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足指じゃない、足跡だよ

まず、足指姫かと思ってました。
行くまで。
正確には、足跡姫なんですね。
残すものの象徴、足跡。
野田秀樹さんのお芝居が大好きで夢中になってよく見ていたのですが、あるときふっと心が離れてしまって。
すっかり見に行かなくなってしまった。
このあたり、昔の彼氏みたいな感じ。嫌いにはならない、なりきれないんだけど、しっくりこない。
キャストによっては、それでもたまには見てみようかな、って思うんだけど、私、はっきり言ってNODAMAPにおける宮沢りえさんが、わりと苦手。
なんとなく、熱演!って感じがして。
なので、今回はパスいち、と思っていました。
でも、まわりがよかったー、よかったー、と言うものだから。
3人以上に勧められたら、とりあえずやってみる、というのがモットーなので、先週末に駆け込みで当日券。
会社終わりに行ったら、キャンセル待ち1番と言われ、開演10分前にまた来てね、となって、まぁ大丈夫だろ〜なんて思ったら。
はい!って係員さんにっこり。
無事にキャンセルが出て渡されたチケット見たら、足跡姫じゃない、別の演目!
「あのあのあの!違うんです、見たいのは、足跡姫なんです!」ってその場でお金返してもらって、正しい当日券の売り場にどたどた走り寄る。
池袋の芸術劇場は、いくつかホールがあって、当然上の広い方でやるのは知ってたんだけど、当日券を買うのが初めてだから、売り場がいくつもあるって知らなかったんですね。
で、駆け込んだものの、当然ソールドアウト。
色々話を聞くと、早い人は3時から並んでいたらしい。
私が着いた6時にはエスカレーターまで行列がのびていたらしい。
がっくし。としていたら、窓口のお姉さんは無表情のまま、「ちょっとそこで待ってて」と指し示して。
3分後、私の手には一枚のチケット。
頼りない薄っぺらな感触。 でも、確かにここにある。
どうやら、別の演目に並んでしまったのを不憫に思ったのか、ぜったい空いている席を融通してくれたみたい。
クールな感じのお姉さん、幸あれ!
開演直前に席に座れてホッとする。
見下ろす感じのはじっこ。中央がよく見える。
妙に心地いい席。
ひと息ついた瞬間、幕が上がる。
感想は…妻夫木くん、すごい体がよく動いていた。キルの頃から見ていたし、その頃はまだちょっと初々しいというか、舞台俳優さんという感じはまだしなかったけれど、進化!
野田さんのお芝居における妻夫木くんはとてもよいんですが、今回はすごい中身が淡々しているのが、動きの激しさとセリフの熱さに比べて感じられました。
宮沢りえさんも、今回は嫌じゃない。というか、中村勘三郎さんへのオマージュということで嫌いになりきれない。
ラストシーン、あの美しい旋律のなかに。
今はもう会えない素晴らしい舞台を見せてくれた人を見ました。
勘三郎さんはもちろん、坂東三津五郎さん。
忘れられない舞台を作りあげてきた、蜷川幸雄さん。蜷川さんについては、まだ色々、思いがありますが。
朝倉摂さん。
一生憧れて、大好きな人。
桜の咲く頃にまたやりましょう、そう言われたんです。
ある歌舞伎役者の方のことを摂さんは、そう言ってらした。
私も見たかったな、その舞台。
桜はいつも、亡くなった人、生きていてももう会えない人を思い出させる。
ただ受け取るだけの、観客ですら、こんなに懐かしく思うのだから。
舞台の上の満開の桜から聞こえてくる。
野田秀樹さんの慟哭。
最後、私からスタンディングオベーション。昨年、野田さんの「逆鱗」を見たとき、恥ずかしくて立ち上がらなくて後悔したので。
そして野田さんからの舞台への応援歌。
よかったな。
(3月10日) #足跡姫 #nodamap #野田秀樹 #妻夫木聡 #宮沢りえ #中村勘三郎

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