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さようなら、機動装甲車[月末雑語り]

2023年8月22日、防衛装備庁から「令和5年度 機動装甲車廃棄役務(その1)の契約希望者募集要項」という公示が公表されました。

次期装輪装甲車の選定のために調達され、その役目を終えた機動装甲車は解体されることが決まったようです。

機動装甲車を振り返る

装輪装甲車(改)の事業の不具合を受けて開始した次期装輪装甲車選定事業の試験車両として調達されたのが機動装甲車(MAV:Mobile Armored Vhicle)です。正確には「次期装輪装甲車(対爆技術)の研究試作」という研究試作で契約されています。

次期装輪装甲車(対爆技術)の研究試作仕様書(軍事情報アーカイブ)より

機動戦闘車(MCV)との共通化率80%との報道があるように、MCVと高い共通性を持つ装甲車となっています。共通戦術装輪車と違い、公道ではあまり目撃されていませんが、日出生台演習場で試験が行われた際に写真が撮影されています。

外観上はMCVよりも共通戦術装輪車(こちらもMCVと共通性の高い車両)とより近いことが分かります。
例えば、エンジン排気口はMCVのそれより後方に移動し、車両前面のけん引用治具は2つから4つに増加しています。

もう一つの「MAV」

ややこしいですが、令和元年度以降に製造された「機動装甲車」とは別に三菱重工が独自に製造した「MAV(Mitsubishi Armored Vehicle) 」が少なくとも2両存在してします。
2014年のユーロサトリで走行映像が公開され、その後、原田大臣政務官(当時)のFacebookに視察時の画像が投稿された「三菱MAV1号車」(仮称)
・DSEIで実車が公開され、メディア露出の多い「三菱MAV2号車」(仮称)

こちらの「MAV」は
・排気口の位置がMCVと同じ
・前部のけん引用治具は4つ
という機動装甲車とMCVの中間のような特徴を持っています。(ほかにもMAVと機動装甲車の外観上の違いは多いですが)

三菱MAV1号車は迷彩塗装が施され、スラットアーマーや爆発反応装甲(模擬?)、底面の追加装甲が装着されている姿でも公開されています。おそらくですが、車種決定の資料に掲載されたものも同じ車両でしょう。ただし、車番が書いてあるわけでは無いので「迷彩塗装のMAV」は複数存在する可能性もあります。
本車両の特徴として、車高2.2m(ユーロサトリ2014でのパネル説明より)と機動装甲車よりも車高が低い点があげられます。
この車両が現在どのような状態にあるか不明です。

迷彩塗装が施されたMAV。新たに製造された機動装甲車ではなく、三菱重工が製造していた車両。

三菱MAV2号車は対照的に白一色の塗装となっています。こちらは兵員室の天井のみやや嵩上げされています。一方で後部の車長席部分は嵩上げされていないため、3段構造になっているのが特徴的です。ユーロサトリで公開された時点では車高が2.2mだったのが機動装甲車の仕様書では2.44mとなっているため、1号車での経験から本車両で改善され、機動装甲車での車高につながったのではと考えられます。

本車両は2023年のDSEIにて三菱重工が開発するレーザーシステムのテストベットとして利用されている映像が公開されていました。防衛省に納入された機動装甲車は廃棄となりますが、三菱に残る車両はしばらく試験車両として活躍してくれるのかなと想像しています。

MAVは生き残るのか

新に調達された機動装甲車は2021年に納入されたと言われています。その寿命はわずか3年ほどと極端に短い物でした。試験車両の宿命かもしれませんね。

一方で三菱が独自に製造したMAVは三菱社内で今後の防衛技術発展を支える存在になるかもしれません。

次期装輪装甲車選定事業とは別事業である共通戦術装輪車は、未だ試験中であり(2023年8月時点)装備化へ繋がる可能性もあります。
また、「三菱MAV」は機動戦闘車に先駆けて製造されたとの一部報道もあります。MAV≒機動装甲車の流れを汲む機動戦闘車はこれからの陸自の主力装備として活躍します。

そういった意味では、MAVはこれからの陸自の中で生き続けていくと言えるかもしれませんね。

三菱が開発したMAVを元にして開発されたと言う報道もあるMCV





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