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みんなで作ろう対艦ミサイル[月末雑語り]

面白い話題がTwitterの中で出ていたので、そこから着想を得た雑語り記事です


みんなで作ろう対艦ミサイル

大まかにいえば、予想される有事を見据えた同一対艦ミサイルの複数国での生産構想が今回のお話です。

「ロシアによるウクライナ侵攻」では弾薬や各種ミサイルが不足し、協力国からの支援やそれらの国々での増産が行われています。東シナ海での紛争では確実に水上での戦闘が発生するでしょう。対艦ミサイルが大量に使用され、ウクライナで起きたそれのように対艦ミサイルが不足する事態が想定されます。

そういった状況が予見されるので有れば、今のうちに日米あるいは日米豪韓で共通の対艦ミサイルを運用しそれぞれの国内に生産拠点を設けることで、有事のミサイル不足に備えるべきではないか?という考え方です。

ハープーン大覇権時代

現在、日米豪韓では共通してハープーンの運用を行っています。生産拠点という視点から見ると片手落ちですが、対艦ミサイルを(技術的には)「比較的簡単に融通しあえる状況」ではありそうです。また、海自がハープーンとの共通性を前提に採用した90式艦対艦ミサイルやASM-1Cなど、「ハープーンの発射プラットフォームを利用できる」ミサイルの整備がおこなわれるなどしています。

RGM-84ハープーン(Wikimedia Commons)

しかし、優秀なハープーンも射程などに不満が出始め、各国「ポストハープーン」の導入に向けて動いています。将来の水上戦闘でも活躍できる、そんな新たな「標準となる対艦ミサイル」が必要かもしれません。

LRASMくん・・・どう?

一つに絞る必要はないのかもしれませんが、個人的にはLRASMを推したいところです。

一番の理由はmk.41VLSを使用可能な点です。ミサイルを共通化しても発射プラットフォームが共通化できなければ意味がありません。その点、西側で共通となっているmk.41VLSを使用可能なのは大きなメリットです。
また、各国が運用する戦闘機での運用も可能。加えて、ラピッドドラゴンを用いた輸送機での運用も可能かもしれません。(ウクライナでの様子を見ると、その気になれば戦闘機には何でも積めそうな感じもしますが)

mk.41から発射されるLRASM

「ポストハープーン」としてはNSMがその役割を担う可能性があります。ハープーンが置かれている発射架台をNSM用に変更し、VLSを圧迫せずに現行の艦艇をアップグレードすることが可能です。

またF-35に搭載可能なJSMと共通性があり、JSMには同じくmk.41から発射可能なタイプが提案されています。

しかし、VLS発射タイプの開発状況や射程等の性能面から、一つ選ぶとするならLRASMが良いような気がしています。

地対艦でもLRASM?

地上発射ミサイルとなると艦艇・航空機よりも問題が多そうです。
現在多国間で共通する地対艦ミサイルの発射プラットフォームは存在しません。唯一あるとすれば、MLRSのコンテナ及びその発射機でしょう。今後PrSMに対艦能力が付与され、それが共通の地対艦ミサイルとなりえるかもしれません。ただ、弾道飛行を行うPrSMよりも、一部で構想があるLRASMのHIMARSを利用した地上発射機のほうが対艦戦闘では有利な気がしています。

新たに発射プラットフォームからミサイル本体まで開発する手もありますが、とにかく時間がかかりそうです。

LRASMで満足できます・・・?

こと自衛隊に限って言えば、艦艇発射型で600km前後といわれるLRASMの射程では満足できない可能性が高いと思われます。正確な射程はわかりませんが、公表されている数値を見るとLRASMの艦対艦(地対艦)バージョンの射程は自衛隊にとって圧倒的に不足となるでしょう。

12式地対艦誘導弾(能力向上型)のうち、先行して生産・配備されるものですら射程900kmほどといわれています。地上発射タイプの射程でこの値ですから、LRASMの地上発射タイプではその要求を満たせないでしょう。

島嶼防衛用新対艦誘導弾では射程2000kmを目指すとの報道も

それでもやってみる価値はありそう…

とはいえ、いくら要求を満たせるミサイルでもそこに存在していなければ意味はないわけですよね。たとえ性能に100%の満足がいかずとも、生産・補給体制の確実性をとる方がいい場合もあると思います。

・最適化された自国にとって理想的な兵器
・複数国で生産・運用することが出来る兵器
この二つの要素を兼ね備えたものがあれば理想的ですが。「多くの弾薬数を稼ぐ」と言う目標を達成する方法として「複数国での共通ミサイルの運用・生産体制の構築」という方法は一つの解法かもしれません。

おそらく、共通の発射プラットフォームを持ち、それに対応する各国独自のミサイルも開発・生産しつつ、複数国で同じミサイルも生産しあう混合的な体制が一番いいのかもしれないですね。

ライセンス生産にせよ自社工場建設にせよ、技術的な問題よりも各国政府の政治的なすり合わせのほうが問題になる気もしますが。

有事になれば対艦ミサイルのみならず、各種誘導弾や弾薬も不足することでしょう。平時から大量の生産や在庫を抱えることは難しいかもしれませんが、その一つの解決方法になればいいかもしれませんね。


多種多様なプラットフォームから発射できるLRASM(Wikimedia Commons)

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