした後に出てくる相手ではない。タイトルのことを考えるともっと他のお嬢様、なんかこう……ヘカトンケイルお嬢様とかブレインショックお嬢様みたいなのが出てくるかと思ったらとりあえずまだそういうのも無かったし。今後出てこないかな。
とはいえ主人公が先の未来を知るからこそ世間の異変に気付き、やがて来る滅びに隠された謎に迫るという展開はそそる。あの滅びの未来は、本当に悪女ミレーヌだけが原因だったのか。謎というなら、おそらく二度目のこの時代に生きて存在しているはずの「傭兵エンヴィル」はどうしているのかというのも気になるところ。いろいろと要素が多いのでどう転んでいくか読めないが、そこで主人公の歴戦の経験と人生観からくる落ち着きが、まあ悪いようにはならんだろうという安心感をもたらしてくれる。続きも楽しみ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?