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11/1 『どうやら僕の日常生活はまちがっている』を読んだ

面白かった。

2冊目のエッセイ。今回も変わらず面白いが、結構過去エピソードなどが多め。やっぱ日常生活に事件が起きないからか。
ハライチ岩井といったら今や、腐り芸などと称されて世間や芸能界を斜めに見、その鬱屈しきった思いをぶちまける毒舌ヒネクレ王子みたいな見方をされがちだが、初めて観る『寅さん』に感動したり、自転車を通販で買おうとしたら騙されかけたり、母親と喧嘩して珪藻土バスマットを押し付けられるも使ってみたら気に入ったりと、意外に素直なものの見方をするのだ。それをもって本当は素直なピュアな子なんだよとかまではさすがに言わないが……岩井さんは自分の感性に対してピュアなのだぐらいは言えるかもしれない。
まあまえがきでも言っているように、ヒネた見方をしてたとしてもあえてそういった視点は封印して日常生活だけを書くようにしてるのかなと思いきや、急に鋭い視線の一刺しをブッ込んでくるので油断もできない。後輩芸人の話す、自分には馴染みのない不良エピソードに目を輝かせながらも「喧嘩に負けたら学校辞めるって、まるで学ぶことを賭けて喧嘩してるみたいだな、不良なのに」と切ってくる。この感じが堪らなくもある。油断できないとは言ったものの、この感じを味わうためにあえて油断しているのも手かもしれない。
あとエピソードで好きなのは、団地で暮らしていたころによく遊んでいたマサシとの唐突な訣別の話。年上のちょっとワルい友達の無邪気な邪気に心を震わせながらも、唐突に我に返り、反動のごとき潔癖さを発露する。タイトルの趣旨にそぐわぬ非日常的事件のようでもありつつ、世の中のどこでも、どんな団地でも日常的に起こっている光景のようでもある。巻末には小説も収録されているが、このエピソードの方がよほど小説的である。もっとも、やっぱりそれでは趣旨にはそぐわないのだけど。

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