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8/30 『死物語 下』を読んだ

面白かった。

正直、モンスターシーズンにおける撫子パートはオマケのようなものだと、いやモンスターシーズンじたいがある種のおまけ、撫子風に言うところの蛇足パートであり撫子パートはそのさらにオマケのような認識でいたから、こうしてモンスターシーズンの最後の締めを飾るってなったときは、やっべあんま話覚えてねえと焦った。上巻とは話の繋がりはないということでやや安心したし、実際読んでみて、わりとそれでも大丈夫だったのでよかったが。
しかしそれならそれで、阿良々木暦とももう関係なく、話としても繋がらない最終話ってどんなことをするのかと思ったら、それも冒頭に語られていた。千石撫子という、物語の主軸の脇でめまぐるしき変遷を辿っていったキャラクターの総決算……総は言い過ぎか。現時点での決算が本作であると。
なるほどそれなら楽しみだなと読んでいけばまたもやしかし、唐突に始まる無人島サバイバル編で怪異も何もない珍奇な物語が繰り出されるので、混沌としていくということでなら全シーズン全物語を含めてもトップクラスな話ではあった。
こんなんやっててラスボスと目される洗人迂路子と本当に戦えるのかよ、いや対峙さえできないんじゃないか、どうオチつけてくれるんだと危惧したものの、最終的にはしっかり戦うし対峙もしていた。セカンドシーズンあたりではしきりにバトっていたのが噓のように、向き合い、語り合うことで対決する物語にいつの間にかなっていて、ふと気づいてびっくりした。上巻も含め時代の変遷などがしきりに話題にされていたけれど、ある意味こういうところでいちばん時の移り変わりを感じた。
そして読み終えてから読み返してみて、無人島パートというのは、これまで色んな人に助けてもらっていた撫子が、自分で自分を助けるためのパートだったのかもしれない。分身ではない自分自身を。そうして初めて、他人を助ける専門家として認められた……ということか。
迂路子ちゃんと撫子ちゃんの対談はお仕事論のようにも聞こえて、千石撫子個人の話にとどまらず、これまでの決算であり未来への展望をも思わせて、とても面白かった。

ところで、上巻ではスーサイドマスターの死をもって今作のタイトルを『死物語』としていたわけだから、順当に考えれば下巻におけるタイトルホルダーというのはやはり、貝木なのでしょうね……惜しいと言えば惜しいし、相応しいと言えば相応しい。巻末に予告も無かったので、とうとう物語シリーズもこれにて本当に完結かと思うと物寂しい。でも15年間、大変楽しませていただきました。また遭う日まで。

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