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9/15 『七つの魔剣が支配する Ⅷ』を読んだ

面白かった。

選挙戦の布石となる決闘リーグ、その最中に発生した突発的討伐イベント、ということで、なかなか混沌としている。1巻の時点から強敵アトモスフィアを醸し出していたリヴァーモア先輩がレイドボスとなって立ちはだかる。多人数参加型イベントであるがゆえに、多くのキャラクターが活躍する。前巻で登場したオリバーの同級生たちも引き続き参戦するし、新たにイラスト実装された人も多くいてテンション上がる。うん、こうしてソシャゲ用語を多用して説明してみると、驚くほどしっくりくるな。きっと今巻はそんな感じを狙ったに違いない。
お家と政治的な事情からかつて戦った同級生たちが敵方に回る展開は良かった。巻数を重ねていくことでどうしたって話の規模も戦う相手もスケールアップしていくから、序盤に倒した、ちょっといいセンいってくるくらいの同級生たちなど主人公たちのくぐった修羅場の数でスーンと引き離されてしまうものだが、そうした物語上の抑えきれない圧力に、「敵方の下で働かされる」ことで抵抗を図っている。なんたって敵陣営は主人公側の先輩たちとは違って優しくレッスンしてくれないしピンチも全然助けてくれない、むしろ隙見せたらヘンなコナかけられかねない。そんな状況で上級ダンジョンに挑まされるわけだから、否が応でもレベルアップせざるを得ないというもの(死なない限りは)。悲しいかなさほど描写はされなかったが、今回のミッションでアンドリューズ隊が積んだ経験値は、総合的にはオリバー隊より多かったのではないか。主人公勢との「格の格差」もなんとか引き離されず食らいついていけてるというわけだ。サブキャラの扱いというか取り回しが巧みだなあと思う。
反面、その主人公勢……主要キャラの動きがちょっと少なめになってきてしまっているかなという危惧を覚える。順調に力をつけている様子は見て取れるのだけども、逆に言うとレベルアップ以外にあまり変化がないというか、蛇行がないというか。特にナナオである。強くてカワイくて頼りになるものの、ちょっとしばらく「強くてカワイくて頼りになるやつ」でしかない状態が続いているんじゃないか。今巻で三年生編の折り返しということだが、物語がキンバリーでの学園生活をすべて描き切る構成であるなら、今は前半戦の最終ブロックの折り返し地点、ということだから、ナナオが本格的に活躍するのは後半からということなのかもしれないが。まだその時ではないのか。期待して見守りたい。

で、今巻の主役、リヴァーモア先輩。てっきりレイドボスらしく、派手に使命を果たしてオリバーらの糧になるかと思ったら、見事生き残っちゃったよ。それも今後の展開にもますます絡んでいきそうな新たな要素を獲得して。霊体の操作に関わる存在というなら、オリバーの裏の顔方面でまた活躍してくれるのかしら。作中ではじめて一族の悲願、自身に課せられた使命というものを、完遂ではないにせよ一歩先に進めた(上で生き延びた)魔法使いとして、新たな一面を覗かせてくれるのなら面白そうだ。その最初の一人が先輩だったのはつくづく意外だったが。

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